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大学発広報誌レビュー第7回 九州大学「九大広報」

2016年1月20日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

デジタル対応で幅広いニーズに応える広報誌。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第7回目となる今回は、九州大学の「九大広報」を取り上げます。

「九大広報」は九州を代表する最高学府である九州大学が発行する広報誌で、平成10年に創刊して以来、隔月刊で発行を重ね、最新号(平成28年1月刊)では101号を数えるまでに歴史を積み重ねています。

最新号101号

最新号101号



コンテンツはというと、卒業生にクローズアップしたインタビュー記事や、経済界の要人を交えた座談会など、比較的大学の広報誌によく見る内容。とはいえ、そこは九州国立大学の雄。招聘するゲストは第ですが、「九大広報」のもっとも特徴的な点は、「デジタル対応」なんです。

「九大広報」と検索すると真っ先に挙がる九州大学のオフィシャルサイト。そこには、最新号のコンテンツ紹介だけでなく、実際の誌面をWeb上でストレスなく読めるよう、「Flash版」「HTML5版」、そしてスマートフォンアプリである「Actibook」に対応した「アプリ版」の3種が用意されています。

オフィシャルサイト

オフィシャルサイト

FLASH版

FLASH版

HTML5版

HTML5版



定期的にブラウザのアップデートを行っている方であれば、おそらくPCへの対応はHTML5版のみで問題ないとは思いますが、FLASH版も提供しているのは、あまり頻繁にブラウザのアップデートを行わないご年配への配慮なのかもしれません。

表示に関してはHTML5版もFLASH版も、拡大縮小やページ送りにもスムーズに反応し、どちらもまったくストレスなく読み進められます。アプリ版もActibookという既存のプラットフォームを利用することで、安定感のある動作を確保しています。

本来大学広報誌とは、さまざまなステークホルダーに対して大学の活動や業績をよりよく知らしめるためのもの。紙媒体のみであれば、住所を把握できていれば直接送付することもできますが、そうでなければ資料請求されるくらいしか読んでもらう機会を獲得することはできません。ですが、大学業界に限らず、あらゆるサービスにおいて「資料請求」というアクションを起こさせるのはハードルが高いものです。その点デジタル形式でネットに内容がアップされていれば、気軽に情報に触れることができます。それだけ、広報誌が本来担っている役割をよりよく果たすことができるわけです。

広報誌の制作というのは、地味な作業ながら膨大な時間と労力がかかるもの。かけた「コスト」に対する「効果」を最大限に高めるために、広報誌のデジタル対応は今後もさまざまな大学で取り組まれることでしょう。

 

大学発広報誌レビュー第6回 桃山学院大学「アンデレクロス」

2015年12月18日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第6回目となる今回は、桃山学院大学の「アンデレクロス」を取り上げます。

「旬」なテーマを専門分野から読み解く。

桃山学院大学は大阪府和泉市にメインキャンパスを構え、国際教養学部、社会学部、法学部、経済学部、経営学部を擁する文系の私立大学。そのルーツは、明治維新の頃に来日した英国人宣教師が開設した学校に遡ることができます。現在にも通じる「英語教育・国際交流に力を入れている」という大学のイメージも、このルーツに端を発するものなのでしょう。

その桃山学院大学が発行する広報誌「アンデレクロス(St. Andrew’s Cross)」。名称の由来は、イエス・キリストの最初の弟子であり、イエスの教えを守り通して殉教した聖アンデレが磔刑にあったという×字型の十字架「聖アンデレ十字」から。聖アンデレの名は、桃山学院大学の英語名称「St. Andrew’s University」にも含まれています。

「アンデレクロス」の特徴とも言えるのが、毎号ひとつのテーマを設定して学部の教員たちが自身の専門分野に沿って持論を展開する「MOMOYAMA 多面考察」という特集企画です。この「MOMOYAMA 多面考察」がおもしろいのは、そのテーマ設定。最新号であるNo.161では「投票するということ」。No.160では「SNSについて考えよう!」。No.159では「地方の活性化について考えよう!」といったように、社会的に「旬」なテーマを見つけ出すのが非常にうまい。

No.161特集「投票するということ」

No.161特集「投票するということ」


単に教員が専門知識を披露するだけでは、一般の方々にとっては「とっつきにくい」内容になることは避けられません。そこで「SNS」や「投票」をはじめ、誰もが関心のある「旬」なテーマを掲げ、各教員がそれぞれの専門分野という「視点」からテーマを解説することで、「そんなものの見方があったのか!」という新鮮な驚きを読者に提供することができます。もちろん、結果としてそうした多面的な学部・学科、教員を擁する桃山学院のプレゼンスを上げることに繋がっていることは言うまでもありません。

国際教養学部 英語・国際文化学科 南出 和余准教授

国際教養学部 英語・国際文化学科 南出 和余准教授


広報誌とは本来、広く一般社会に対して大学の活動や実績を紹介するためのツールです。ですが、「アンデレクロス」の「MOMOYAMA 多面考察」は、桃山学院大学に学ぶ学生にとっても自身の通う大学にどのような教員がいるのかを知る、良い機会となるのではないでしょうか。こうしたインナーコミュニケーションも、これからの広報誌に求められる重要な機能になってくるのかもしれません。
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大学発広報誌レビュー第5回 京都造形芸術大学「瓜生通信」

2015年10月23日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

学生編集部が手がける、
「もはや雑誌」の広報誌。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第5回目となる今回は、この企画では初めての芸術大学、京都造形芸術大学の「瓜生通信」を取り上げます。

京都造形芸術大学は、通学・通信をあわせて約10000名もの学生数を誇る、全国でも最大規模の芸術大学です。メインキャンパスである瓜生山キャンパスは、京都市左京区北白川に位置しており、前回ご紹介した京都大学から自転車で15分程度の距離。現在の学長は、同じく京都大学で第24代総長を務めた地震学者の尾池和夫氏。かの有名な「総長カレー」の生みの親でもあり、氷室俳句会の副主宰も務める多彩な科学者です。

瓜生通信がまず目を引くのは、なんといってもその面構え。表紙部分が半分に断裁されており、1ページ目と組み合わせて表紙を構成するという、一風変わった表現が取り入れられています。キャンパス風景を表紙に採用する大学が多いなか、大胆にも教員の顔をドカンと正面から。教育の本丸は「施設・設備」ではなく「人」なのだという想いの表れでしょうか。また、ニスや箔押しなど、毎号ちがった特殊加工が施されており、ここらも芸術大学の面目躍如といったところ。ロゴは印象的ながらも読めるか読めないか、ギリギリのラインでデザインされており、その「攻め」の姿勢は、2017年で創立40年という歴史からは想像のつかない若々しさです。

表紙部分が半分に断裁されている

表紙部分が半分に断裁されている

開けるとこのような感じ

開けるとこのような感じ

特集は毎号全10ページで一人の教員の活動にスポットライトを当てています。過去6号の特集を振り返ると、59号は「私立探偵 濱マイク」シリーズの映画監督 林海象氏の「林海象と彌勒 MIROKU」。60号はD&DEPARTMENT創設者 ナガオカケンメイ氏の「ナガオカケンメイ 『つくらない』から、学ぶ」。61号は建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を受賞した建築家 坂茂氏の「国境なき建築家 坂茂」。62号は近年舞台芸術に力を入れる現代美術家 やなぎみわ氏の「やなぎみわの翼。」。63号は日本版「プレイボーイ」の初代アートディレクターを手掛けるなど60年代からポップアートの最前線に君臨し続けるアーティスト 田名網敬一氏の「乱反射する田名網敬一」。64号は日本人初の宇宙飛行士として初めて宇宙からの報道を行ったジャーナリスト 秋山豊寛氏の「行動するジャーナリスト 秋山豊寛」。65号はナイキやMicrosoftといった企業のCMを幅広く手がける異色のクリエイティブ集団PARTYを率いるクリエイティブディレクター 伊藤直樹氏の「伊藤直樹の未来地図」。このラインナップを見るだけでも、生半可なカルチャー誌よりもよほど豪華な内容であると言えるでしょう。むしろこの全員が京都造形芸術大学の教員だという点に空恐ろしさすら覚えます。

表紙から中面まで、フォーマットに沿いながらも挑戦的なデザインが貫かれています。写真のクオリティも非常に高く、色味の調整も実に丁寧。入念な色校のチェックが行われたことが伺えます。一方これほどエッジの効いたデザインにも関わらず、編集面は極めて骨太。ロングインタビューや対談はもちろん、写真のキャプションひとつにまで、正確な事実を積み上げ読みやすいテキストを心がけていることが見て取れます。芸大だからと情緒的でいわゆるアーティスティックな文章に甘んじない点も好感が持てます。「BRUTUS」あたりの雑誌と印象的には近いかも。

今号の特集記事

今号の特集記事「伊藤直樹の未来地図」


なにより驚きなのが、これらすべての編集制作・デザイン・撮影を、学生たちによる編集部で担当しているということ。確かに芸大ならデザイン・撮影・編集と、それぞれ専門に学ぶ学生が集っているわけですから、こうした学生による制作も可能なのでしょうね。各ページには担当した学生の名前がクレジットされており、就職活動の際には「形に残る実績」として大いに活用できることでしょう。また、62号からはAmazonを通して販売もされているよう。ここまで来ると、広報誌というよりもはや雑誌に近いのかもしれません。

編集制作・デザイン・撮影は学生たち

編集制作・デザイン・撮影は学生たち

広報誌とは、その大学の活動や考え方を広く社会に知らしめるためのツール。その広報誌を学生たちが高いクオリティで手がけることは、こと芸術大学においてはその教育が高いレベルで行われていることの証明にほかなりません。下手なものをつくってしまえば「なんだ、あそこの大学はこの程度か」と足元を見られる諸刃の剣ではありますが、ここまで質の高い誌面を生み出せるなら、大学の実力を世の中にアピールできる充分な「ネタ」と言えるでしょう。

大学発広報誌レビュー第4回 京都大学「紅萌」

2015年10月5日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

「自由な学風」が育てる「オンリーワンの精神」

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。前回は国内最高峰の国立大学、東京大学の発行する「淡青」をご紹介しました。第4回目となる今回は、東京大学と双璧を成す西の雄、「京都大学」の広報誌「紅萌(くれないもゆる)」を取り上げます。

京都大学の特徴はその「自由な学風」であると言われています。学びの面では学部を超えての履修や、専門以外の科目も幅広く学べる特徴的な学習システムを備え、学生生活の面では朝比奈隆を輩出した京都大学交響楽団をはじめとするさまざまなサークル活動が盛んです。また、現在でも学生運動の機運が息づく稀有な大学であるということからも、京都大学が育む「自由」が見てとれるのではないでしょうか。

今回ご紹介する「紅萌」にも、その自由の気風は色濃く現れています。最新号である第27号(2015年3月発行)の巻頭エッセイを執筆しているのは、卒業生であるメイクアップアーティストの内匠淳さん。在学中にはホストクラブでアルバイトをし、卒業後、司会業などを経てメイクアップの道へ進んだというユニークな経歴を持っています。文才も豊かで読みごたえのあるエッセイですが、他大学ではなかなかない人選だと思います。

巻頭エッセイを担当された内匠淳さん

巻頭エッセイを担当された内匠淳さん

続いてののタイトルは「君、青白きエリートをめざすこと勿れ!!」。実に京都大学らしいタイトル。第26代総長の山極壽一氏をはじめ、京都大学の教員や学生、5名が京都大学のありかたについて意見を交わし、思い出を語っています。
異口同音に語られるのは、やはり京都大学の「らしさ」は「オンリーワンの精神」にあるということ。中でも印象に残った山極総長の言葉を以下に引用したいと思います。

「真のエリートとはどういう存在か。驕らない、高ぶらない人です。みずからの蓄積にもとづいて、自己判断がきちんとできる人です。人の意見に左右されることなく、自分の経験と自由な発想にもとづいて、常識から少し身をおいて独自の判断をする。そういう力を身につけてこそ、世界の舞台にも立てるのです。そういう人を育てる京都大学を私はめざしたい。」

京都大学の学生を評して「変わった人が多い」と言われることがあります。よく言えば、「オリジナリティに溢れる学生が多い」といったところでしょうか。ともかく「右に倣え」ではない独自の視座を持つことを良しとする学生と大学だからこそ、そうした風評も生まれたのでしょう。

巻頭座談会「君、青白きエリートをめざすこと勿れ!!」

巻頭座談会「君、青白きエリートをめざすこと勿れ!!」

 京大 広報誌

キャンパス風景を切り取って紹介するという表紙周りのデザインや、すっきりと読みやすくレイアウトされた本文。テキストのトーン&マナーなど、パッケージングの面では東京大学の「淡青」と大きくはちがわない京都大学の「紅萌」ですが、よく読み込めば大学ごとのカルチャーが浮き彫りになってきます。それは、京都大学が「自由」で「オンリーワン」であることを尊び、守り育てて来たということ。

時代が変われば人も大学も変わっていくものですが、京都大学の守ってきた「自由な学風」には、できることならいつまでも変わらずにいてほしいと願わずにはいられません。

京都大学「紅萌」裏表紙

京都大学「紅萌」裏表紙

大学発広報誌レビュー第3回 東京大学「淡青」

2015年8月19日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

東京大学がいざなう、知のワンダーランド。

全国の大学が発行する広報誌を勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第3回目となる今回は、日本の最高学府の最高峰、「東京大学」の広報誌「淡青」を取り上げます。


現在までに30号の発行を重ねる「淡青」。その名称の由来は、東京大学と京都大学が1920年に瀬田川で初めて対抗レガッタを開催した際のチームカラーから(ちなみに京都大学のチームカラーは「濃青」)。
名称からはトラディショナルで保守的な雰囲気を漂わせる「淡青」ですが、内容も毎号の特集を中心にその名に恥じない骨太な誌面に仕上がっています。むやみに派手さでデコレーションするのではなく、きちんと企画を立て、丹念に取材し、丁寧にデザインへ落とし込む「正攻法」の制作スタイルは国立大学の雄らしい「横綱相撲」です。

 

とはいえ、エンターテイメント性に乏しいインターフェイスが「とっつきにくい」ことも事実。たとえば過去3号の特集タイトルだけを見ても、28号(2014年3月発行)は「イノベーションと東大。 ―[大学][好奇心][研究][組織][企業][教育][学生]7つの切り口から迫るUTokyo式[新結合]の実像集」。29号(2014年9月発行)は「濱田純一総長就任から5年半 東大生は『タフ』になったのか? ―19/27,865人の実例でみる現代学生事情―」。最新号である30号(2015年3月発行)は「濱田総長時代の東京大学 動き始めた知の森 ―28,000字インタビューと関係者談で綴る6年の軌跡―」。

 

……いかがですか? 読む気しないんじゃないですか? 最新号なんて28,000字インタビューですからね。某音楽雑誌で恒例となっている2万字インタビューの約1.5倍弱ですから、ロックスターはだしの長時間インタビューだったことがうかがえます。

30号の巻頭特集。コラム等も挟みつつ20数ページにわたり展開

30号の巻頭特集。コラム等も挟みつつ20数ページにわたり展開

 

とはいえ、このまるで茶室のにじり口のごとき間口の狭さを通り抜けた先に待っているのは知のワンダーランド。ときには今後の国立大学の在り方について真正面から論じるなど、非常に「タフ」な内容がちりばめられています。教育業界人ならずとも、社会の行く末に少なからず関心のある大人であれば充分に楽しめるはずです。

連載企画「サイエンスへの招待」。スマートな図を使っての解説も

連載企画「サイエンスへの招待」。スマートな図を使っての解説も

 

中でも教員の研究について紹介する連載企画である「Invitation to Science サイエンスへの招待」は、まさに東京大学の面目躍如。文化人類学や建築はもとより、「水」についての森羅万象を扱う「水文学」に、果ては「ももクロ」と、実に多彩な研究が紹介されていて、どれかひとつをとっても小説のネタにでもなりそうな興味深いものばかりです。

 

一見すると「とっつきにくい」入口の先に広がる東京大学の懐の深さ。「淡青」にはぜひこのスタイルを貫いてほしいものです。

大学発広報誌レビュー第2回 京都産業大学「サギタリウス」

2015年6月17日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

知ってますか?「大学のお金」の使いみち。

大学を運営する為の「お金」のうち、大部分を占めるが「国から与えられるお金(運営交付金・補助金)」と「学費」。国公立大学だと前者が、私立大学では後者の比率がそれぞれ大きくなります。

「国から与えられるお金」と聞くと、まるで自分のサイフは痛まないように聞こえてしまうかもしれませんが、これだって国に収めた税金から分配されているわけですから、間接的には運営交付金や補助金だって立派な「自分のお金」というわけです。

ところが、こうして「自分のお金」で運営されている大学にも関わらず、多くの学生や保護者の方々の中には、大学がどんな風にお金を使っているのか、よくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。その理由の多くは以下の3つではないかと思います。

①どの資料を見ればよいのかわからない
②企業会計と学校法人会計のちがいがわからない
③専門用語がわからない

ほとんどの大学はオフィシャルホームページに年度ごとの決算報告を掲載しているはずです。しかしながら、どこにアップされているかもわかりにくい上に、どういうシステムなのかもわからない数字と専門用語がびっしりと羅列されている……。考えるだけでも気が遠くなりそうです。

このように、わかりにくい「大学のお金」を親切に読み解いてくれるのが、京都産業大学が発行する広報誌「サギタリウス」。毎年7月号に大学のお金に関する特集を組んで、前年度のお金の使い方を詳しく紹介しています。

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毎年7月に「大学のお金」をテーマにするサギタリウス

例えば2013年度は「課外活動・奨学金支援」なら4.9億円、「施設関係・設備関係」なら41.6億円などなど、具体的な金額を提示しながら、そのお金がどのように使われたのかを説明。他にもコラムで「学校法人会計と企業会計のちがい」や「資金収支計算書」「消費収支計算書」「貸借対照表」といった大学の財務諸表の見方について解説するなど、京都産業大学の学生・保護者はもちろん、他大学の学生・保護者であっても読めば腹落ちる充実の内容に仕上がっています。

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イラスト・写真も交え、わかりやすく説明している

生々しいお金の話だからといって包み隠すのではなく、わかりやすく正直に解説する。もちろん1円の使いみちまで教えてくれるわけではありませんが、これなら毎年100万円以上の学費を大学に納入する学生・保護者も納めた学費の使途に納得がいくのではないでしょうか。

大学発広報誌レビュー第1回 帝京大学「Flair」

2015年5月18日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

楽しさと読みやすさのオブラート

大学に限らず、企業や自治体、各種団体など、さまざまな組織が「広報誌」を発行しています。その役割は、学生・保護者、市民や顧客といった、いわゆるステークホルダー(利害関係者)に、活動内容をよりよく理解してもらうこと。不祥事が起きれば誌面でも説明責任を果たさなくてはいけないし、めざましい成果があった際には、広報誌で大々的にアピールすることでロイヤルティ(忠誠心)を高めることもできます。つまり広報誌は、組織と社会をつなぐ大事なパイプ役というわけです。

 

今回からスタートする「大学発広報誌レビュー」は、大学が発行している「ひときわ目を引く」広報誌をご紹介するコーナー。第1回は、帝京大学の「Flair」を取り上げます。

 

みなさんも覚えがあると思いますが、官公庁をはじめ公共性の高い団体が発行する広報誌の多くは、おかたい文章におざなりな写真が添えられていて、とにかく読む気がしないもの。ターゲットを歳若い受験生に絞った大学案内であればやわらかい表現も多用されますが、幅広い読者層に向けた広報誌となると途端に読みやすさを失うのは、担当する部署の多くが、普段受験生と接している入試広報ではなく、法人本部であることも関係しているようです。

 

その点、帝京大学の「Flair」は、表紙をひと目みてもわかるとおり、まるで書店に並ぶ雑誌のようなデザインです。毎号特集が設けられており、最新号の特集は「BRUTUS」でも定期的に取り上げられる“写真”をテーマとした「写真がうまくなるルール」。ちなみに前号の特集は「時間管理を考える8つのヒント。」。「東洋経済」や「プレジデント」で扱われても違和感のない内容です。

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写真を大きく掲載したレイアウトが美しい。

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くみっきーが自撮りの方法をレクチャー。













最新号を読み進めていくと、なるほど読みやすい。ビジュアル要素を多用する一方、白場を大胆に取り入れ、テキスト要素を最低限に留めることで文字アレルギーを起こすこともない。インタビューは木村伊兵衛賞受賞のカメラマン浅田政志や、「with」のモデル「くみっきー」こと舟山久美子をはじめとする、プロの写真家やモデルたち。とにかく豪華です。

 

とはいえ、特集を読み終えるあたりで「これって帝京大学と関係ないのでは?」と頭にクエスチョンが浮かぶことも事実。そんなことを思いながらページをめくると、続いてクラブ紹介に教員紹介といった大学情報が登場。もちろんビジュアルやテキストのクオリティは特集と遜色のないものです。

 

とにかくおもしろい特集で間口を広く設けて楽しく読ませ、その延長線上に大学に関する情報を、特集と同じく「楽しく読みやすいオブラート」に包んで読者に届ける。幅広い読者層に読まれなくてはならない広報誌という媒体特性を踏まえた上での、技アリの工夫です。あらゆる広報誌がこうあるべきとは言えませんが、とかく読みづらいイメージがある広報誌のソリューションとして、「Flair」はひとつの答えと言えるのではないでしょうか。

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大学紹介部分も誌面が洗練されている。

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職員による店紹介。他ではあまり見られない企画だ。

 

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