ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.7.2
  • author:南 ゆかり

【勉強会代替企画】近大だから、ウェブだからできることを追求する。近畿大学「サイバー入学式」

近畿大学サイバー入学式特設サイト_メイン

ほとんど0円大学では、2019年から大学の魅力的な広報活動を紹介する大学関係者向け「勉強会」を行ってきました(第1回目はこちら、第2回目はこちら)。2020年度前期は、新型コロナウィルス蔓延により開催を断念した代わりに「大学のリアルを伝える、バーチャル体験」をテーマに4つの大学の取り組みをウェブ取材し、レポートにして紹介することにしました。今回は、その第3回目、近畿大学の「サイバー入学式」です。大学関係者のみならず、一般の方にも興味深い内容になっていますので、ぜひご一読ください。

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紹介する取り組み

サイバー入学式

近畿大学では、2014年度から卒業生で音楽プロデューサーのつんく♂氏プロデュースによる、派手なパフォーマンスの入学式を開催してきた。2020年度は4月4日に開催を予定していた従来型の式を、新型コロナウィルス感染症予防のために中止し、その代わりに「サイバー入学式」と名付けたWEB配信の入学式を同日に敢行。学長祝辞をはじめとする厳かな雰囲気のプログラムに加え、在学生・新入生で編成したKINDAI GIRLSによるパフォーマンスのミュージックビデオ放映、つんく♂氏や霜降り明星(せいや氏が卒業生)によるスタジオトークなど、番組として楽しめる工夫を盛り込んだ類を見ない入学式として話題になった。

◎2020年度サイバー入学式 特設サイト https://www.kindai.ac.jp/ceremony/special/

教えてくれる人

村尾友寛さん 近畿大学 広報室 課長補佐

國見憲吾さん 近畿大学 総務部 総務課(2020年度入学式プロジェクトリーダー)

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話題性と感動のある演出をウェブでどう実現させるか。

 ― 近畿大学の入学式は、つんく♂さんプロデュースとして以前から話題でした。今回の「サイバー入学式」も、反響が大きかったようですね。

村尾 入学式中止の発表では、あの入学式をやめるのかと、それ自体がニュースになりました。また、「サイバー入学式」というキャッチーな名称とつんく♂さんプロデュースの話題性で、当日の模様も多数のメディアに取り上げていただきました。

 

國見 中止の発表を公式に行ったのは、2月25日でした。新型コロナウィルスの感染防止対策を十分に施せないということで、ウェブ上で配信することにしました。入学式には、毎年、新入生と保護者を合わせて1万5000人が来場しますから、とても安全を確保できないという判断でした。遠方から来られる保護者もいらっしゃるので、なるべく早くお知らせする必要があるということで、早期のタイミングで決定しました。

近畿大学サイバー入学式2020

サイバー入学式の特設サイト。サイトからは、今でも入学式の中継動画を見ることができる

 

― ウェブで開催しようというのは、どのような判断でしたか。

國見 入学式を中止する、という選択肢はもとからなかったので、それならウェブ配信しかない、ということで、そこに迷いはなかったですね。むしろ、従来の入学式で感じてもらっていたような感動を、ウェブでどうやって実現するのかに気持ちが集中していました。

 

2月の公式発表時点で入学式用のプログラムはほぼ確定していましたから、当初は、無観客でそのままの内容で行ってウェブ配信するつもりでしたが、日を追うごとに新型コロナウィルスの感染拡大が深刻になり、どんどん変更せざるを得なくなっていきました。本学の入学式は、例年、応援部、吹奏楽部、KINDAI GIRLSをはじめ、体育会・文化会問わずほとんどのクラブが演出に協力してくれ、総勢300人以上の在学生が参加しています。しかし、チアリーダーのパフォーマンスで身体的な接触が発生したり、吹奏楽部なら楽器から飛沫感染が起こる可能性があるなどの懸念がありました。また、出演してもらった学生がインターネット上で攻撃対象になるリスクもあり、ウィルスだけでなく誹謗中傷から守る意味でも残念ながら在学生による演出の多くを見送りました。結局、新入生宣誓と、KINDAI GIRLSからの新入生へのメッセージを残すのがやっとでした。この決断が一番辛いところでしたね。

 

―逆に、ウェブだからこそできた、ということはありましたか。

國見 従来の入学式は、冒頭からフィナーレまでずっと流れていくものです。しかし、ウェブ配信の場合それでは少し起伏に欠ける。視聴者が離脱しないような工夫を考えた結果、新しい試みになりました。

 

軸となる式典自体は厳粛に執り行うのですが、その前後につんく♂さんと霜降り明星さんによるスタジオトークを組み込み、3部構成にしました。ニュースやバラエティ番組のような演出を加え、式典本体とは雰囲気の違う部分をつくって飽きさせないようにしたのです。2週間前の卒業式、オープンキャンパスでもすでにウェブ配信を実施していたので、そこで試行錯誤した成果も、入学式で生かすことができました。

村尾さんと國見さん

今回お話をうかがった、村尾さん(左)と國見さん(右)

マイナスの状況を逆手に取り、ウェブでしかできないことをする。

―卒業式などの経験を通じてどのような収穫があったのか、教えていただけますか。

村尾 卒業式は、一堂に会する式典を中止し、少人数規模になるように人数や時間を区切って卒業証書・学位記授与を行うと同時に、全学部対象の卒業式をウェブで配信しました。翌日のオープンキャンパスも生配信を行うことにしたのですが、私たちは動画配信のノウハウをあまり持っていなかったため右往左往しました。準備期間もタイトだったため、事前のチャンネル登録者に対する通知はどうするのだとか、追っかけ再生はどうしたらできるのかとか、やりながら学んでいくことになったんですね。そうして得たノウハウを、入学式に生かしていったということです。

 

卒業式で私たちの知識不足を補ってくれたのが、近大生YouTuberたちです。彼らはYouTubeのチャンネル登録者約40万人とか、Instagramのフォロワー数10万人以上とかインフルエンサーとしての拡散力を持っていて、以前から別の学内イベントで司会進行役を務めてもらうなど協力関係をつくっていました。彼ら自身が卒業生だったことから、キャンパス内に設置した特設スタジオから生配信の進行役を担当してもらうことにしました。

 

生配信を視聴してくれていた方のコメントには、「彼らの卒業の瞬間を見に来た」とか、「メイクや髪型がいけてる」、といった反応もありました。彼らを起用したことで、普通なら近畿大学にアクセスしないような層にも本学のことを知ってもらうきっかけになったと思います。これまでの入学式も終了後にその模様をYouTubeで配信し、つんく♂さんが好きな方をはじめ本学の学生ではない固定ファン層ができていたので、それと同じような現象が起きたといえます。

 

―入学式の話に戻りますが、先ほどテレビ番組のような、というようなお話がありました。確かに、大学発信でしかもライブの映像とは思えないクォリティの高さを感じたのですが、どのようなこだわりで制作されたのでしょうか。

國見 こだわりというのかわかりませんが、マイナスな状況を逆手にとって、リアルなイベントではできないことをやろう、という気持ちはありました。たとえば、学長式辞では思いっきり学長の間近で撮りましたが、従来の学生のいる式典ではそこまではできません。また、「入学おめでとうございます」という言葉の後に、客席に誰もいない風景を映してシュールな映像にしたり。また、ウェブで最後まで退屈せずに見てもらうのにはある程度のテンポの良さが大事だと感じたので、祝辞は全体的にリアル式典よりかなりコンパクトにして、トントントンと進んでいくように工夫しました。

学長の式辞

学長の式辞では、あえて誰もいない会場を映した

 

―入学式後に、スタジオに戻ってみんなでしゃべるところは特に、大学っぽくなさというか、斬新さを感じました。

國見 ついつい見てしまう、そんなところを狙いました。著名人が出演しているというのももちろんありますが、その目的は達成できたという印象があります。

 

また、新入生がインターネット越しで見ているだけでは、その場に自分がいる臨場感を感じられないだろうと思ったので、ツイッターで上がってくるコメントを番組の中で霜降り明星さんに読み上げてもらったりもしました。考えてみれば、これってウェブならではですよね。リアルだったら、式典中にツイッターをやっていたら問題になるところですから(笑)。新入生が当事者意識や関わりを持てるようにすることは、一つのポイントではないでしょうか。

 

―その意味でのライブ配信だと思うのですが、ただ、ネガティブコメントがあるのではないかという心配もありますよね。

村尾 確かにあります。だから、事前に対策を練っておく必要はあると思います。今回はいろいろな人のコミュニケーションの場にしたいとあえてオープンにしたのですが、やはり数件ネガティブなコメントも見受けられ、それなりに大変な部分はありましたね。

 

國見 専属の担当者を置いたほうがいいと思います。

 

―どのくらいの方が視聴したのでしょうか。

國見 YouTube Liveをリアルタイムで見てくださったのが約4万人、ニコニコ生放送が8000人超、式の後YouTubeで当日の放送を1週間ほど掲載していた動画の再生回数が6万回弱です。

 

村尾 ただ、これ以上にすごかったのが、入学式後、ウィルス感染免疫学を専門とする医学部・宮澤正顯教授による「新型コロナウィルス感染症対策講座」の反響です。新入生に贈る最初の講義として、コロナ時代の生き方を講義してもらおうという意図だったのですが、生配信が終わってYouTubeに動画をアップしたら、全国のさまざまな学校から、とてもわかりやすいからぜひ使いたいという依頼がたくさん寄せられ、中には手話をつけたいとかタイ語に翻訳したいというようなお話もあったり。結局、本編を超える37万回も再生されることになりました。

時代にマッチした形でのウェブ発信を追求していく。

―それだけたくさんの方に見られたという今回の入学式の成功を、どう捉えていらっしゃるでしょうか。

國見 プロデューサーのつんく♂さんからは、エンターテインメントの世界での経験から提案をいただいてあの形ができ、皆さんからもよい反響があったので、やはりお願いしてよかったと思います。新型コロナウィルスの影響でのイベント中止という最悪な状況の中で、近大なりにやれることはやれた、という感じがしています。

 

村尾 来年も、昨年までと同じように会場に新入生を入れた入学式ができるかといえば、できない可能性も高いでしょう。今年の経験に加え、7~9月でオープンキャンパスならぬ「クローズキャンパス」をやるので、そこでウェブ運用のノウハウを増やし、さらに新しい挑戦をしていきたいと思っています。

クローズキャンパス

近畿大学のクローズキャンパス。近大らしいネーミングセンスが素晴らしい

 

國見 今の時点で課題だなと思っているのは、新入生に新しくできた友だちとの一体感や臨場感を感じさせてあげることです。従来の入学式では、フィナーレで全員が肩を組んで校歌を歌って盛り上がるのですが、ウェブ配信でこの一体感を醸成するのは難しいなと感じています。

 

村尾 今回のサイバー入学式は、情報発信・広報戦略として一定の効果を得ることができました。今後は、オンラインイベントでも臨場感を出せるよう、新たな技術でできることもどんどん取り入れていきたいと思います。

 

さらに、新入生のケアは、入学式も含めて授業でもオンライン化が進む中で総合的に取り組んでいかなければならない問題です。本学では、前期の授業をオンラインで配信することが決まっていますが、その中でも学部やコースで日時を分け、キャンパスツアーとオリエンテーションを実施し、大学の雰囲気を少しでも味わってもらうとともに、友達作りができるような取り組みをしています。また、クラブ活動やサークルの新歓という大学生にとって最初のワクワクする大きなイベントの機会を失ったことで、在学生たちから自発的にクラブの紹介動画を流してほしいという要望が寄せられたのに応え、YouTube「新入生歓迎チャンネル」の動画を従来よりも充実させました。さらに、新入生だけでなく、全学生を対象としたものですが、「今だから読んでもらいたい本」を学長・副学長・各学部長などが選び、メッセージに本学と連携協定を締結しているamazonで図書を購入できるギフトコードを添えてプレゼントをするなど、時間の有効な使い方の提案を行っています。これまで、全てのキャンパス、拠点の職員、一部学部の教員・学生に段階的に導入していたコミュニケーションツール「Slack」を、全学部の教職員・学生総勢36,000人に導入することが決定しており、今後はこの活用によるコミュニケーションやケアの充実も進めていく予定です。

 

―アフターコロナには、大学生や受験生とのコミュニケーションが変わっていくという見方があります。近畿大学では、どのような情報発信をしていかれるのでしょうか。

村尾 私たちだからこそやれるいろいろな面白い取り組みをやっていきたいですね。直近でいうと、これから行うクローズキャンパスもそう。また、オウンドメディア「Kindai Picks」では、緊急事態宣言のときにコロナキャンペーンとして、ファーストビューから各コンテンツの窓までコロナ一色にしました。今後も医学部を擁する強みも活用しながら近大のリソースをすべて出して、コロナにどう向き合っていくか、といったところを正面から表現したいと考えています。「マグロマスクカバー」のような大阪の大学っぽいユーモアも出しつつ(笑)、バランスを取りながらやっていきたいと思っています。

マグロマスクカバー

ツィッターで話題になった「マグロマスクカバー」。完成度がすごい

 

全体的な方向性としては、ウェブ一極集中になる。新型コロナウィルス対応で、職員も教員も学生も誰もがウェブリテラシーを引き上げられました。今後は入試説明会やオープンキャンパスなどのイベントも、全部ウェブ中心になっていくはずです。こうして時代が大きく動いていく時は、私たちにとってのチャンスです。時代にいかにマッチしたものを発信して、大学業界の中でイニシアチブを取っていけるのかに挑戦したいと思います。


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