以前にも一度、ほとゼロでご紹介したことがある大阪大学と大阪ガスのコラボイベント、アカデミクッキング。(以前の記事はこちら)
10月23日(日)に「作って、学んで、食べて!三度おいしいドキドキ(土器土器)考古学」という、とっても気になるテーマで同イベントが開催されたので、参加させていただきました!
悪魔のパズル“土器”
当日、会場には10組を超える親子の姿が。子どもたちがエプロンを着け、わくわくした表情でイベントのスタートを待っていました。
調理の前に、この日の講師を務める中久保辰夫先生(大阪大学埋蔵文化財調査室)による「土器とはなにか」という講義が開催されました。中久保先生の専門は考古学で、現在は大阪大学のキャンパス内にある遺跡で発掘調査を行っています。
中久保辰夫先生(助教・大阪大学埋蔵文化財調査室)
今回のアカデミクッキングは親子を対象にしていたのですが、そこには土器がテーマにちなんだ理由がありました。
「土器に残る指の跡などから、土器作りをしていたのは女性だと考えられています。もし土器作りが代々女性に伝わるものだったならば、母から娘へと伝承されていたのではないかと。本日はその追体験をしていただきたく、親子での参加をお願いしたんです」と中久保先生。約2000年も前の人類と同じ体験をすることになるなんてロマンがありますね!
また、講義では中久保先生が土器に注目するようになった理由についても話してくれました。
「土器は考古学において、とても重要なものだからです。というのも、粘土で作られているため時代や場所、さらには作った人の個性までが分かり、違いを見て分類することができます。
それに、食器や鍋、結婚式の装飾など日常生活のさまざまな場所で使用されていましたが、粘土で作られていたため壊れやすく、割れてよく捨てられていました。その結果、考古学者にとって、もっとも出会うことの多い史料となり、重宝されているんです」
ちなみに考古学者の間で土器を「悪魔のパズル」と呼ぶのだとか。完成形の見えないピースを組み立てる作業がつらく、「どうしてこんなことしてるのだろう」と思うこともあると中久保先生。博物館などで見かけるカケラを組み合わせた土器には考古学者たちの苦労が隠れていることを知りました。
こんなカケラを組み立てていくのは至難の業…
土器クッキーをつくろう!
先生の講義のあと、調理がスタート。
土器の素材である粘土をクッキーの生地に、土器作りの工具を調理器具へ、土器を焼く炉や釜をオーブンに変えて、土器クッキーをつくっていきます。
この日使われたレシピは中久保先生と大阪ガス・クッキングスクールのスタッフさんが事前に打ち合わせを行い、作成されたものです。
調理中、各テーブルを周り参加者の方と直接お話をしていた中久保先生
ベースとなる生地を作ったあと、ココアやきなこで土器っぽい色味をだしていきます。ここにナッツ類を加えることで、ざらついた表面や土器に見られる小石などを表現します。
少し寝かせた生地に、フォークやつまようじなどで紋様を付けていきます!
紋様を付け終わったら切ってオーブンへ! 焼き上がりが楽しみです!
また今回の講座では土器と考古学にちなみ、土鍋でつくる鶏肉と野菜の煮込み、古代米のごはんもつくりました!
土器クッキーを焼いている間、お食事タイム♪
そして焼き上がった土器クッキーがこちら!
おおー! 想像していたより土器です!笑
紋様がくっきりとでています。味はというと、さっくりとしていて、とっても美味しかったです。
参加者の方にお話をお聞きしました!
「先生の土器に対する愛がすごかったです(笑)。あと、先生の『昔、女の人が娘と土器を作っていたかもしれない』という話を聞いて、今日はそれを追体験した気分になりました」
約2000年前を追体験するなんて、なかなかできるものではありませんよね。娘さんにとってもステキな経験になったことだと思います。
その他にも、お父さんにあげたらびっくりするかなー、とラッピングしてらっしゃる方もいらっしゃいました。お父さん、びっくりされたでしょうね(笑)
考古学の未来
アカデミクッキングを終えた中久保先生に本日を振り返っていただきました。
「約2000年前、女性が土器を作っていたという話が本当なのかどうかまだ立証はされていませんが、もしそうだとするなら、今日みたいな光景が各家庭にあったのかなと思って。過去を見れた気がして嬉しくなりました」
こんな光景が約2000年前にもあったのかも…
最後に今回のアカデミクッキングの開催を決めたきっかけとはなんだったのかきいてみました。
「現在、多くの発掘調査は開発工事に伴って行われているものです。今後、開発する土地がなくなればその分発掘調査は減っていく。世間にもっと発掘調査の必要性を訴える必要があると考え、一般の方に考古学へ興味をもってもらおうと思ったのがきっかけです。
こうして、料理を切り口にすることでより多くの方に考古学への関心を高めてもらい、必要性を知ってもらいたいと思っています。今回の土器クッキーのアイデアの元を作られたヤミラさんにもそういった思いを伝えて、使用許可をいただいたんです」
もっと歴史を身近に感じて欲しいと語ってくれた中久保先生。何事も知ってみないとその魅力に気づけないともおっしゃっていました。
今回のようなイベントを通し、子どもたちが多くの学問・文化に触れることで、将来の選択肢を広げているんだなと感じました。もしかすると未来の考古学者が今回の参加者の中にいたのかもしれませんね!
みなさんもぜひ親子でいろんなイベントに参加してみてください!