興味を継続するための「使えるアプリ」
最近、チラホラ見かけるようになってきた受験生向け大学アプリ。受験生向けの情報が集めてあり、とりあえず取りこぼしなくさまざまな情報が簡単に集められる手軽さはある。多くの大学アプリにあるメニューとしてはまず、位置情報を使ったキャンパスマップ検索。これは、オープンキャンパスに行ったときに迷わなくてすむので便利だろう。バーチャルキャンパスツアーというのもよくあるが、キャンパスがきれいだったりすると志望度が上がりそうだし、これもいいと思う。だがそれ以外のメニューは、ほとんどが受験生向け特設WEBサイトへのリンクだったりするケースが多い。正直、わざわざアプリを使わなくても、WEBでもいいのではないかという気はしていた。
そんな大学アプリの現状を変えようと、新機軸を打ち出したのが龍谷大学。同大のスマホアプリ「ru navi」に、大学アプリとして初めて英語の受験対策機能を付けた。受験対策とは入試問題の解法やポイントなどを解説するもので、オープンキャンパスなど受験生向けのイベントでも人気のプログラムである。それをアプリに導入したのには、深~いわけがあったというのが本日の本題。その前に、英語受験対策機能とはどんなのか、見ていこう。
「整序英作文小テスト」という名前のメニューを開くと、過去3年分の英語入試問題から出題された整序英作文問題104題がズラッと並ぶ。問題を解いた後は、予備校講師による解法解説動画やその板書で勉強でき、さらに正解英文を音声で聞くこともできる仕組みになっている。社会人も使えるので、英語学習に興味のある方はこちらのアプリレビューを要チェック。
龍谷大学「ru navi」。整序英作文問題の画面
最近、受験生向けはもちろん中高生や社会人向けなど、勉強するアプリというのがいろいろと出てきており、すきま時間にも気軽に使えると好評だ。「ru navi」の「整序英作文小テスト」は無料ということもあり、志望大学に関係なく受験勉強ツールの一つとして使う受験生も多いだろう。
「受験に役立つ機能を加えることで、継続して使ってもらえるアプリにしたいと考えました」と龍谷大学入試部・田中正徳さんは言う。
「近年、オープンキャンパスにたくさんの高校生が来てくれるようになり、1日あたりの参加が5,000人を超えるほど増加しています。オープンキャンパス参加を夏休みの課題に出す高校もあり、特に1、2年生の参加者が急増しています。そこで、大学への興味関心を継続させ、出願までつなげていくことが課題になってきました」(田中さん)
オープンキャンパスの様子
オープンキャンパス参加者の出願率は4割程度。6割の離脱者を引き留め、出願率を高める仕掛けをつくりたい。深~いわけの一つはこれだ。龍谷大学は、2018年6月から大学アプリを導入しており、当初はWEBサイトへのリンク集に近い内容だった。だが、それはあくまで助走期間。当初から、アプリ自体を受験生の関心を継続させるツールとして考えており、そのための新たな機能を模索していた。イベントと連動して多くの人に導入してもらう工夫をする。その後も使い続けていく中で、いろいろと情報を提供できる。そのためには、継続的に使ってもらえる機能が必要。ということで、受験対策機能に行き着いた。
「ru navi」自体はパッケージを利用しているが、オプションの形でオリジナルの受験対策機能を付加することになった。構想段階から先生たちにも参加してもらい、入試問題を使って何ができるのかを検討、ベンダーさんの方で形にしてもらったという。
「ru navi」稼働から半年後、2018年12月に「整序英作文小テスト」を公開。ダウンロード数は当初5,000、約3カ月経った今は6,000程度にまで増えた。オープンキャンパスの告知において、アプリを使ってイベントに参加する特典などをつけ、ダウンロードを促している。
アプリからイベント一覧をチェックできる。オープンキャンパスのイベント参加には、スマホアプリのダウンロードが必要だ
在学生も参加して機能をさらに拡大
今回の「ru navi」リニューアルには、まだ深~いわけがある。それは、プロフィールを取りやすい仕組みにしようということ。「整序英作文小テスト」は、名前や住所、学年や興味のある学部などプロフィール情報を入力して登録しないと使えない。その他、登録すると、デジタルパンフレットなど資料請求しないと見られない情報がスマホで閲覧できるようなるなどの特典も付けた。
ブランドムービーなどさまざまな動画を見ることができる
「プロフィール情報は従来、オープンキャンパス参加者の手書きアンケートからデータ化していました。その分の時間や手間は、このアプリの登録機能で大きく削減できます。また、アプリの通知機能を使って、どの学部に興味があるか、学年などによってセグメントし、ニーズに合った情報への誘導を図ることもできます」
イベント開催や出願期間のお知らせを出したり、「出願締め切りまであと○○日」などリマインダーも可能。合格後には入学手続きなどの締め切りを忘れないようにアラートを出すことも考えられる。「こちらが伝えたいことだけでなく、受験生にとって役立つ情報を出していきたい」と田中さん。
さらに、オープンキャンパスで参加イベントごとにスタンプを押すスタンプラリーメニューによって、誰がとのようなイベントに参加したかという動向・志向の把握にも活用しているとか。「ru navi」は、これまで把握しきれていなかった情報を活用していくための仕組み。アプリを動かす意義はここにあった。
スタンプラリーでは、会場にあるQRコードを読み取る仕組みになっている
スタンプラリーの画面
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受験対策機能は、今後、英語から他教科へも発展させていきたい考えだ。また、「ru navi」自体のさらなるブラッシュアップも進めていくという。次年度は、オープンキャンパススタッフとして運営に関わる在学生からもアイデアを借り、より高校生にフィットしたアプリにしていくという。オープンキャンパスでどんなイベントに参加するか事前にスケジューリングできる機能や、今は導入していないが事前申込制のイベントをつくってアプリで管理する機能など、柔軟に検討していく。
「将来的には、出願も入学手続きもアプリですべてができるようになれば」と話す田中さん。卒業証明書や顔写真など現状のWEB出願では郵送してもらっている部分もデジタル化し、アプリ出願→アプリ入学手続き→入学完了と、“入学に関わるプラットホーム化”を最終目標に、「ru navi」をさらに大きく育ていくという。
今回の取材で、大学アプリには、まだまださまざまな可能性があることがわかった。動画、ライブ配信を使ったバーチャル体験など、今後さらに充実していきそうな気配もある。デジタルネイティブである今の高校生たち向けの新しい情報発信が増えることで、入学前から大学に触れるチャンスが増え、じっくり考えて大学を選ぶことにつながるならそれは素晴らしいことだろう。これからの動きに注目したい。