注意深く計算された編集が光る一冊。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第27回目となる今回は、東北文教大学が発行する「To Be!」を取り上げます。
山形市に立地し大学と短大を擁する東北文教大学は、1925年に山形裁縫女学校を前身とする、歴史ある大学です。沿革を追うと、留学生別科の早期設置や学科の新設・再編など時代と社会のニーズに応える形で変化を続けてきたことが見てとれます。この東北文教大学の広報誌のタイトル「To Be!」は、「やがて~になる」という意味と、「TOBE(飛べ)」という思いが込められているとのこと。毎号の表紙を飾る学生のいきいきとした姿と相まって、大学の自由な雰囲気が感じられます。
この「To Be!」は年2回発行されており、2021年9月発行の最新号でVOL.9を数えます。全8ページの誌面は、巻頭特集以外は毎号統一のフォーマットで、学生/教員/卒業生がそれぞれの関わりから大学を語る形を採っています。
ちなみにVOL.9の巻頭特集は「数字で見る東北文教大学」。入学者アンケートを活用し、集計データとフリーアンサーから入学した理由を紹介しています。「進学の決め手は?」という設問に対して、大学・短大の4学科で「資格を取得できる」が1位を独占。将来の進路を意識して進学する学生が多いことを伝え、「うちに来てほしい高校生」へのPRにもなっていると思いました。
高校生も興味をもちやすい柔らかなデザイン・レイアウト
個人的に「学生の個性が伝わってきていい企画だな」と思うのが、2見開き目の「my BEST ●●」です。この号では「ワタシが出会った運命の一冊。my BEST BOOK」を8人の学生が紹介。学科の学びに関連した本を選ぶ学生、部活動がきっかけで本を手に取った学生、インフルエンサーのエッセイを紹介する学生など、バラエティに富んでいる点が面白いです。そして、その一冊が自分にどんな影響を与えたか、物事の捉え方がどう変わったかを語る学生たちの人柄が伝わってくるので、興味をもって読み進めることができました。
全身のポーズ写真が学生のキャラクターを際立たせる
続く3見開き目の左ページは「FOCUS」というタイトルで、毎号教員を1人ピックアップして紹介しています。在学生がインタビュアーを務めている点がポイントで、学科内の親密さや、教員の学生に対する熱意が自然と伝わります。
8ページという限られたボリュームでも、大学の雰囲気と魅力を効果的に届けている「To Be!」。取材の方法を工夫したり、写真の切り取り方で印象を高めたりと、注意深く編集されていると感じる一冊でした。
教員の登場ページは知的にスッキリと