ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

ポケットに入る大学入試サポート。龍谷大学アプリが新機能をリリース。

2019年3月19日 / 大学PRの世界, 大学を楽しもう

興味を継続するための「使えるアプリ」

最近、チラホラ見かけるようになってきた受験生向け大学アプリ。受験生向けの情報が集めてあり、とりあえず取りこぼしなくさまざまな情報が簡単に集められる手軽さはある。多くの大学アプリにあるメニューとしてはまず、位置情報を使ったキャンパスマップ検索。これは、オープンキャンパスに行ったときに迷わなくてすむので便利だろう。バーチャルキャンパスツアーというのもよくあるが、キャンパスがきれいだったりすると志望度が上がりそうだし、これもいいと思う。だがそれ以外のメニューは、ほとんどが受験生向け特設WEBサイトへのリンクだったりするケースが多い。正直、わざわざアプリを使わなくても、WEBでもいいのではないかという気はしていた。

 

そんな大学アプリの現状を変えようと、新機軸を打ち出したのが龍谷大学。同大のスマホアプリ「ru navi」に、大学アプリとして初めて英語の受験対策機能を付けた。受験対策とは入試問題の解法やポイントなどを解説するもので、オープンキャンパスなど受験生向けのイベントでも人気のプログラムである。それをアプリに導入したのには、深~いわけがあったというのが本日の本題。その前に、英語受験対策機能とはどんなのか、見ていこう。

 

「整序英作文小テスト」という名前のメニューを開くと、過去3年分の英語入試問題から出題された整序英作文問題104題がズラッと並ぶ。問題を解いた後は、予備校講師による解法解説動画やその板書で勉強でき、さらに正解英文を音声で聞くこともできる仕組みになっている。社会人も使えるので、英語学習に興味のある方はこちらのアプリレビューを要チェック。

龍谷大学「ru navi」。整序英作文問題の画面

龍谷大学「ru navi」。整序英作文問題の画面

 

最近、受験生向けはもちろん中高生や社会人向けなど、勉強するアプリというのがいろいろと出てきており、すきま時間にも気軽に使えると好評だ。「ru navi」の「整序英作文小テスト」は無料ということもあり、志望大学に関係なく受験勉強ツールの一つとして使う受験生も多いだろう。

 

「受験に役立つ機能を加えることで、継続して使ってもらえるアプリにしたいと考えました」と龍谷大学入試部・田中正徳さんは言う。

 

「近年、オープンキャンパスにたくさんの高校生が来てくれるようになり、1日あたりの参加が5,000人を超えるほど増加しています。オープンキャンパス参加を夏休みの課題に出す高校もあり、特に1、2年生の参加者が急増しています。そこで、大学への興味関心を継続させ、出願までつなげていくことが課題になってきました」(田中さん)

オープンキャンパスの様子

オープンキャンパスの様子

 

オープンキャンパス参加者の出願率は4割程度。6割の離脱者を引き留め、出願率を高める仕掛けをつくりたい。深~いわけの一つはこれだ。龍谷大学は、2018年6月から大学アプリを導入しており、当初はWEBサイトへのリンク集に近い内容だった。だが、それはあくまで助走期間。当初から、アプリ自体を受験生の関心を継続させるツールとして考えており、そのための新たな機能を模索していた。イベントと連動して多くの人に導入してもらう工夫をする。その後も使い続けていく中で、いろいろと情報を提供できる。そのためには、継続的に使ってもらえる機能が必要。ということで、受験対策機能に行き着いた。

 

「ru navi」自体はパッケージを利用しているが、オプションの形でオリジナルの受験対策機能を付加することになった。構想段階から先生たちにも参加してもらい、入試問題を使って何ができるのかを検討、ベンダーさんの方で形にしてもらったという。

 

「ru navi」稼働から半年後、2018年12月に「整序英作文小テスト」を公開。ダウンロード数は当初5,000、約3カ月経った今は6,000程度にまで増えた。オープンキャンパスの告知において、アプリを使ってイベントに参加する特典などをつけ、ダウンロードを促している。

アプリからイベント一覧をチェックできる。オープンキャンパスのイベント参加には、スマホアプリのダウンロードが必要だ

アプリからイベント一覧をチェックできる。オープンキャンパスのイベント参加には、スマホアプリのダウンロードが必要だ

在学生も参加して機能をさらに拡大

今回の「ru navi」リニューアルには、まだ深~いわけがある。それは、プロフィールを取りやすい仕組みにしようということ。「整序英作文小テスト」は、名前や住所、学年や興味のある学部などプロフィール情報を入力して登録しないと使えない。その他、登録すると、デジタルパンフレットなど資料請求しないと見られない情報がスマホで閲覧できるようなるなどの特典も付けた。

ブランドムービーなどさまざまな動画を見ることができる

ブランドムービーなどさまざまな動画を見ることができる

 

「プロフィール情報は従来、オープンキャンパス参加者の手書きアンケートからデータ化していました。その分の時間や手間は、このアプリの登録機能で大きく削減できます。また、アプリの通知機能を使って、どの学部に興味があるか、学年などによってセグメントし、ニーズに合った情報への誘導を図ることもできます」

 

イベント開催や出願期間のお知らせを出したり、「出願締め切りまであと○○日」などリマインダーも可能。合格後には入学手続きなどの締め切りを忘れないようにアラートを出すことも考えられる。「こちらが伝えたいことだけでなく、受験生にとって役立つ情報を出していきたい」と田中さん。

 

さらに、オープンキャンパスで参加イベントごとにスタンプを押すスタンプラリーメニューによって、誰がとのようなイベントに参加したかという動向・志向の把握にも活用しているとか。「ru navi」は、これまで把握しきれていなかった情報を活用していくための仕組み。アプリを動かす意義はここにあった。

スタンプラリーでは、会場にあるQRコードを読み取る仕組みになっている

スタンプラリーでは、会場にあるQRコードを読み取る仕組みになっている

スタンプラリーの画面

スタンプラリーの画面

集めるとプレゼントをGet!

集めるとプレゼントをGet!

 

受験対策機能は、今後、英語から他教科へも発展させていきたい考えだ。また、「ru navi」自体のさらなるブラッシュアップも進めていくという。次年度は、オープンキャンパススタッフとして運営に関わる在学生からもアイデアを借り、より高校生にフィットしたアプリにしていくという。オープンキャンパスでどんなイベントに参加するか事前にスケジューリングできる機能や、今は導入していないが事前申込制のイベントをつくってアプリで管理する機能など、柔軟に検討していく。

 

「将来的には、出願も入学手続きもアプリですべてができるようになれば」と話す田中さん。卒業証明書や顔写真など現状のWEB出願では郵送してもらっている部分もデジタル化し、アプリ出願→アプリ入学手続き→入学完了と、“入学に関わるプラットホーム化”を最終目標に、「ru navi」をさらに大きく育ていくという。

 

今回の取材で、大学アプリには、まだまださまざまな可能性があることがわかった。動画、ライブ配信を使ったバーチャル体験など、今後さらに充実していきそうな気配もある。デジタルネイティブである今の高校生たち向けの新しい情報発信が増えることで、入学前から大学に触れるチャンスが増え、じっくり考えて大学を選ぶことにつながるならそれは素晴らしいことだろう。これからの動きに注目したい。

闘う!大学交通広告に「必殺技」が出た。by 大阪経済大学

2019年2月26日 / 大学を楽しもう, 大学PRの世界

今、この瞬間もスマホを見ているあなた。いつも、読んでくださってありがとうございます!……いや、お礼は別の機会に述べさせていただくとして、今回は、電車内でもそうしてスマホばかりに向けられている人々の視線を振り向かせるべく死闘を繰り広げている、大阪経済大学の交通広告のお話である。

誰の胸にも届く「経済」の大学

2012年、大阪経済大学は、経済を学べる大学という特徴を訴える「経済」押しの交通広告シリーズをスタートした。広告のトーンを、それまでのオープンキャンパス・入試日程などの告知目的、あるいは広報キャラクター「はてにゃん。」浸透目的の若干かわいい系から一変。「アカデミックさや専門性の高さをアピール」する方向にかじを切った。受験生向けというよりは、保護者や学生の就職先となる企業のほか、普段、「大学」との接点があまりない方にも大学の名前を知ってもらうという目的を鮮明にした広告である。

 

「『大阪○○大学』という名前の大学はたくさんあります。一般の方に興味を持っていただくには、やはり、経済を学べる大学であることを訴求することだろうと考えました」(総務部長・山下一佳さん)

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総務部広報課のメンバー。左・総務部長の山下さん、中央左・広報課長の田中さん、中央右・白神さん、右・小林さん。

 

交通広告は対象を選ばず幅広い人に訴求できるので、大学の認知度アップのための広告メディアとしてふさわしい。そこで伝える経済の面白さは、高校生だけでなく広く一般の人にも腑に落ちるはずである。この試みの中で評判になったのは、2014年1月の交通広告だ。ここではモノトーンのリアルな町工場の写真から「経済とは何か」と呼びかけた。学内には「暗いのでは?」と危惧する向きもあったが、このポスターを見てわざわざ大学に連絡してくれた中小企業関係者もいた。「素敵なポスターを作ってくれてありがとう」。経済は、誰の胸にも届く可能性を秘めているのだ。

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町工場をテーマにした交通広告は、大学らしくない少しダークなイメージ

賛否両論は広告の当たり前

大阪経済大学では交通広告を、毎年、夏のオープンキャンパスがはじまる7月、推薦入試の出願がはじまる10月、一般入試時期の1月と、1年に3度、それぞれ1週間ずつ関西5私鉄、大阪市営地下鉄に掲出している。

 

「電車の中といえば、スマホに釘づけという人ばかり。そういう人にも、『えっ?』と目を向けてもらえるようなインパクトがどうしても必要です」(総務部広報課長・田中美也子さん)

 

2018年度までの7年間21本の歴史は、スマホ画面との闘いの歴史なのである。近年一番のヒット作となったのは、分厚い札束を手にした子どもたちが駄菓子屋で買い物をしている「ハイパーインフレはやってくるのか」だ。銀行や中学校の先生から、研修や授業に使いたいと連絡があった。

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何気ない日常と札束のギャップが面白い、ハイパーインフレ広告

 

インパクトを追求し注目される広告であればあるほど、賛否両論がある。個人情報をどこまでも守るなら将来こんなふうになってしまうかも? と後ろ向きの人ばかりが載った卒業アルバムの写真を使った作品では、「後ろ向きはイメージが悪い」という意見が寄せられた。超高齢社会をマイナスイメージばかりで捉える見方を変えようというキャッチコピー「高齢者を、日本が世界に誇る知的資源、と考えてみる。」には、「人を資源扱いするとは失礼だ」と叱られたこともある。

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後ろ向きの教師と生徒が目を引く、卒業アルバムを題材にした交通広告

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超高齢社会を扱った交通広告。資源という言葉が引っかかった人も

 

「見る人全員が100%褒める広告などあり得ません。むしろ、2、3割でも、ものすごく気に入ってくれたり、興味を持ってくれたりしたらすごいこと。本来、広告の役割はそういうものですよね」(山下さん)

 

批判を恐れるよりは、面白いものをつくろう。そうした流れの中で、機は熟したというのか、満を持してというべきか、いよいよ、かなりエッジの効いたインパクトのある広告が車内を飾ることになった。2018年度「必殺技シリーズ」である。

この「念」は経大のパワーだ

まずは、この3種の広告を見ていただこう。

 

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一つひとつの熱も結構あるが、3連チャンで見るといわゆるクセがすごい。最初にイラストとキャッチコピーが目に飛び込み→なんじゃこれはー?と思って視線を下げて大学名を確認し→コピーを読んで妙に納得する。キャッチコピーはどれもれっきとした経済用語なのだそうだが、どう見ても何かの必殺技にしか見えない。イラストレーターは回ごとに違う人を起用している。「コンドラチェフ波動」ならロボット系が得意な人といったように、それぞれの世界観にあった画風の人をわざわざ選んでいるのだ。

 

みなさんはどれがお好きですか? 私は「コンドラチェフ波動」です。コンドラチェフとは経済学者の名前だそうで、失礼ながら、よくもまあこんな武闘系のお名前があったものだと感動してしまった。「デューディリジェンス」では、おわかかりの方もおられるかもしれないが、はてにゃん。が化けちゃっている。

 

学内外問わず、SNSも含めて一番リアクションがあったのは7月に掲出した「神の見えざる手」だという。「制作会社さんと議論を重ねて仕上げていくのですが、当初はここまで神々しくなかったんです。『手と念をもっと強調しよう』『髪型はアダム・スミスにしよう』など、インパクトと独自性を持たせながら変化していきました」(総務部広報課・白神康裕さん)

 

アダム・スミスの髪型? ほんまや。世の中の動きを映し出す経済用語を、インパクトのあるイラストとともにどどーんと紹介する、という基本路線が決まった後、アイデアがほんとに数々でた中で絞り込まれた3本だけに、完成度へのこだわりは並々ならぬものがある。コピーの監修はもちろん各専門分野の先生方に依頼している。学内外からの反応はさまざまにあるが、担当者の方々は、一見ははじけているようでいて「ちゃんと実はある」というところが伝わったという手ごたえを感じている。

 

「今、本学にはパワーを感じます。学生や大学内に元気がある。それを伝えていると思います。しばらく続けることで『これは大経大だ』という認知につなげたいですね」(田中さん)

 

大阪経済大学では、2019年4月に新学長が就任する。新しい学長さんは、なんと44歳という若さ。しかも、4人いる学部長も同時期に新しいメンバーに代わる。13年後の2032年に迎える100周年に向け、新たなミッション、ビジョンもそろそろ発表される予定という、まさに改革の節目。そんな機運を表現するには、賛否両論大いに結構の話題性のある広告でなければ、ということなのだろう。

 

実は、田中さんには今年度の3点と迷い抜いた1点があるとか。「みんなに、今はやめとけと言われた」というから、次年度以降にぜひ見てみたくなる。次年度は、この基本路線に沿った広告アイデアを学生と教職員からも公募する「学内『必殺技コンペ』(もちろん仮題)」の構想もあるそうだ。

 

今回、取材にあたって、歴年の広告シリーズを見せていただいたのだが、並べると圧巻だった。経済とこんなふうに出会えると、もっと人は経済を知りたくなるのかもしれないな、とも思う。さあ今年7月、どんな広告が車内の視線を奪還するのか、必殺技を期待して待て!

「shiRUto」って、知っとると? 立命館大学の新サイト、好調発進。

2019年2月19日 / 大学PRの世界, 大学を楽しもう

大学と社会はどうつながっているの? そんな疑問に真っ向から応えてくれるサイトが、昨年11月、立命館大学から新しくオープンした。「大学=知の殿堂」であることに改めて気づかされるお役立ちサイト。同大広報課をおたずねして、開設の意図をうかがった。

立命館大の知をあなたの力に

2018年11月1日にオープンしたサイトの名前は、「shiRUto(シルト)」。2017年夏頃の構想開始から、ほぼ1年の歳月をかけて形にした。新サイト立ち上げの狙いを、担当者の名和さんはこう語る。

「公式ホームページには、本学のことを知っている人、何らかの目的をもって本学を検索した人のアクセスがほとんどです。本学のことを知らない方が、気軽にアクセスできる入口になればと考えて作りました」。

 

そのような入口になるためには、多くの人の情報検索にひっかかる必要がある。そこで、話題の出来事、社会で解決すべき問題・課題、幅広い年代の関心事などが網羅されており、記事を読むことで何かの参考になったり、ひらめきにつながったりするサイトという方向性が決まった。

 

shiRUtoでは、ビジネス、テクノロジー、グローバル、ライフ、スポーツ、カルチャーの6つのカテゴリーに分けてコンテンツを提供している。絞り込みできるようタグが設けられているが、オリンピック、AI、eスポーツ、IoT、チーム/組織論、食、子育てなどなど、世の中の多くの人が関心を持つさまざまなテーマが取り上げられていることがわかる。

Aboutページではサイトの方向性が示されている

Aboutページではサイトの方向性が示されている

その記事は、読者が知りたいと思うテーマを設定し、同大の先生が解説をしたり研究成果からわかったことを述べるというスタイルが一般的。「子どもはほめて育てるのが正しいのか?」というテーマの記事では、先生が実際に乳幼児と母親を対象に行っている研究から得られた科学的事実から見解を述べる。

 

「日本のeスポーツはどうなる?」「ものづくりを支えるロボットシステムインテグレーターとは?」「グローバルビジネスにおけるルール・メイクの重要性」「今、正しい朝ごはんとは?」と、少し挙げてみるだけでも、さまざまな世代の多様な関心に応えていると感じる。

日本でのeスポーツの課題を示した記事は注目を集めた

日本でのeスポーツの課題を示した記事は注目を集めた

2019年4月から16学部になる同大の約1,000名にのぼる先生たちは、人々の関心や社会の要請に応えて日々研究を進めている。そうした莫大な知的資産と問題解決したい多くのネット市民たちをつなごうというのが、このサイトの目的なのだ。

 

「一般の方にとっては、大学の研究が社会にどのような影響を与えているのかわかりづらいと思います。関心の高い身近なテーマを中心に取り上げること、文章のタッチもかなり軽めにして読み物として紹介することなどによって、研究の内容を理解してもらうのと同時に大学を身近に感じてもらいたいと考えています」(名和さん)

誰もが知りたいことを読みやすく

「タッチは軽めに」ということだが、なかなか読みごたえのある記事が並んでいる。同じく広報課の森本さんは、「しっかりと説明して、社会に知を実装するというわれわれの大学の強みを感じていただきたい。社会の課題となっているところにうちの研究はどう生かされているか、その挑戦を感じとってもらえれば」と語る。

 

先生だけではなく学生や卒業生も登場し、6つのカテゴリーに関連した生きる上でのさまざまなヒントを提供してくれている。

 

編集会議では翌月、翌々月までのテーマを決定し、月に10本を目標に6つのカテゴリーをバランスよく更新。週にすると2、3本のペースだ。テーマの選定については、メディア等で話題になったキーワードと関連する研究テーマを取り上げて注目度を高めるのが一つ。1964年の東京オリンピックを契機に整備されたインフラが老朽化し始めているという社会問題から、コンクリートに穴を開けずに、画像データ等で劣化状態を調査する研究を取り上げるといった具合だ。

良質なコンテンツへの誘導も

外部のライターが取材・執筆を行っているオリジナル記事だけでなく、リライト記事やリンク記事もある。この2種類は、立命館大学で制作している他のサイトの記事を活用したものだ。

 

shiRUtoの立ち上げ時に広報課が調べたところ、立命館という冠のついたサイトが100以上あることがわかったという。良質なコンテンツもあるのだが、調べてみるとあまり読まれていない。そういうサイトを吸い上げ、shiRUtoの中で展開したり、リンクを貼ることによって、良いサイトに誘導するというのも重要な役目である。

2018年4月新設の食マネジメント学部によるメディア「ガストロノミア」からのリンクも

2018年4月新設の食マネジメント学部によるメディア「ガストロノミア」からのリンクも

「shiRUtoという大きな入口を活用して、それぞれのサイトを行き来しながら全体的に立命館大のことを知り、ファンになってくださる方を増やすことができればと思っています」

読者からの反応はまだこれから分析していくところだが、先生方からは好評。意見交換をしながら、より質の高い記事にしているという。「ここで紹介して認知されることで共同研究等に繋がるなどの可能性も広げていきたい」(名和さん)

 

キャッチフレーズ「知ると、ツナガル、ウゴキダス。」の通り、繫がるメディアでもあるわけだ。

 

とはいえこのサイト、パッと見て立命館大とわからない。「デザイン面では、立命館色はできるだけ薄く、ひっそりと」を肝に銘じているとか。

スクールカラーのえんじ色を使っていないのが大きい。「とはいえ、実は立命館フォントと呼ばれる文字を使っていたりはします。あくまでも、さりげなく、です」と名和さん

スクールカラーのえんじ色を使っていないのが大きい。「とはいえ、実は立命館フォントと呼ばれる文字を使っていたりはします。あくまでも、さりげなく、です」と名和さん

「今後はますます、自分の大学がどうだから、というようなことよりも、それがユーザーやステークホルダーにとってどんな価値、インパクトがあり、どう繋がるものなのかを基準に考える、という方向性が基本になっていくと思います」と森本さんはこれからの情報発信の方向性を語る。

 

最近は、メディアの“相互乗り入れ”も始めつつある。講談社ブルーバックス社のサイトでは、eスポーツの記事を転載した。「他のサイトに来ている人にうちの記事が読んでもらう事はとてもありがたい」と、今後とも他のサイト等との連携を進めていきたい考えだ。

 

「目標はあくまで高く、大学業界随一の規模を誇るメディアをめざしています」と名和さん。これからのshiRUtoに期待したい。

祇園は観光地か?! 龍谷大が祇園で調査した訪日客の実態は?

2019年1月8日 / 大学の知をのぞく, この研究がスゴい!

日本情緒にあふれた京都・祇園町は、外国人観光客に不動の人気を誇るエリア。しかし近年、急激に観光客が増え、地域住民との間にさまざまな摩擦が起こるようになっている。問題解決に向け、龍谷大学国際学部デブナール・ミロシュ講師と学生たちが調査を実施した。

「一見さんお断り」の町にやってきた観光客

京都、八坂神社に向かう四条通の南側一帯、祇園町南側は、国内だけでなく世界にも知られたお茶屋文化の町。しっとりとした町家のたたずまいを背景に時折行き交う舞妓さんや芸妓さんが、伝統の花街情緒を醸し出す。花街というだけでなく、町家の並ぶ「ザ・京都」的な町並みが非常によく残っているのが祇園の魅力である。

 

だが、驚くことに、祇園は観光地ではない。もちろん、舞妓による京舞、日本の伝統芸能や伝統文化を1時間でダイジェストに楽しめる「ギオンコーナー」といった観光客向けの施設もあるが、ほとんどはそうではない。少なくとも、祇園に住み商売をしている人たちはそう考えている。お茶屋はご存知の通り一見さんお断りである。エリア内にはみやげ物店などはほとんどなく、レストランやカフェなどの飲食店も予約の必要な店が多い。観光がもたらす経済効果が及ばないのが、祇園のビジネスモデルなのだ。

 

祇園町南側の人たちにとって、古きよき町並みは、貴重な財産であり商売に欠かせない“パートナー”だった。地区の人がまとまって京都市とも協力し、花見小路の景観整備、私道の整備、防災活動などを進め、大切に守ってきた。しかし、ここ数年のインバウンド旅行人気が、この町の状況を変えた。「祇園町南側の特徴は、商業地でありながら人が暮らしていることです。町家のたたずまいがそのまま残っているのも、住宅として使っていること大きな関係があります。こうした日常生活を営む場所に、世界から観光客が訪れ始めたことが、地区の人を悩ますことになりました」(デブナール先生)

祇園町の課題について話すスロバキア出身のデブナール先生

祇園町の課題について話すスロバキア出身のデブナール先生

 

無断で個人宅の玄関前で写真を撮る。なかには、敷地の中にまで勝手に入ってきてしまう人もいる。舞妓さんを見かけると追いかけて一緒に写真を撮ろうとする。

 

お茶屋遊びは、舞妓さんが置屋を出た瞬間から料金が発生するシステムなので、お座敷に向かう舞妓さんが遅れることはお客に直接迷惑がかかることになる。もっと単純には、人が多すぎて、お客さんが乗ってきたタクシーが動けないというようなトラブルも増えているという。

訪日客は祇園に何を求めている?

町の人の自治組織、祇園町南側地区協議会ではこの問題を何とかしたいと考え、まずは訪日観光客の実態をつかもうとデブナール先生に調査を依頼した。デブナール先生は、大学院生時代から京都に住んで11年。この数年祇園に興味があり、協議会の話し合いにも参加してきたという。

 

2年前に初調査を行い、今回の調査は2回目。2018年8月、龍谷大学国際学部の授業「国際文化実践プログラムⅡ~国際観光と京都~」の受講生とともに調査を実施した。学生たちは、事前学習として、協議会の人たちから祇園の歴史やビジネスなどの現状、観光客とのトラブルの現状などについて学んだ上で調査に臨んだ。

祇園に出向き、現地を訪れる訪日観光客にタブレット端末によるアンケートを実施

祇園に出向き、現地を訪れる訪日観光客にタブレット端末によるアンケートを実施

5日間かけて252人から回答を得た

5日間かけて252人から回答を得た

 

調査結果は、後に報告書としてまとめるそうだが、その前に報告会があるというのでおじゃまさせてもらうことにした。2018年11月14日、会場は龍谷大学深草町家キャンパス。協議会のメンバーや京都市の担当者を招き、学生たちが調査結果を報告した。

深草町家キャンパスは、深草駅にほど近い、150年以上の歴史を持つ京町家

深草町家キャンパスは、深草駅にほど近い、150年以上の歴史を持つ京町家

 

調査した観光客の内訳は、ヨーロッパが半数、4分の1が中国・台湾・香港、1割弱が北米・オーストラリア。アンケートは「情報源」「観光行動」「マナー」「イメージ」という4つの観点で質問項目が構成されていた。

4つのグループにわかれ、順に調査報告を行う学生たち

4つのグループにわかれ、順に調査報告を行う学生たち

 

観光情報をどこから得たかという「情報源」については、ガイドブックを頼る人もいるが、自分たちで集めた情報をもとに観光をする人が多いこと、若い人の4割程度はSNSから情報を得ていることがわかった。

 

「観光行動」では、アジアからはリピーターがより多く、欧米の観光客は初めての人が多いとのこと。学生たちは、遠い国から来て、日本文化に触れられる場所として祇園が選ばれているという分析をしていた。また、祇園の文化を知りたい、地元の人と話したいという人が多いことにも注目をしていた。

 

アジアから来た人の4割近くが、京都は日帰り予定であるにもかかわらず祇園に来ていることなども明らかになった。祇園で関心のあるもののトップは伝統的な風景や建築、次は現地の習慣やマナーである。とくに欧米から来た人は、ギオンコーナーに行く人が多かった。

 

「マナー」については、予約なしに高級料理店を訪れたり、撮影のときに自撮り棒を使うこと、舞妓・芸妓の写真を撮ることなどをどのように認識しているかを調査。実際に調査の際に、舞妓を追いかけて写真を撮っている観光客を目の当たりにした学生もいたという。看板やポスターなどでマナーを呼びかけてはいるが、一度しか訪れることのない観光客も多いため、WEBサイトなどを使ってマナーを広める必要があると分析していた。

 

最後に「イメージ」については、祇園は観光地ではないということについてどう思うか、舞妓は観光客のものかなど、祇園のイメージが観光客にどのように浸透しているかについて調査を行った。祇園を観光地と思っているのは8割程度もおり、さらに舞妓は観光客のためにいると思っている人もいたようだ。同時に、入場規制など観光行動が制限されることになっても、祇園の伝統的な雰囲気が守られるべきかという質問には、8割程度が賛成していた。

コミュニケーションが第一歩

学生たちからは、「祇園の歴史を理解していない人が多いことがわかった。観光客に歴史やそれを起源とするマナーを理解してもらい、WINWINの関係をつくるための方法が必要」「祇園の雰囲気が守られることに反対、という人がいるのに驚いた。祇園が伝統的な文化を守っていること、その重要性を理解してもらうことが大切だと改めてわかった」など調査の感想が述べられた。

学生たちの報告に、協議会の方たちも真剣に耳を傾ける

学生たちの報告に、協議会の方たちも真剣に耳を傾ける

 

国際学部3回生のメンバーの1人は、「観光客一人ひとりと直接話してみて、いろんな考えを持っている人がいることがわかりました。日本人と交流したい、話しかけてほしい、と思っている人も予想以上に多い。思い込みで対策を考えるのでなく、まずは実際にコミュニケーションしてみることが大切だと思う」と話す。

 

学生の発表を聞いた協議会のメンバーからは、観光情報源としてのSNSに注目する声があがった。「マナーを知って行動を改められるのは、年配の人よりむしろ若い人ではないか。その意味で、若い人に伝わる情報発信をしていきたい」という意見に、デブナール先生は「若い層に伝わる情報をどのように発信するかについては、学生や留学生がお役に立てるのではないか」と応じていた。

 

世界の観光都市、バルセロナやベルリン、ソウルなどでは、観光に反対するデモが起こっているという。京都は観光都市であり、ここ数年減ってきた日本人の観光客を補う外国人観光客の存在は重要だが、経済効果だけでは単純に評価できない問題がある。

 

「祇園に来る観光客は、オーセンティシティ(真正性)、つまり本物の日本らしさ、京都らしさを求めて来ている。しかし、観光の影響で祇園で暮らす人がいなくなったら、町家の並ぶ町並みは今のような形で残っていくことができないかもしれない。学生たちは、この調査によって、観光に存在するさまざまな問題に気づくことができたと思います」

 

観光の規模が増すと、今までなかった問題がいろいろと巻き起こる。観光は経済を潤し、町を活性化させる、などとひとくくりに語ることなどできないのだと改めて知ることができた。京都には本物の日本がある、などと何となく安心していたが、それは努力があってこそ守られてきたもの。せめて、もっと知ろうとしないとな、と考えさせられた貴重な経験となった。

黒板愛が炸裂した阪大トークセッションイベントに行ってきた!

2018年12月20日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

2018年10月に大阪大学で「湯川秀樹博士愛用の黒板でアートとサイエンスを語ろう」というイベントが開かれた。日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹博士が米コロンビア大学で使った黒板の実物に触れられるというのにも興味がそそられるが、もっと言えば、世の中に黒板だけで90分語り尽くす会が存在することもすごい。実際に想像以上の白熱教室で、「黒板、なめたらあかんな」としみじみ感じ入った。

 

湯川黒板がここにあるわけ

 

会場は、大阪大学豊中キャンパスの一角、大学院理学研究科で学ぶ学生たちのためのコミュニケーションスペースだ。登場人物は、黒板を愛してやまない理論物理学者の橋本幸士教授(同大大学院理学研究科)と黒板アートで今をときめく高校の美術教諭、濵﨑祐貴先生のお二人。

 

今日の主役の黒板は、想像していたより深く青みがかっている。濵﨑先生が描いた、笑顔を見せる湯川秀樹博士の上半身は、等身大サイズちょっと増という迫力がすごい!

 

そこに湯川博士がいるかのような臨場感!

そこに湯川博士がいるかのような臨場感!

 

イベントは、橋本先生による「湯川秀樹博士愛用の黒板」がここにある理由の説明から始まった。コロンビア大学の校舎立て替えの際に「ユカワが使っていた部屋の黒板だし、必要な人がいるのでは?」と世界に発信され、当時、理化学研究所に勤めていた橋本先生が手を挙げ、2014年に無償で譲渡された。

 

由来について話す橋本先生。うしろに写っている写真が濱崎先生による絵の元になったもの

由来について話す橋本先生。うしろに写っている写真が濱崎先生による絵の元になったもの

 

厚みこそ1cm弱と薄いが、重さは2枚で100kgを超すという天然スレート(粘板岩)製。イベント終了後に触ってみたが、ヒヤッと冷たくて本当にすべすべしており、これまで知っていた黒板とはまったくの別物だ。チョークで書くときに詰まった高い音がするのも、石製ならではだ。

 

70年前のアメリカから時空の旅

 

湯川博士は京都帝国大学理学部物理学科を卒業した後、大阪帝国大学理学部で講師、助教授を勤め、その間に中間子論を生み出し中間子の存在を予言。数年後にイギリスの物理学者がその中間子(パイ中間子)を発見したことから、1949年、米コロンビア大学の客員教授だった42歳の時にノーベル賞を受賞することになった。

 

同大でその記者会見に臨んだ時の写真をモデルに、濱崎先生が朝から黒板に描いた博士。その背景には、ノーベル賞の受賞対象となった中間子論の核となる部分の数式があるはずだが、イベント開始時はあえて空白のままにしてあった。

 

それを、理論物理学者の橋本先生が書き入れて黒板画を完成させ、数式についてのミニ講義が始まった。記者会見から70年を経て、その瞬間が再現されたかのよう。アートとサイエンスのコラボで時空を一気に飛び越えてしまった。

大学院レベルのミニ講義を体験・・・難しいということはわかった

大学院レベルのミニ講義を体験・・・難しいということはわかった

 

物理講義は私には難しすぎたが、心に残ったのは「湯川博士が黒板の前で記者会見したのが、理論物理学者らしい」という橋本先生の言葉。理論物理学や数学の世界では、黒板に数式を書きながらアイデアを試したり人に伝えたりするのが日常で、世界の著名な物理学研究所でもそうした風景が見られるという。そういえば、福山雅治主演の「ガリレオ」でもお約束のシーンだった。

 

「子どもが道路に石墨でお絵かきをするのと同じ。思ったことを形にするなら、早いほうがいいし、身近なほうがいい。さらにそれをシェアするなら大きなほうがいい」。
理論物理学者は黒板に向かってアイデアを数式にし、「これはどうなっているのか?」「本当はこんなふうになるんじゃないの?」などと式で語り合う。「湯川博士もこの黒板で、自分のアイデアを形に残すために頭から出すという作業を行っていたのでしょう」。

 

ワンランク上の板書

 

次に濵﨑先生が自分の作品や仕事ぶりを紹介。濵﨑先生は、2016年にピカソの「ゲルニカ」を白いチョークだけで黒板いっぱいに模写した作品がSNS上の話題をさらい、以降、勤務している高校の美術の授業の教材として、また美術部の活動として、あるいは卒業生へのはなむけとして描かれた作品などが注目を集め続けている。

富嶽三十六景、最後の晩餐、ジブリ作品などを描いた黒板アートなどを紹介

富嶽三十六景、最後の晩餐、ジブリ作品などを描いた黒板アートなどを紹介

 

いつしか「黒板アート」と呼ばれるようになっても、濵﨑先生の信条は「私は芸術家ではなく教師であり、最も大切にしているのは生徒である」ということ。世界的名画や人気アニメの印象的場面を黒板上に再現する作品群は教える手段であり、「ワンランク上の板書」だと考えているそうだ。

 

黒板画の極意も明らかになった。「私が普段使っているのは6色。限りがある中で、どう色を使おうか考えるのが楽しい」。黒板地の緑をいかに残すかというのが作品の決め手で、湯川博士の絵も髪の毛や眉、ネクタイの柄などは黒板そのままの色だ。全部書き込んでしまうと味気なく、8分(はちぶ)がちょうどいいのだそうだ。

 

黒板の声を聴け

 

後半は、「今日は、『黒板の友だち』にお会いするのを楽しみに来た」という初対面の二人が、黒板を巡ってさまざまな方向から語り合った。
「チョークへのこだわり」問題では、橋本先生が、チョークメーカーの羽衣チョークが、廃業(2015年3月生産・販売終了)したことを話題に。ある大学の数学の教授に与えられる賞の賞品が羽衣チョークというぐらい品質の高さで世界から愛されていたと話すと、濵﨑 先生も、「チョーク界のロールスロイスと言われていますからね」と返す。さらに、珍しいチョークを持参。一筆でいろんな色が出せるマーブルチョークや巨大チョーク、超小さな黒板消しまで出てきて会場が沸いた。

 

こんな巨大チョーク登場!

こんな巨大チョーク登場!

 

「湯川黒板のすごさ」問題では、濵﨑先生が、「めちゃくちゃ滑らかな書き味。生まれて初めて」と感嘆する。グレーの部分は指で軽くこすって表現するが、この黒板は本当に滑らかなのでちょっとこすっても全部落ちてしまう。「どうしたらいいんやろうと、朝から黒板と対話していました」と話すと、橋本先生は「うわー、その対話に僕もまぜてほしかったなあ」と残念そう。

 

核心の「黒板の魅力」話になると、さらに熱量が上がる。濵﨑先生は、黒板には手描きの温かさがあり、大きさやスケール感もコンピュータに勝ると言い、「授業が終わって、役目を終えたら消してしまうのも、惜しまれつつ去るみたいなかっこよさがある」。素晴らしい作品群もすべて消してしまっている。黒板も描きっぱなしだと色がしみついたり劣化したりし「呼吸ができないようだから」と、その理由には思いやりが滲む。

 

黒板への思いを語る濵崎先生

黒板への思いを語る濵崎先生

 

一方の橋本先生は、「黒板に書くことで頭の中で整理されていく。その板書には、思考の過程が刻まれている」と、黒板が研究の相棒であることをアピール。濵﨑先生の「呼吸ができないよう」発言に応え、イギリス・オックスフォード大学の博物館に貴重品としてガラスケースの中に展示されている、アインシュタインが書いたまま消さずにある黒板のエピソードを語り、きっと触ってもボロボロで、なんの息吹も感じられないものになっているのではないかと語る。

 

二人とも、「黒板は、誰かから誰かに何かを伝えるもの。そのために表現するもの」だという。板書はメッセージだったのか。その大切な意味にほとんど気づいてこなかったことを、大いに反省した。「思考との出会いもくれるということを今日、学びました」と話す濵﨑先生に、「黒板の素晴らしさを語れたこの出会いに感謝しています」と返す橋本先生。黒板とともに過ごす人生は相当に奥行きがあることを教えてくれたイベントだった。

大阪大学の至宝、名門ピアノ、ベーゼンドルファーを堪能する!

2018年12月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

2018年10月に大阪大学会館で開かれた「第21回コレギウム・ムジクム ベーゼンドルファー1920を囲んで」のレポートをお送りする。大阪大学が誇る「宝物」の一つ、1920年にウィーンでつくられたピアノを五感で堪能する、ピアノ好きのためのイベントだ。

 

建物とほぼ「同期」のピアノ

会場となった大阪大学会館のホールに入ると、小さめのステージの上にそのピアノはあった。今回のイベントは、イベントの開始前や休憩時間、開始後に参加者がピアノを弾いたり触ったりしてもよいというユニークなもの。すでにステージ上では参加者が、さまざまな角度に回りこんでピアノの姿を眺めたり、曲を弾いてみたりしている。

 

「ベーゼンドルファー1920」は、19世紀に創業したウィーンの名門ピアノメーカー、ベーゼンドルファー社が1920年に製作したグランドピアノ。低音が現代のピアノより4鍵多く、豊かで独特な響きを持っているのが特徴である。

 

2011年の大阪大学会館リニューアル時に設置されたこのピアノを選んだのが、今回のイベントを企画した大学院文学研究科音楽学研究室の伊東信宏教授だ。

 

ベーゼンドルファー1920の由来を話す伊東信宏教授

ベーゼンドルファー1920の由来を話す伊東信宏教授

 

イベントの冒頭に、その経緯が説明された。大阪大学会館は、大阪大学の前身、旧制浪速高等学校本館イ号館として1928年に建てられた。アールデコの直線的なデザインが取り入れられた、豊中キャンパスでも一番古い建造物。伊東先生は、「現代のピアノでなく、建物と同じ頃につくられたピアノを入れたら面白いのではないか」と考え、専門家に探してもらったのがベーゼンドルファー1920だという。

 

アールデコ様式の大阪大学会館

アールデコ様式の大阪大学会館

 

「ピアノや車などの工業製品は、最新のものほど性能が良いわけではない」と先生。大量生産という目的に合わせて簡略化されていることも多く、古い時代のもののほうが凝っていることもある。現代のもののほうがよいという先入観を取り払い、一つひとつのピアノに向かい合う面白さを体感してもらおうと開いたのが、このイベントだ。

 

ミッションの魅力

まずは、ピアノ300年の歴史についてのレクチャーから。ピアノが生まれたのは1700年頃。チェンバロ製作者のクリストフォリがピアノもフォルテも出せるチェンバロとして開発し、その機能から「フォルテピアノ(またはピアノフォルテ)」と呼ばれた。現代のピアノも正式には同じ名前だが、古い時代のピアノを「フォルテピアノ」と呼び、現代の「モダンピアノ」と区別するのが通例になっている。

 

ピアノの歴史を映像と音でふり返る

ピアノの歴史を映像と音でふり返る

 

先生は、映像とともに演奏の音声も流して説明。初期のピアノはほぼチェンバロのような音色だ。さらに、ハイドンの時代やベートーヴェンが活躍した1800年代のピアノの音、そしてモダンピアノの音。その違いはかなりはっきりしていた。

 

いよいよベーゼンドルファー1920の音を聴こうということになって登場したのが、本日のゲスト、福岡県立大学准教授・鷲野彰子さんだ。日本とニューヨーク、オランダで学んだピアニストであり、音楽学研究者でもある。

 

19世紀の後半から20世紀に入る頃、ピアノはほぼモダンピアノの形になった。ベーゼンドルファー1920もモダンピアノではあるが、21世紀の今のピアノにはない魅力と可能性があると鷲野先生は言う。

 

まず、鍵盤を押したときの感触、タッチに軽さがあることを取り上げ「すべての音を自分で操作できる可能性がある。弾いていて本当に気持ちがいい」と述べた。

 

さまざまなフレーズを実際に弾きながら、ベーゼンドルファーの音色を確かめていく

さまざまなフレーズを実際に弾きながら、ベーゼンドルファーの音色を確かめていく

 

フォルテピアノの時代には、ぺダルなどを使って音響効果を自分でつけることができた。今のピアノはそのような操作の必要はなく、誰でもきれいな音が出るようにつくられている。鳴りはいいが、半面、細かなニュアンスを変えたくても変化させにくい。「車のオートマとミッションの違いでしょうか」と鷲野先生。

 

「アコースティックな楽器のよさは、楽器の響きによって教えられることです。音が鳴り、奏者はそれに反応して、次にどう弾くかという選択をしています」

 

ベーゼンドルファー1920にはそれができる余地が残されているという。鷲野先生のようなフォルテピアノの演奏に長けたピアニストだからこそ抱く思いなのかもしれないが、昔の楽器の面影が、より濃密な「対話」の可能性につながっていることは確かなようだ。

 

すき間だらけだった作品

後半は、昔の時代の演奏法について、現代との違いを鷲野先生に学んだ。大きなポイントは、さまざまな演奏法が試みられたこと。

 

18~19世紀には、曲の前奏を即興で演奏したり、曲の間に奏者が自作した曲を演奏したりすることも一般的だった。奏者が楽器に慣れるため、次の曲の調に慣れるためだといわれている。

 

鷲野先生によると、私たちは、曲の始まりを作曲家の意図したものとは間違って捉えているのかもしれないという。「現代は、楽譜に書いてある通りに演奏するのが常識です。でも、当時、作品は確固たるものでなく、すき間だらけだった」。

 

それについて、「音楽自体も、自立したはっきりとした輪郭のあるものではなかった」と伊東先生。楽器にせよ音楽にせよ、現代の常識とは違う側面があったことが興味深い。

 

最後は、鷲野先生によるベーゼンドルファー1920の演奏。「ウィーンの香りを残すベーゼンドルファーに似合う」ハイドン後期の「鍵盤楽器のソナタ変ロ長調」と、「このピアノが得意とするであろうロマン派の、しかし癖のある」シューマン『森の情景』から「別れ」の2曲だった。

 

ウィーン生まれの美しい音色に聞き入った

ウィーン生まれの美しい音色に聞き入った

 

イベント終了後、多くの人がステージに上がり、思い思いの演奏で弾き心地を確かめた。ピアノを囲んで、聴いたり弾いたりしながら面白さを感じる、五感で楽しむイベントになったようだ。

 

1曲暗譜して弾く達者な方もちらほら

1曲暗譜して弾く達者な方もちらほら

濃厚で多彩な「京大らしさ」に迫るスペシャル動画、の裏側に迫る!(後編)

2018年10月23日 / 大学を楽しもう, 大学PRの世界

2018年7月、京都大学が「一言では決して言い尽くせない『京大らしさ』」を「大学」「学生」「教員」の3方向から伝える、スペシャル動画の配信をスタートした。3方向のうち「大学」の魅力発信について紹介した前編に続いて、後編では「学生」「教員」の魅力発信動画のねらいや制作秘話、京大の広報戦略についてスポットライトを当てていこう。

チャレンジャーな学生たちが京大を体現

まず京大らしい「学生」の魅力を紹介するのは、特設サイト「京都大学おもろチャレンジ」だ。

特設サイト「京都大学おもろチャレンジ」

特設サイト「京都大学おもろチャレンジ」

 

「京都大学おもろチャレンジ」とは、「野性的で賢い学生を育てたい」、「異文化を理解し国際的に活躍できるグローバル人材を育成したい」という想いで設立された体験型海外渡航支援制度だ。京大を卒業した財界トップたちによる総長支援団体「鼎会(かなえかい)」の全面的な支援によって2016年度にスタートした。特設サイトでは、毎年30件程度が採択されている、この「京都大学おもろチャレンジ」から選りすぐりのものをピックアップして、活動内容を動画で紹介している。「単に動画にしてYouTubeに載せるのではなく、できるだけ見やすい形で発信していこうとサイトにすることにしました」(広報課情報発信掛長・檀原正憲さん)

広報課情報発信掛長の檀原正憲さん

広報課情報発信掛長の檀原正憲さん


特設サイトを立ち上げた今年は、数名程度を紹介する予定だったが、候補に挙げた学生たちの話を聴いてみたらいずれも甲乙つけがたくおもろかったので、候補となった7名全員を紹介することになった。制作には、テレビ番組やドキュメンタリー番組を得意とする映像制作会社が関わっており、インタビューを中心に3分~4分半ぐらいにギュッと絞り込んだ密度の濃い作品に仕上がっている。


「京大がやっている面白い活動について、学内での認知につながってきているのを感じます。京大出身の先生から『おもろチャレンジに自分もチャレンジしたかった』という言葉をいただきました。とはいえ、残念ながら先生の時代にはなかったんですけどね(笑)」(広報課情報発信掛・酒井悠助さん)

広報課情報発信掛の酒井悠助さん

広報課情報発信掛の酒井悠助さん

おもろい先生たちが動画で語る

京大らしい「先生」方向から魅力を紹介するのは、特設サイト「京大先生シアター」である。3,000名を超える教員や研究者を擁する京大には、あまりメディアには登場していないがユニークな研究を行っている魅力的な先生が数多くいる。そんな中から一気に42名を取り上げ、自分の研究を自分の言葉で紹介する動画を作成し、特設サイトに載せて発信している。
京大先生シアター

京大ぐらいの大規模大学になると、どの学部でどんな先生が何をしているか、広報担当に情報が逐一舞い込んでくるなんてことは当然ない。自力で学内ネットワークを開拓する、部局のイベントに片っ端から出向く、部局に下調べをする、地道にネット検索をする、研究成果の記者発表時に顔見知りになる、アウトリーチ活動に注目する・・・などなど、極めて地道な草の根活動を日々重ねているという。
42本を一気見した。1本1本は短いが、物量があるからかその迫力は相当にある。一度にたくさん見ると、「京大ってすごい感」が増す気がする。もちろん、研究の話だからといって、難しいことを語ったりはしていない。「おもろチャレンジ」動画にもいえることだが、動画だと言葉づかい、表情、ファッションまで、その人すべてを味わい尽くせるのがとてもいい。

「先生シアター」は100本ノックならぬ、100本動画をめざしているとか。すでに、最新作の撮影もスタートしている。「おもろチャレンジ」も今後、毎年海外に雄飛する学生たちから選りすぐりの猛者が登場するのだろう。この一人ひとりが、京大を体現していく。

「『先生シアター』でいろんな先生と知り合いになり、京大の先生はやっぱり面白いなと改めて実感しました。研究内容があまり絵にならないからどうしようかと思っていた先生が、撮影当日、数式をバーっと書き出して、すごくいい絵が撮れたり。動画をつくる私たちも楽しめています」(檀原さん)
「においは薬になりますか?」薬学研究科 伊藤美千穂 准教授01 「ヒトの脳を癒し、ニューロサイエンスに挑む」医学部附属病院 荒川芳輝 特定講師01
「哲学はタイムマシン」人文科学研究所 田中祐理子 助教03 「個人の尊重原理に基づく国家・社会の在り方を探究する」 法学研究科 土井真一 教授02

浮かび上がる「らしさ」

前編で紹介した総長による大学の魅力動画「知のジャングル」を含めて、これらの動画で表現したいのは、「一言では決して言い尽くせない『京大らしさ』」だと京大の広報担当者たちは一貫して語る。5、6年ほど前から主体的な発信をスタートし、いろいろと広報ツールを刷新していったが、ブランディングが定まっていない点は課題として残っていた。京大の119年の歴史の中で、多数の卒業生や教員、学生たちの実績によって醸成されたイメージはあるが、大学自らが、京大=コレ!というものを明確にしているわけではなかった(それが京大らしさだという声も多かった)。いわば、理念やビジョンは明確に在っても、その「見える化」が出来ていなかった。
それでは受け手に伝わらないと、2017年度に手がけたのが「京都大学ブランド策定事業」になる。プロの手も借りて、徹底的に学外調査を行い、今の京大の姿を浮き彫りにし、さらに学内ワーキングを重ね、学内関係者が思う京大らしさを徹底的に洗い出していき、「京大らしさってこうだ」というある程度の方向性を確認した。
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その結果が、「一言では決して言い尽くせない」である。
「多様性」という一言では足りないし、「自由」といってもそれだけではない。日々京大で起こる全てのことが「京大らしさ」を語っている。「一言では決して言い尽くせない『京大らしさ』」をどう表現していくか、その一つの答えが、今回の3方向からのスペシャル動画だったのだ。

「一言では決して言い尽くせない京大の魅力を紹介するには、まず、広報の人間自体が京大のことに興味がないとできません。なので、私たちは常にアンテナを張り巡らせて、京大に注目しています。もはや「趣味は京大です」・笑。京大にはすごくおもろいリソースがいっぱいあるので出さないともったいない、という精神でやっています」(広報課広報企画掛・播さん)

広報課広報企画掛の播真純さん

広報課広報企画掛の播真純さん


 今までに紹介したものも含め、一般人が見ても面白いサイトが多い。たとえば「ザッツ・京大」もその一つだ。ここに掲載されるネタは、日頃メディアに取り上げられるような一軍ネタばかりではない。むしろそれよりも、オフィシャルWebサイトや広報誌といった一軍の根幹をつくり支える「二軍ネタ」が雑多に詰まっている。探検部、ブーメランサークルなどオリジナリティあふれる学生の活動、不老不死や最高の焼きイモを作るといった常識では考えられない研究をしている教員や学生など、京大ならではのネタが雑多に詰まっており、京大をよりマニアックに知ることが出来るサイトといえるかもしれない。(「ザッツ・京大」の誕生秘話はこちらから

「ザッツ・京大」

「ザッツ・京大」


「細かい説明文や凝ったデザインがなくても、それを見るだけで、なんとなく京大らしいと思ってもらえることを意識して、発信しています」(播さん)

京大では、いつもいろんなところでいろんなことが進行している。ネタはたくさんあるが、まだまだ拾いきれていないのが広報担当者の悩みだという。変革し続ける京大広報のこれからに注目したい。

 

濃厚で多彩な「京大らしさ」に迫るスペシャル動画、の裏側に迫る!(前編)

2018年10月18日 / 大学PRの世界, 大学を楽しもう

2018年7月、京都大学が「一言では決して言い尽くせない『京大らしさ』」を「大学」「学生」「教員」の3方向から伝える、スペシャル動画の配信をスタートした。どんな「らしさ」を盛り込んだのか、ねらいや制作秘話など、担当者に直撃インタビューしてきたので、前後編にわけてたっぷり伝えていきたい。

総長動画の「らしさ」

「京大らしさ」を大学、学生、教員の3方向から発信する、そのうちの1つが、「大学」の魅力を発信する動画「スペシャルムービー『知のジャングル 京都大学』」である。登場しているのは、山極壽一総長。霊長類、なかでもゴリラ研究の第一人者としても有名である。動画では、山極総長がジャングルの映像をバックに観る人に語りかける、シンプルなだけにメッセージ性の強い内容になっている。

スペシャルムービー『知のジャングル 京都大学』

スペシャルムービー『知のジャングル 京都大学』


ジャングルは、総長自身の専門分野であり、また京大の名を世界に轟かせる研究分野の一つでもある霊長類学研究のフィールドだ。また総長自身、就任当初から、京大の理念やビジョンを表現する際に、「京大は知のジャングル」と表現していたこともあり、動画のモチーフに選ばれた。映像にCGを全面的に使わなかったのは、「ジャングル感を全面的に出したい」という思いから。制作会社と相談するうち、プロジェクターで全面に映し出してその中に総長を置く、というアイデアが出てきた。総長もジャングルが舞台という設定を気に入り、イメージの参考にと分厚い動物図鑑を2冊手渡してくれたとか。

「そんな長い時間拘束するなんてあり得へんで」と超多忙な総長の担当秘書に言われながらもめげずに3時間の撮影時間を確保。総長は慣れない撮影にもかかわらず、すぐに要領をつかみ、撮影自体はどのシーンもほぼ一発撮りでサクサク進んだ。

一方、台詞のほうはそうスムーズにはいかなかった。総長と事前に何度もやり取りしていたが、現場でも「うーん、なんか違うんだよなあ」と、推敲で脚本は真っ赤になった。「総長が自らのことばで語るメッセージ動画なので、総長自身が納得できる「想い」をきちんと反映させることが重要だった」と語るのは広報課広報企画掛の播真純さん。「世の中が京都大学に持っているイメージに近い総長に、力強く大学の魅力を語ってもらいたい。そこに意味があるからです」

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広報課広報企画掛の播真純さん

 

ちなみに、京大への世間のイメージというと、独創的、個性的、(もっというと、もちろんいい意味で)変人、自由の学風、 (もっというと、もちろんいい意味で)カオス、アンチ東大、フィールドワーク……みたいな感じだろうか。大学広報の視点から見ても“もってこいの逸材”である山極総長は、就任時の2014年、「『おもろいこと』をどんどん仕掛ける大学へ」というメッセージを発信した。これは世間から見た京大イメージと合致しており、「この機を逃すな!」という想いが広報課の職員たちにめばえ、さまざまな新しいチャレンジにつながっていった。
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「おもろいこと」を発信する、攻めの広報へ

6年ほど前まで、京都大学の広報は、どちらかといえば、報道対応や学内広報誌「京大広報」の編集、ホームページの管理・更新作業などが主体だった。メールマガジンもあるにはあったが、イベントやニュースのリンク集に近いものだった。受け手の楽しさや親しみやすさを追求したり、大学が主体的に魅力発信をして反応やアクションにつなげたり・・・という視点はほとんどなかったという。

こうしたスタイルを変革し、主体的な広報の大きな一歩となったのが、2012年11月、メールマガジンにコラム「京大の実は…」を掲載し始めたことだったという。「京大の実は…」は、京大に数多く存在する宝物=魅力を発掘して発信しようという企画で、施設や歴史、面白い先生など、知られざる京大の魅力を、広報担当者が取材、撮影、記事執筆、WEB制作までを一貫して手がけるスタイルでスタートした。

以来、「京大の広報がおもしろくなってきた!」と徐々に学内外からの反応が変化し、口コミで広がっていった。大学を取り巻く環境が、広報を強化すべきだという風潮に変わっていったことも後押しとなった。そんな折に山極総長が就任し、広報戦略に大きなうねりがやってきたのだ。

広報改革の第1弾は、特設サイト「総長、本音を語る」だった。総長インタビューや講演などの動画、京都大学の取り組み紹介などを通じて、リーダーである総長について重層的に理解できるようになっている。今回の「知のジャングル」動画もそこに掲載されている。

特設サイト「総長、本音を語る」

特設サイト「総長、本音を語る」

 

続く第2弾は、特設サイト「探検!京都大学」 PC版だ。京大が伝統的に強みとするフィールドワークの手法を使って、惑星京大をフィールドに探検してみようというコンセプトだ。楽しいサイトなので、ぜひ訪れてみてほしい。

特設サイト「探検!京都大学」

特設サイト「探検!京都大学」

 

なお、サイト内にある「探検!京都大学とは」というページに、こんな一文が載っていた。

「おもろい」とは、関西地方で使われる方言。一般的に使われる「面白い」とか「ためになる」などという言葉とは若干ニュアンスが異なり、判断以前、どこか腹にこたえるものがあった、何か未知のインパクトがあったことを意味し、それは知的判断としてよりは、人間全体としての反応の方に重点をおいた言葉である。(『こころの声を聴く』河合隼雄著)

京都大学で教鞭をとり、文化庁長官を務めた心理学者・故 河合隼雄氏の著作からとった言葉だそうだ。山極総長の言う「おもろいこと」とはそういうことなのか、そのような「おもろいこと」を発信するのが京大の広報戦略なのかと、非常に納得した。と同時に、それを広報するというウルトラ級の難易度を改めて感じた。

さらに、2016年5月には、モバイル版ゲーム型サイト「探検!京都大学」、通称「めんどくさいサイト」が始動。このサイトの特徴は、究極のめんどくささ、理不尽さにつきる。ゲームでは、何回も引き戻されたり、無理やり回り道をさせられたりと、決して簡単にはゴールできない。学業や研究の世界は、スピードや合理性だけを追求するのではなく、回り道をしてさまざまな経験をしながら多様な発想や思想と出会い、その先に新たなひらめきや発見があるもの。そんな、すぐに答えが見つからない面倒くささを楽しいと思える体験を提供することで、京大の「回り道の精神」を伝えることを目的としたサイトなのだという。(「めんどくさいサイト」の詳細はこちらから

モバイル版ゲーム型サイト「探検!京都大学」

モバイル版ゲーム型サイト「探検!京都大学」


……ということで後編は、この「おもろいこと」発信とリンクする、残り2方向の「学生」「教員」動画や「一言では決して言い尽くせない『京大らしさ』って何?」について迫ってみる。いやはや、京大は広報もかなり変人(もちろんいい意味で)的である。

濃厚で多彩な「京大らしさ」に迫るスペシャル動画、の裏側に迫る! → 後編はこちら

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