来年4月にデータサイエンス学科の開設をめざす大阪工業大学では、この春、「デートサイエンス」という、少し変わったサイトをオープンしました。「デートサイエンス」とは、様々なデータを分析して、新たな知見や洞察を生み出そうとする新しい研究分野「データサイエンス」から来ています。
「データ」が「デート」とは…?
言葉は似ているけれど、あまり結びつかないこの2つがどう関係しているのでしょうか?
早速サイトをご紹介しましょう!
大阪工業大学『デートサイエンス』
https://www.oit.ac.jp/japanese/juken/date_science/
恋する青年の心の声がたくさん流れている ©Osaka Institute of Technology
画面全体に出てきたのは、「恋愛ってギャップが大事だっていう。」「遠くを見つめる君。気持ちを伝えるタイミングは、今。」などの恋する男女が考えそうなワードたち。ある程度、酸いも甘いもかみ分けてきた30代の大人な女性(筆者)からすると、とても甘酸っぱい言葉ばかりで、懐かしい青春時代を思い出します。
これらのワードがデータサイエンスとどう関係しているのでしょうか?
その答えは、ひとつひとつのワードをクリックした先にあります。例えば、小さい文字で書かれた「やばい、来月のバイト、増やさなきゃ。」
「やばい、来月のバイト、増やさなきゃ。」をクリック ©Osaka Institute of Technology
ワードをクリックすると、そのワードを考えている青年が恋をしているだろう女性の写真とポエムが出てきます。
かわいい女性の画像と青年のポエム ©Osaka Institute of Technology
プロ野球選手の平均打率は、3割を下回る。
10回打って、ヒットが3本出るかどうか。
そんなの簡単だと言う君。
経験も無いのに、自信たっぷりで
バッティングセンターに向かう。
「もし私が3割以上打てたら、焼肉おごってね」
もちろんいいよ。絶対無理だもん。
空振り。空振り。空振り。ヒット。ヒット。
空振り。ヒット…。意外と当ててる。
しかもしっかり修正しながら打ってる。
やばい。来月のバイト、増やさなきゃ。
デートって、データサイエンス。
ワードをクリックすると、全部で3枚の画像が出てきます。2枚は、そのデートシーンに合った女性の写真やイラストとポエムの前後半が半分ずつ。3枚目には、すべてのポエムが表示されます。
3枚目にあるポエムの画像 ©Osaka Institute of Technology
よく見ると、ポエムの一部の文字色がカラーになっています。野球選手の平均打率と彼女のヒット率の部分です。
すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、この部分は数字的なデータになります。前半部分では、上の句にある野球選手の平均打率のデータを聞いたことから、彼女は彼氏に焼肉をおごってもらう約束をして、後半部分では、彼女が打率を上げていく様子を見て、彼氏は来月のバイトを増やそうかと考えています。
漫画やドラマに出てきそうな、なんてことのないデートの1シーンですが、彼女・彼氏が数字的データを分析して、次の行動に活用しようとしていることがわかりますね。これこそ、まさに「デートサイエンス」!
なんとなくわかったけど、イマイチしっくりこないという人のために、次は女性目線のワードを見てみましょう。
女性目線のワード ©Osaka Institute of Technology
「これ以上、好きにさせないで。」とは、恋する乙女なら、誰でも一度は思うこと。まさに、恋愛する女性たちに共通する心の叫びです。
彼からのサプライズプレゼントに喜ぶ恋する乙女 ©Osaka Institute of Technology
「週末空いてない?」って、
彼からめずらしくデートのお誘い。
今日の最高気温は10℃…こんな急に寒くなられても、
冬服なんて準備してないよ~。
待ち合わせは、いつもの時計台。
寒いねって言ったら、
後ろからふわってマフラーをかけられて「プレゼント」って。
サプライズ成功って喜ぶ笑顔にきゅんとする。
わざわざ渡すために、寒い日にしたの?
これ以上、好きにさせないで。
デートって、データサイエンス。
彼のサプライズが成功して、彼女の気持ちがさらに大きくなっていく ©Osaka Institute of Technology
あまりデートに誘ってくれない彼から珍しく誘われたら、少しくらい天気が悪くても行ってしまいます。心の中では「なんで、こんな寒い日選んだの…?」と舌打ちをしていても、大好きな彼に会えるのなら、我慢できそうです。
そして、突然のサプライズがやってきて、自分を喜ばせるために天候のよくない日を選んだということがわかれば、彼のあそび心と自分のことを想ってくれている気持ちにキュンキュンしちゃいます。
このポエムでは、最高気温は10℃だけど冬服の準備をしていないというくだりがカラーになっています。彼氏は、この日の気温を知り、「マフラーを渡すなら今日だ!」と思って彼女をデートに誘ったのでしょう。案の定、デート中に寒がる彼女。後ろからマフラーをまわしてあげたら、予想通り彼女が驚いてくれたのでサプライズ大成功!というストーリーです。
もう気づきましたか?
そう。このサイトでは、データサイエンスの元となる数字的データが、デートのワンシーンに散りばめられていることを、恋する男女の甘酸っぱいポエムから教えてくれているのです。
そして私たちは、数字的データの分析から活用までの行動を知らず知らずのうちに行っています。そう、データサイエンスとは、日常の中や人とのコミュニケーションの中に存在している身近な学問なのです。
デートシーンに見られるサイエンスのからくり ©Osaka Institute of Technology
様々なデータから、心が温かくなる次のアクションを導き出すデータサイエンスは、デートの他にも色々なケースで活用できます。
データサイエンスの活用例 ©Osaka Institute of Technology
医療やスポーツに勉強など、ケーススタディは様々。こんなにもたくさんの分野に関わるデータサイエンスのエッセンスが、何気ない日常生活の中に隠れていることに驚きます。
例えば「天気予報」なら、これまで蓄積してきた気象予報データから、いつ・どこに・どの位の雨が降るのかの予測や、災害発生時の避難シミュレーションなどに活用されているようです。近年、地震や水害が増えているので、先々の気象情報が正確に予測できるようになるのはうれしいですね。
受験分野なら、受験生の現在地や偏差値、過去に合格した受験生のデータなどを活用して、合格率アップを目指すスタディアプリ開発にも取り組めるそうです。
「数字的データを分析して、活用する」とだけ聞くと、理系の難しい分野のようなイメージを持つ方が多いと思います。それを、誰にでもなじみのある恋愛の1シーンとクロスして訴求する施策は、とても斬新。
もしかしたら、このサイトはデータサイエンスの「デ」の字も知らない人に、簡単に伝えられるシーンを探した際に、何かしらの数字的データを分析した結果、「恋愛」がふさわしいとなって誕生したのかもしれません。だとすると、その点もとても興味深いですね!
「データサイエンスってそんなに難しくないのかもしれない」「データを分析して、活用するって、なんか新しい!」と思った方は、ぜひ一度「デートサイエンス特設サイト」を覗いてみてください。今まで気づかなかった新しい発見があるかもしれませんよ?