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踊るラテンアメリカ教養講座! 在日ブラジル人のダンス「フォホー」を京都外国語大学で体験した

2024年7月25日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

好きなアーティストの曲にダンス音楽、今の季節なら夏祭りのお囃子など、音楽を聞くとついリズムに乗って踊りたくなるという方は多いのでは?

京都外国語大学では6月、アフロ性(黒人性)の影響を受けたラテンアメリカの音楽をテーマとしたラテンアメリカ教養講座『アフロ・ラテンミュージック on Friday Night』(主催:京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター)が行われました。

講座は4回シリーズで、取材した日はブラジルの音楽とダンス「フォホー(Forró)」についての講義と希望者参加型のダンスレッスン。フォホーは日本のブラジル人コミュニティでも日常的に踊られていて、ブラジルの文化的なアイデンティティでもあるといいます。

 

ブラジルのダンスといえばサンバが有名ですが、フォホーとはどんなダンスなのでしょう。ダンスを見てみたい(できれば踊りたい)、また踊りと文化的アイデンティティとの関係についても知りたいと思い、会場に足を運びました。

講師は上智大学准教授のニウタ ジアス先生です。

ニウタ ジアス先生

 

ブラジル人にとって、フォホーはただのダンスではない

講師のニウタ先生はブラジル出身で、1997年に初来日。在日ブラジル人の子どもの教育を専門としています。この日は「ダンスを楽しみ、在日ブラジル人の日常生活を知ってもらいたい」と講座のねらいを話し、音楽の由来などについてのレクチャーから始まりました。

フォホーはブラジル北東部のダンス音楽で、先住民やアフリカ、ヨーロッパの音楽の影響を強く受けています。ザブンバとよばれる太鼓とトライアングル、アコーディオンの演奏に、愛や苦しみなど生活に根差したさまざまな思いをのせて歌われます。

 

やや年配の人が好む地方の音楽というイメージだったそうですが、1950年代に歌手で作曲家、アコーディオン奏者のルイス・ゴンサーガなどのヒット曲をきっかけにブラジル全体に人気が広がり、さらに90年代にもフォホーの人気グループが出てきて、若者の間でも広まったとのこと。

豊穣を祝うブラジルの祭り“Festa Junina”(6月の祭り)でもフォホーが踊られる(講座資料より)

 

ニウタ先生は長く日本に住むブラジル人の一員として、また研究者としても群馬県のブラジル人コミュニティに関わってきています。フォホーはこうしたコミュニティでも日常的に踊られていて、「多くのブラジル人がフォホーを通じて一つにつながることができる」とニウタ先生。「ブラジル人にとってフォホーはただのダンスではなく、ブラジル人のアイデンティティとして大切なもの」だといいます。

 

後半はいよいよダンスの実演です。希望者はフロアに出て、レッツ・ダンス!
いくつかのステップを教わり、まずは見よう見まねでステップを踏みます。

 

フォホーはペアで踊るダンス。友人どうし、そして初対面の人どうしで、踊りの輪ができます。

この笑顔! 南国の陽気なリズムで自然に体が動きだします

 

ダンスの実演は約40分間。シンプルなステップが複雑になるにつれ、あちこちで即興のオリジナルダンスが生まれ、笑い声が上がっていました。テンポはそれほど速くなく、ほどよく力の抜けた音楽。「リズムにのって楽しく踊れたらOK」という気軽な雰囲気は、日本の盆踊りのようでもあります。

 

ニウタ先生は「できる、できない、うまい下手は関係なし。うれしいとき、悲しいとき、元気を出すために踊る。それがフォホーです」。まさにその言葉どおりの陽気で気さくなダンスでした。

「教える」のではなく、交流したい

日本に住むブラジル人の子どもにとって、フォホーはどんな存在なのでしょう。講座の後、ニウタ先生に少しお話を伺いました。

 

「フォホーは、結婚式や誕生日パーティ、クリスマスなどで、子どもの頃から家族とともにコミュニティの中で踊るダンス。日本の学校に行っていると、周りの環境に合わせるために自分がブラジル人であることを隠したり、自国の文化を否定してしまったりすることがありますが、そんな子どもにとってフォホーはブラジル人としての自分をポジティブに受け入れる機会となります」

 

自国の文化を否定してしまうとは辛いことです。在日ブラジル人の子どもが通う学校はブラジル人学校や日本の公立学校、もしくはその両方(平日は日本の公立学校に通い、土曜日だけブラジル人学校に通うなど)ですが、日本語教育の機会が十分ではないケースがあり「言語の壁は大きい」とニウタ先生。言語の壁は、子どもが将来像を描きにくくなることにもつながります。

 

「教育の環境は近年かなり改善されていて、日本の大学に進学する子どもも増えている一方、学校に行かなくなる子どもや高校に進学できない子ども、日本とブラジルを行き来して日本語にも母語(ポルトガル語)にも自信をもてない子どももいます。

そういう子どもたちは『できない』のではなく、学ぶチャンスや『この人のようになりたい』と憧れるロールモデルが身近にない。必要なのは、将来の夢をもてるような環境です」

 

今回は一般の人を対象にダンスレッスンが行われました。そこに込めた思いについて、ニウタ先生は「ダンスで交流を深めると相手に親しみを感じ、もっと知りたいという気持ちになるでしょう。知識を教えるという形ではなく『交流』がしたいのです。それがお互いのすばらしさを知ることにつながるから」。

 

音楽やダンスはそれだけで楽しいものですが、自分らしさを確かめるよりどころであり、また隣人を知る絶好の機会にもなる。先生のお話を聞いて、この日フォホーを踊りながらあちこちで広がっていた笑顔を思い出して、そう感じました。

未知への扉をひらくエンターテイメント「マンガ」の魅力を再認識する記事まとめ

2024年7月18日 / まとめ, トピック

7月といえば七夕、土用の丑、海の日などがありますが、「漫画の日」というものがあるのをご存じでしょうか。風刺的な漫画を掲載し、漫画文化に大きな影響を与えたイギリスの週刊誌『パンチ』が1841年7月17日に創刊されたことにちなみます。

マンガの熱心な読者ではなくても、かつて夢中になって読んだ記憶をお持ちの方も多いのでは? 今回は身近なエンターテイメント、マンガの魅力を再認識する記事をふりかえってみました。

*ちなみに「マンガの日」は、ほかにも手塚治虫の誕生日(11月3日)などがあります

フェリス女学院大学の授業「コミック『ゴールデンカムイ』で学ぶ多文化共生」を聴講して、アイヌの食文化を学んできた

フェリス女学院大学での授業「コミック『ゴールデンカムイ』で学ぶ多文化共生」より「アイヌの食文化」をテーマとした講義レポートです。

『ゴールデンカムイ』(野田サトル作)は謎の金塊をめぐって北海道を舞台に繰り広げられる物語で、作中で登場するさまざまなアイヌ料理も見どころの一つ。アイヌ文化を丁寧に描いている点も高く評価されていて、講義レポートからも作品の奥深さが感じられます。

 

記事はこちら!

https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/ferris_goldenkamuy/

アフリカマンガの最前線! ブリコラージュな表現のスピリット。京都国際マンガミュージアム「アフリカマンガ展」レポート

「アフリカのマンガ」と聞いてピンとくる方はそれほど多くはないかもしれません。2023年に京都国際マンガミュージアムで行われた展示「アフリカマンガ展」では、アフリカ出身の作家がアフリカ人を主人公に描いた漫画や、日本のマンガのスタイルが取り入れられた作品などが紹介されました。

マンガを通してアフリカの暮らしを身近に感じられそうな点は『ゴールデンカムイ』におけるアイヌ文化と同じ。アフリカの「今」を知ることができそうです。

 

記事はこちら!

https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/kyotomm_africamanga/

圧倒的画力と創作エネルギーに溢れる空間! 東京造形大学「ヤマザキマリの世界」展

『テルマエ・ロマエ』をはじめとする漫画や絵画、著述家としても活躍するヤマザキマリさん。漫画や絵画、著述家の3つの側面からその作品の魅力に迫る「ヤマザキマリの世界」展の展示レポートです。

同展は東京造形大学の学生や卒業生らが協力して進めたプロジェクト。ヤマザキさんの創作に対するエネルギーには圧倒されますが、学生らとのコラボレーションも見ものです。

 

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https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/yamazakimari/

学習院大学特別講義・夏目房之介先生に学ぶ 「マンガ表現のしくみ」

自称「漫画コラムニスト」、夏目房之介先生による学習院大学での特別講義では、マンガに見られる特有の表現技法について丁寧に解説。車が止まる絵とともに「キキキキーー」という文字が大きく画面を横切るような表現は、マンガに親しんだ人には特に珍しいものではありませんが、外国人からは意外に注目されるのだそう。マンガ特有の表現を読み取る「マンガリテラシー」を、知らずしらずの間に身に付けていたことに気付かされます。

 

記事はこちら!

https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/natsumefusanosuke_manga_report/

 

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『ゴールデンカムイ』でアイヌ文化を身近に感じ、アフリカマンガでアフリカの日常を知り、『テルマエ・ロマエ』でローマのお風呂と歴史を知る。マンガにはいろいろな魅力がありますが、未知の世界への敷居をぐっと低くして、さまざまな世界へ招き入れてくれます。今回ふり返った記事からは、マンガのそんな力が特に大きく感じられました。

 

「オーディオアート」とはどのようなものか、東洋学園大学の公開講座でふれてみた

2024年7月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

「オーディオアート」と聞くと、みなさんはどのようなものをイメージするでしょうか。メロディやハーモニーのある音楽とは異なり、ちょっと難しそうな印象をお持ちの方もいるのでは。私もそんなイメージを持っていた一人ですが、東洋学園大学で公開講座「オーディオアートの世界~電子音楽、サウンドコラージュ、フィールドレコーディング~」が行われると知り、実際のところはどのようなものか、視聴しました。

講師は電子音響音楽を専門とする音楽家で、日本電子音楽協会理事の渡辺愛先生です。

 

講座スライドより

 

意外に映像的、オーディオアート

渡辺先生によると、今回のテーマであるオーディオアートとは「録音された音」と「電子音楽」という二つの大きな流れが合わさってできたものだそうです。まずはサンプルとして、先生の曲を聴かせてもらいました。タイトルは『Tropical Travelogue』(2017年)。

 

どこからともなく響くホワンホワンという浮遊音、外国語の話し声、街中でおじさんが叫んでいるような声。クルマの音、クラクション、鳥の鳴き声、金属音、ピィーーンという電子音……。さまざまな音によってつくられた作品ですが、目を閉じて聴いているとまるで夢幻的な映画を見ているように、情景が目の前に浮かんでは消えていきます。

 

この作品は先生がマレーシアのペナン島に滞在し、島のあちこちでレコーダーを回して録った音を素材としたもの。ホワンホワンという浮遊音はシンセサイザーの音で、ペナン島で収録したフィールドレコーディングの音とともに使われています。

 

渡辺先生によると、このように録音された音とシンセサイザーの音を組み合わせて作られた作品が「電子音響音楽」と呼ばれます。わかりやすい呼び方だと「オーディオアート」。一方、シンセサイザーの音だけで作られた作品は「電子音楽」と呼ぶそう。渡辺先生の作品はメロディやビート、ハーモニーのようなものをあまり感じさせない実験的なものでしたが、例えばYMOやPerfumeなどメロディやハーモニーなどの要素がはっきりした作品も、広い意味で「電子音楽」だそうです。

新しい技術ができると、変わったことを考え出す人が現れる

こうした音楽の源流のひとつは録音という技術です。音声を記録し再生できるようになったのは、約150年前にエジソンらが蓄音機を開発してからのこと。録音がルポタージュや娯楽の新しい担い手となっていき、やがて音楽の鑑賞に堪えうる録音ができるようになると「録音技術を用いたアート、新しいクリエイションができないかと人々は考え出すようになったのです」と渡辺先生は言います。

 

ひとつの例として、ウォルター・ルートマンという人の音楽作品『Weekend』(1930年)が流れました。エンジン音にピアノやフルート、人の話し声、乗り物の音などが現れては消え、また別の音が現れ……。冒頭で聴いた先生の作品の原型に近いものを感じます。

音楽と呼ぶにはあまり音楽らしくない印象ですが、こうした作品は写真になぞらえて考えるとわかりやすいそうです。「写真という技術ができると、例えば写真を切り抜いて、畑の中にエッフェル塔が突っ込んでいるコラージュを作るなど、変わったことを考え出す人が必ず現れる。この録音技術についても、近いことがと言えると思います」

 

このジャンルの重要な作品が、フランスの国営ラジオ局に勤めていた音響技師、ピエール・シェフェールが生み出した『鍋のエチュード』(1948年)。こちらも講座で聴くことができました。

鍋を木でたたくような音や機械のうなり声のようなもの、人が何かを唱えているような音声が混ざりあい、やや不穏な雰囲気を醸し出しています。先に紹介してもらった『Weekend』と似ている気もしますが、なぜ “重要な作品”とされているのでしょうか。

 

「音の三大要素には高さ、大きさ、音色がありますが、その中でいちばんパラメータとして複雑なのが音色です。音色を音色たらしめる要因はいろいろありますが、その一つが、音が時間の経過とともにどのように変化するかを表したエンベロープというもの。

例えばピアノの音の形は立ち上がりがとても強く、だんだん減衰して消えていく。時間によるこうした変化が、ピアノがピアノらしい音色に聞こえる一つの要因です。変化として捉えることが大切なので、このうちコンマ一秒だけを切り取って何の音かと聞かれても、ピアノの音とは判断できません」

 

ピエールはラジオ局の一角でいろいろな実験を行った結果、ピアノの音が減衰していく終わりの方を切り取ってループさせるとフルートのような音がする、というように、音の切り取り方によってまったく違った音に生まれ変わることを発見。音が何からどう出ているかという文脈から切り離して、音を加工して作られたのが『鍋のエチュード』なのだそうです。

 

アメリカでラジオ放送が始まったのは1920年ですが、その草創期からこうした実験的な音響作品が放送されていて、ドイツ語でヘールシュピール(聴く遊び)と呼ばれていたとのこと。

「一般的には、パリーンと音がしたら、『あっ、何か割れた』などと思うんじゃないでしょうか。一方、シュピールのおすすめした聞き方は、このように音の原因や意味にできるだけとらわれず、物理現象としての音のなりたちを聴こうというもの。パリーンという音は、たとえば “高音で残響の多い単発音”となります」

 

まるで計測機器のような聴き方に思えますが、いろいろな音を切ったり貼ったりして遊びたくなる気持ちはわかる気がします。このように音を加工して再編成された音響作品は「ミュジック・コンクレート」とよばれ、またたくまに世界に広がっていったそうです。

シェフェールが提唱したのは音をもとの文脈から切り離し、完全に対象(オブジェ)として聞こうとする態度ですが、これに対し、ある時は音を物理的なとしてフォーカスし、ある時はもとの音のイメージを包み込む、両方の聞き方があっていいという音楽をめざしたのがリュック・フェラーリという人。このタイプの音楽もミュジック・コンクレートの一ジャンルとなっているそうです。

電子音響音楽に求められる“基礎力”とは?

音の素材の内容にとらわれないというならピアノの音でも、道路の音でもなんでもいい。なんでもいいなら自然や社会から発せられた音でなくてもいい。つまり「電子音でもいい」というわけで、電子音響音楽のもう一つの源流、電子音楽についても紹介がありました。

 

ラジオの開局と同じ年に発明された電子楽器「テルミン」、シンセサイザーだけでバッハの曲を再現したウェンディ・カルロス。そして講座の終盤には、電子音響音楽をコンサートで上演するための立体音響装置「アクースモニウム」の紹介がありました。

講座スライドより、アクースモニウム(立体音響装置)を操作する渡辺先生。コンサート会場に複数のスピーカーを配置し、それぞれの音量を調整する

講座スライドより。野外でのアクースモニウムの例

 

講座ではさまざまな作品やアーティストの紹介がありましたが、講座後に検索して聴いたドイツの作曲家シュトックハウゼンによる『少年の歌』など、一度耳にしたら忘れられない印象でした。

 

講座での質疑応答でも興味深いやりとりが行われました。その一つが、このジャンルでの「基礎力」とはどういうものか?というもの。通常の楽器演奏においては基礎的な演奏技術が必要とされますが、今回紹介されたような電子音響音楽(オーディオアート)で求められるベースとはどういうもので、何が評価の対象になるのでしょうか。

 

渡辺先生は「音楽は時間芸術なので、ある時間の中に音の様相をどう置くか、時間をどう操作するのかが評価の対象となります。たとえばある素材が作品の中で発展し、そこに突然裏切りの表現が生まれるとき、そのタイミングが絶妙というように、時間の中での音楽的なストーリーの作り方が重要。芸術的な価値のある作品を作るためにはいろんな人の曲を聞いたり分析したり、コンセプトを考えたりしてその感覚を鍛えることが基礎力となります」。

また、最終的には録音によって作品が完成するため、狙った音をうまく録る技術、音のクオリティはもちろん重視されるとのことです。

 

講座の前半で聴かせてもらった『Weekend』という作品は「映像のない耳のための映画」として映画館でも “上映”されたそうですが、今回の講座では、耳のための映画を聴く新しいチャンネルを自分の中に作ったような感覚があります。

近年はパソコンを使って手軽に音楽を作ることができるようになり、小学生にこうしたソフトを渡すと、自由に音をコラージュしておもしろい音楽を作るのだとか。そんな話を聞きながら、自分もちょっと体験してみたい気がした講座でした。

夏休みに無料で遊んで学べる。全国の大学の子ども向け科学教室をチェック!

2024年7月4日 / まとめ, トピック

子どもたちにとって待ちに待った夏休みが近づいてきました。長い休み、ふだんはできない体験ができる絶好の機会。全国の大学や研究機関でも、小・中・高校生に向けたイベントの予定がめじろ押しです。今回は無料で参加できる科学教室の中から、ほとゼロ編集部がピックアップしてご紹介します。

*いずれのプログラムも定員があります。詳しくは各プログラムのホームページでご確認ください。

北海道科学大学

なぞの生命体ふよふよ~水の中をぐるぐる動くゲルをつくろう!~

まずは北海道エリアから一つご紹介。プリンやコンタクトレンズなど身近に使われる「ゲル」がテーマです。指でつまめる水や人工イクラを作って観察し、ゲルの仕組みをひも解こうというプログラム。「ふよふよ」「ぐるぐる」、手で触れ、目で見て楽しめそうです。

 

|開催日:8月9日(金)

|対象:小学校5・6年生

|申込:7月26日(金)まで

 
●詳細はこちら!

https://www.hus.ac.jp/news/detail/d1d50cf43b84c05e4a622b2764a895e768e2238f-18134/

 

秋田県立大学

第17回夏休み科学教室「創造学習」/「おうちで創造学習」

エレキギターの作成、手書き数字を読み取るAIの作成など、15の対面講座と2つのオンライン講座を取り揃えるのは秋田県立大学。ミニ畳作りやオリジナル灯篭作成など、和のものづくり体験も。ものづくりを通して、最先端の科学や職人の技を体験できるのが魅力的。

 

|開催日:7月27日(土)~7月29日(月)

|対象:秋田県内の小中学生

|申込:7月12日(金)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.akita-pu.ac.jp/event/event2024/8424

 

北里大学

マイナス100度の世界 ~元素でつながる分子の世界~

 

マイナス100度の世界を知るプログラム。有機分子の模型を作ったり、フラスコの中の色の変化を観察したり。マイナス100度ではどんな自然現象が起こるのでしょう? 非日常の世界をかいま見れそうです。

 

|開催日: 8月6日(火)、7日(水)、8日(木)

|対象:小学校5・6年生、中学生、高校生

|申込:7月31日(水)まで(先着順)

 

●詳細はこちら!

https://www.kitasato-u.ac.jp/sci/news_event/index.php?c=topics_view&pk=1716860258

 

 東京大学

メタバース工学部ジュニア講座「渋滞学入門 ~クルマの渋滞編~」

夏の遠出といえば車の渋滞がつきもの。この講座では高速道路における渋滞のメカニズム、クルマの交通流の特徴を示す基本図を学び、数学的手法を使って現象の本質を捉えたモデル化を体験します。しくみが分かれば、渋滞もこわくない(かもしれない)!

 

|開催日:7月29日(月)、30日(火)*オンライン(Zoom)での開催

|対象:中学生、高校生(それ以外の方も受講可)

|申込:7月22日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/z0104_01453.html

 

福井大学

2024年度福井大学公開講座 今日からきみも和算博士!-江戸の算数・数学に挑戦!-

「和算(わさん)」は、江戸時代の算数・数学のこと。「鶴亀算」など難しかった記憶がありますが、この講座は算数が苦手でも大丈夫とのこと。日本で独自に発展したという算術の世界はどのようなものでしょう?

 

|開催日:7月27日(土)、28日(日)

|対象:小学5年生から高校生

|申込:7月5日(金)9:00から7月21日(日)まで

 

●詳細はこちら!

https://chiiki.ad.u-fukui.ac.jp/wp-content/uploads/2024/05/24072728_fukuiuniv_oc_13-1-2.pdf

 

 大阪大学

第11回 夏休みおもしろ理科実験 「つかめる水」と「光るスーパーボール」を作ろう!

「つかめる水」と「光るスーパーボール」を作り、化学反応によるいろいろな変化を体験できるプログラム。理科の楽しさを感じられそうです。

 

|開催日:8月2日(金)

|対象:小学3~6年生

|申込:7月22日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.osaka-u.ac.jp/ja/event/2024/08/10820

 

広島国際大学

体の中で活躍する見えない"酵素"の働きを光らせて確認しよう

食べ物を消化したり、吸収された栄養素からエネルギーを作り出したり。わたしたちの体内でさまざまな化学反応を促進する「酵素」は、生きていくために欠かせない存在です。そんな酵素を光らせて、仕事ぶりを確かめようというプログラム。目に見えない働き者を見れるかな?

 

|開催日:8月6日(火)、8月27日(火)

|対象:小学5・6年⽣

|申込:7月29日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.hirokoku-u.ac.jp/event/j-hirameki.html

 

福岡女子大学

ナメクジは賢い!~ナメクジの学習行動と脳のしくみ~

「気持ち悪い」と毛嫌いされがちなナメクジ。でも、一回学習しただけでものごとをしっかりと記憶するなど、その脳はとてつもない能力を秘めているのだとか。ナメクジの学習行動実験と脳の解剖を体験できるプログラムで、ナメクジのすごさを実感できそうです。

 

|開催日:7月22日(月)、29日(月)

|対象:小学5・6年⽣

|申込: 7月11日(木)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_hirameki_24/24ht0181.pdf

 

理化学研究所

理研DAY:研究者と話そう!「お家でサイエンス!~ろ紙にお花を咲かせよう~」

「大学の子ども向け講座、楽しそうだけど近くに大学がない……」。そんな方には、オンラインの科学教室もあります。水性ペンとろ紙(またはコーヒーフィルター)を使って、水性ペンのインクを分ける実験を行うプログラム。真っ黒なインクのはずが、実は……? 身近なものの意外な素顔を知ることができそうです。

 

|開催日:8月6日(火)

|対象:小学生(Zoom参加)

|申込:7月24日(水)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.riken.jp/pr/events/events/20240806_1/index.html

 

科学講演会2024~研究者の“わくわく”が未来を紡ぐ~ 「AIでひらく未来への扉」

理化学研究所が年に一度開催している科学講演会。2024年度のテーマは「AIでひらく未来への扉」で、AIが子どもの脳の発達に与える影響などについて日本化学未来館で講演が行われます(ライブ配信あり)。15分の質問タイムがあり、研究者に直接質問することも可能。

 

|開催日:8月24日(土)

|対象:中学生以上

|申込:7月24日(水)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.riken.jp/pr/events/events/20240824/index.html

 

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この夏、全国の大学や研究機関で行われる小学生から高校生向けのプログラムを中心にご紹介しました。気になるイベントは見つかったでしょうか?(ちなみに筆者は「謎の生命体ふよふよ」と「渋滞学」が気になりました)

 

これ以外にも、さまざまな大学で子ども向けイベントが予定されています。ぜひお近くの大学や、オンラインのイベントをチェックしてみてくださいね。

カント生誕300周年! わたしたちから湧き出る素朴な問いと「哲学」について考えたくなる記事まとめ

2024年6月27日 / まとめ, トピック

今年(2024年)はドイツの哲学者、カントの生誕300周年です。
哲学と聞くと、学生時代に見聞きした難しげな専門用語と晦渋な理論を思い出してしまうのですが、考えてみると、幼いころ「人は死んだらどうなるのか」とか、飼っていた金魚を見て「金魚はなんのために生きているのか」など、素朴な疑問を感じていました。そしてこの問いこそが、哲学の原点なのではないでしょうか(多分)。

 

今回は、そんな素朴な疑問と哲学との関係について、ほとんど0円大学で紹介された哲学関連の記事を通して向き合ってみたいと思います。

疑問や違和感を持つことが世界を動かす。哲学がもたらす社会的影響力を大阪経済大学の稲岡大志先生に聞いてみた。

アニメ・スポーツなど身近な話題を通して哲学の門戸を広げる活動を行っている稲岡先生へのインタビュー記事です。「哲学はもともと物理学や心理学、医学なども含めたあらゆる学問の基礎で、そこから枝分かれして残ったのが現在まで続く哲学」と稲岡先生。日常の観察から仮説を立てて日食のタイミングを予測するという、現代では天文学で扱われる内容もかつては自然哲学と呼ばれていたそうです。
本記事ではヨーロッパにおける哲学の歴史や哲学の存在意義などを解説。「哲学はよりスムーズに一般層をナビゲートしていくべき」と今後の哲学のあり方を語ります。

 

●記事はこちら!→ 疑問や違和感を持つことが世界を動かす。哲学がもたらす社会的影響力を大阪経済大学の稲岡大志先生に聞いてみた。

 

奥深きインド哲学への入り口を、名古屋大学・岩崎陽一先生に聞いた。

西洋哲学とはまったく異なる文脈で生まれ、3000年の歴史を持つインド哲学。哲学(philosophy)という言葉がインドに入ったのは植民地時代のことで、「インドの思想家たちからすると自分たちのやっていることが哲学であるという自覚もなかったと思います」という岩崎先生が、インド哲学の入り口を案内します。
インド哲学のある理論について「宗教かつ哲学であり、同時に、単なる宗教でも単なる哲学でもありません」という言葉が印象的。現在の社会が抱える不安定な状況はインド哲学では “やがて滅びゆく世界” の中で必然として捉えられ、その中で私たちはどのように生きていったらよいかという知恵がある、と語ります。

 

●記事はこちら!→宇宙の広がりから生き方を学ぶ。奥深きインド哲学への入り口を、名古屋大学・岩崎陽一先生に聞いた。

 

哲学×映画『メッセージ』:私たちは未来を予期して生きている? 傑作SFを哲学で読み解く

日本では2017年に公開された映画『メッセージ』(原題:Arrival)。異星人と人類との邂逅を描き、哲学的な問いが満載というこの映画について、ヨーロッパの現代哲学・思想を専門とする先生が語っています。「他者論、言語論、時間論など、さまざまに思考を誘発する点でも素晴らしい」と作品を絶賛する先生が、映画のさまざまなシーンから哲学的テーマを読み取り、掘り下げて解説します。

この記事を読むと映画を見たくなりますが、記事の性質上、ネタバレを含むのが悩ましいところ。できればまずは映画を鑑賞されたうえで、ぜひ記事もご覧になってみてください。

 

●記事はこちら!→哲学×映画『メッセージ』:私たちは未来を予期して生きている? 傑作SFを哲学で読み解く


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カント生誕300周年にちなみ、哲学をテーマとしたインタビュー記事をご紹介しました。
人は死んだらどうなるのか、大人になるにつれ身もフタもない答え(または、「わからない」)でやり過ごしてしまっている気がしますが、本当は生きていくうえでとても大切な意味をもつ問いかもしれません。
こうしたことを一人で考えていると煮詰まりますので、そんなとき、学問が、哲学が、人との対話が、また記事で紹介されているような作品が、助けになってくれるのではないでしょうか。

音が決められていない「楽譜」? 京都市立芸術大学の研究会で触れる多彩な楽譜の世界

2024年5月14日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

好きな曲のお気に入りのフレーズを思わず口ずさんでしまうこと、ありませんか。知らず知らずのうちにメロディを記憶してしまっているからですが、曲の最初から最後まで再現となるとちょっとハードルが上がります。そこで頼りになるのが楽譜。楽譜というと五線譜のようなものを思い浮かべますが、それ以外にもさまざまなタイプの楽譜があり、なかには“身体性”を記録する楽譜もあるといいます。

 

楽譜を記す方法についての研究会「タブラチュアを考える~動作が導く音の世界」が京都市立芸術大学芸術資源研究センターのプロジェクト「音と身体の記譜研究」の一環として行われ、会場の京都市立芸術大学に足を運んでみました。

「タブラチュア」とは聞きなれない言葉ですが、楽譜を記す記譜法のひとつで、弦楽器であれば弦をおさえる位置、管楽器なら管の孔、鍵盤楽器なら鍵の番号などを数字や文字、記号で表して、曲の演奏法を示したもの。オルガンや三味線、リュート、ギター、ベース、ドラムなど多くの楽器で使われているそうです。

今回はポピュラー音楽、伝統邦楽、現代音楽、バロック音楽と、時代も地域もさまざまな音楽ジャンルを専門とする講師らが登壇し、それぞれの分野で使われているタブラチュア(タブ譜)を紹介。多彩な楽譜の世界を見せてもらいました。

ギター、三味線、オルガン、……多彩なタブラチュア譜

タブ譜には、例えば下の写真や動画にあるようなギターのタブ譜があります。紹介してくれたのはポピュラー音楽を専門とする岡田正樹先生(芸術資源研究センター共同研究員)。

岡田先生。演奏動画の下にタブ譜が表示されている。

 

弦をおさえる位置が数字で示されています

 

ギターを弾かない私はまったく知らなかったんですが、ギターの演奏には、五線譜ではなくこうしたタブ譜を使うことも多いのだとか。どの弦のどの位置を押さえればよいかが一目でわかり、五線譜よりも弾きやすいため「ひとりで好きな音楽の世界に没入するにも、バンド活動など音楽を通じて他のプレイヤーとつながるにも、タブ譜が支えになっている」と岡田先生。

 

日本の弦楽器ではどうでしょうか。邦楽家で、新作の創作で自ら楽譜を作ることも多いという重森三果先生より、三味線の江戸期以来の楽譜の変遷について実演を交えて紹介してもらいました。

重森先生

 

三味線で弦のおさえるべき位置は「勘所」とよばれ、下の譜面(重森先生の創作曲)では数字で記されています。

重森先生の創作曲『花ふぶき』(部分)。三味線を習い始めて半年くらいの学生のために書かれた練習曲。

 

ギターのタブ譜と似た記譜法ですね。数字で示された勘所は、江戸時代は「い、ろ、は、……」などと呼ばれていたとのこと。

 

三味線の伴奏で物語を語るのが浄瑠璃です。浄瑠璃の語りは仏教の儀式で唱えられる声明の流れにあり、浄瑠璃の節の古典的な楽譜は声明の楽譜に似ているそうです。

 

声明の楽譜(「博士」とよばれる)は下のサイトで見ることができます。

<参考>文化デジタルライブラリーより「博士」(独立行政法人日本芸術文化振興会)

https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc28/kiku/shoho/hakase.html

 

旋律の動きが線の長さや角度によって表されているのですが、仏教の経典を唱えるものであると思うとなにやら深遠な図形のようにも思えてきます。浄瑠璃の楽譜はこの中の「目安博士」という楽譜と似ていて、声明のものより線が短くゴマのように見えるため「ゴマ点」と呼ばれるのだそう。また、よく使われる節回しの名前を書いて演奏法を示す「文字譜」と呼ばれるものもあるそうです。

 

ところ変わってヨーロッパ。バロック期から19世紀の鍵盤音楽を専門とする三島郁先生(芸術資源研究センター共同研究員)からは、オルガン曲などの楽譜を紹介してもらいました。

ギターや三味線の譜面のように線の上に数字が並んだものもあれば、五線譜に似たもの(でもよく見ると、線が2、3本多い)もあり。世の中にはずいぶんいろいろな楽譜があるものだと思います。

三島先生。画面に映っているのは16世紀末のオルガン曲の楽譜(一部)。

音が指定されていない「楽譜」

「これは本当に楽譜なのか」と驚いてしまったのが、現代音楽の作曲家でギター奏者の橋爪皓佐先生(芸術資源研究センター非常勤研究員)から紹介された楽譜です。

橋爪先生はギター奏者として現代音楽の新作を演奏する中でいろいろな楽譜に出会ってきたそうで、紹介してもらった楽譜のひとつは紙に書かれた譜面ではなく、映像でした。画面に人の両手が映し出され、素早くふり下ろされたり、何かをひっかくような動作をしたり。その動きに合わせてギターの音や、板を叩くような音が響きます。

「体の動きだけが指定され、まったく音が指定されていない『楽譜』です」と橋爪先生。

橋爪先生

 

うーん、こんな楽譜があるのですか……。この曲には2つの演奏方法があり、一つは楽譜(映像)を観客に見せ、演奏者は別のモニター映像を見ながら動きをマネして演奏する方法。もう一つは、映像の動きを完全に"暗譜"して、演奏する手の動きを観客に見せる方法です。

橋爪先生が紹介した曲(『どうしてひっぱたいてくれずに、ひっかくわけ?』作曲:足立智美)の演奏風景。“楽譜”が投映されている。写真:京都市立芸術大学芸術資源研究センター

 

作曲者はもちろん、演奏する人にとっても予測のつかない音楽になりそうですが、弾く人は映像をもとに音の展開を事前にある程度決めて演奏するため、予測はつくとのこと。

 

橋爪先生はこの曲について「楽譜自体が創作のツールとなりうる事例」と説明。「動きの規定はあっても、それをギター上でどう展開するかはギタリストの自由に任されている。現代において作曲と演奏が分業化されている中で、けっこう重要な視点に切り込んでいると思います」。

 

橋爪先生はこうした「動作を規定する楽譜」から生まれる創作に大きな可能性を感じているといい、アイディアのひとつとして「たとえばダンスを視覚的に見られない人が、ダンスを音に変換したものを(ダンスそのものではないにしても)楽しむことができるかもしれない。(体の動きなど)音楽に基づかない表現を音として展開すると、音楽の枠がもっと広がっていくのでは」と話しました。

私は以前ダンスや音楽の即興表現を体験したとき、踊る人の動きに合わせて楽器を鳴らしていて自分でも思いがけない音が出てきたことを思い出し、大いに納得しました。

 

音楽を記録し再現するための楽譜、そして創作を補助するツールとしての楽譜。多彩な楽譜との出会いが楽しく、体の動きを楽譜ととらえる考え方も面白く、音楽以外の表現を音に変える体験をいろいろとしてみたくなりました。

 

3月は女性史月間。ジェンダーの話題を通じて、自分と社会との関係を考える

2024年3月28日 / まとめ, トピック

3月8日は、「国際女性デー(International Women‘s Day)」。女性の権利を守り、ジェンダー平等を実現することをめざし1975年に国連により定められた日で、3月を「女性史月間」としている国もあります。ほとんど0円大学でも、これまでジェンダーに関連するさまざまな話題をお届けしてきました。その一部をふりかえってみます。

弱者が弱者のままで尊重される社会を

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ジェンダー論、女性学といえばまずこの人を思い浮かべる人は多いのでは。現在は高齢者介護も研究テーマとしている上野千鶴子さんの講演レポートです。

「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重される社会を求める思想。弱者の中には、子どもやお年寄り、障害者、そして女が入っている」という言葉に、この思想は性別を問わず、すべての人のものだと気づかされます。

 

記事はこちら!→女性学のパイオニア・上野千鶴子先生が次世代に伝えたいこととは? 東洋学園大学の公開講座をレポート

 

家族の中の見えない関係性

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成人した娘に何かにつけて口を出す母親。年賀状で家族の名前を書く順番はいつもお父さん、お母さん、子どもの順。

「〇〇とは普通こういうもの(でも、改めて考えると何か変)」ということ、家族関係の中でもたくさんあります。長く続いた慣習を変えることには勇気がいりますが、身近なことから変えていくのが最初の一歩。そんな取り組みが紹介されています。

 

記事はこちら!→「家族」の中の見えない関係性を、哲学と社会学で解きほぐす。立命館大学のセミナー「人間関係のデモクラシー」レポート

 

「知ることからしか始められない」~スポーツのジェンダー

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スポーツの世界でもジェンダーの問題に注目が集まっています。こちらで紹介しているのはトランスジェンダーとスポーツをテーマとするシンポジウム。

トランスジェンダーの元アスリートが、好きなスポーツを楽しむこともままならなかった実情を明かし「知らないがゆえに差別や偏見が生まれている。結局知ることからしか始められない」と語っています。

 

記事はこちら!→スポーツにおける多様性とは?成城大学の公開講座でLGBTについて考える。

 

 

 

ジェンダー論やフェミニズムに関心をもつのは性的少数者や女性で、男性は関心も関連も薄い(当事者ではない)という印象をもっていました。

 

「当事者と非当事者、健常者と障害者といった二元論で考えても、どちらかの側面だけにいる人っていない。誰だっていつかは高齢者になるし、事故で車イス生活になるかもしれない。『みんなが多様な人』だと捉えて向き合っていくことが大事」(杉山文野さん / 成城大学の公開講座にて)

ここで語られているさまざまな課題は、社会で生きる(そして何らかの規定や固定観念の対象となる)すべての人に当てはまることなのかも、と感じます。

 

木の音を通して森林と音楽の未来を考える。京都大学生存圏研究所の公開講座をレポート

2024年3月26日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

ピアノやギター、バイオリン。日本の琴や太鼓や琵琶。これらの楽器に共通しているのは、「木」が使われているということ。

なぜ多くの楽器に木が使われ、人はその音を心地よく感じるのでしょう。木の音を通して未来の森林を考えようという講座「⽊の⾳から⼈と地球の未来を考える」(オンライン配信)が京都大学生存圏研究所の公開講座「サステナブルな未来を創る新しい材料のはなし」の第4回として行われ、視聴してみました。講師は森林科学を専門とする仲井一志先生(京都大学⽣存圏研究所特定准教授)です。

楽器の適材適所

楽器の中でもピアノなどは身近で触れることが多かったのですが、何の木が使われているのか意識したことはほとんどありませんでした。どんな木が使われているのでしょう。

講座スライドより。今回の講座では、主にヨーロッパの楽器について紹介されました。

 

ピアノに使われているのはスプルース(トウヒ)、エボニー(黒檀)、マホガニー、メープル(カエデ)など。このほかにも、ギターにはローズウッド、リコーダーにはツゲやサクラなど、さまざまな木が使われています。

こうした木が使われるようになったことについて「もともとは身近で手に入りやすい木を鳴らし、響きのよいものが楽器に使われるようになったのでしょう」と仲井先生。ヨーロッパの楽器はヨーロッパで入手できる木材から作られていましたが、大航海時代の幕開けとともに使われる木材の構成ががらりと変わり、世界中の木が使われるようになります。

 

世界には約7万種の樹木種があり、そのうち楽器に使われている木の種類は約70種類。全体からみるとわずかなようですが、「これほど多くの種類を組み合わせて使っているのは楽器業界ぐらい」なのだそうです。

実際にどのように木を組み合わせているのか、バイオリンを例に見てみると……。

講座スライドより。画像はバイオリンの名器として知られるストラディバリウス。

講座スライドより。画像はバイオリンの名器として知られるストラディバリウス。

 

表板に使われるのはスプルースというマツ科の木(『ハリーポッター』でよく出てくる森林はこの木だそうです)。軽くてよく鳴るという特徴があり、バイオリンは表板から音を広げるため、鳴りやすい性質をもつスプルースは適材です。

裏側や側面に使われているのはメープル(カエデ)で、弦を張った黒い部分はエボニー(黒檀)。エボニーは水分を吸収してもふくらみにくいという特性があり、弦をおさえる演奏者の汗がつきやすいこの部分に適しています。

 

鳴りやすさや硬さなど、木の種類ごとの性質を表したのが下の2つの表(緑枠内)です。

講座スライドより。(枠内緑字は、ほとんど0円大学編集部による追記)

 

表には、クラリネットの管体などに使われるアフリカン・ブラックウッド、バイオリンの表板などに使われるヨーロッパスプルース、マリンバ(木琴)に使われるホンジュラスローズウッドなど6種類の木材の、音速(振動が伝わる速さ)や減衰のしやすさ、硬さなどが示されています。硬くて重く鳴りやすいアフリカン・ブラックウッド、軽くてやわらかく鳴りやすいスプルース、硬くて重いが鳴りにくいエボニーなど、それぞれの木の特徴が見てとれます。

 

「やわらかく、鳴りやすいスプルースは振動を伝える音響材として優秀と言えます。楽器用の木材と言うと硬くて重い木材が良いと思われるかもしれませんが、必ずしもそういった木材だけが楽器に使われているわけではなく、楽器がどのように音を発するかを考えたうえで、それぞれの特徴を生かすよう用途によって使い分けられていることがわかると思います」。適材適所というわけですね。

なぜ心地よい? 木の音色

木の音というと、やわらかみのある、心地よい音というイメージです。なぜ心地よく感じるのかを一言でいうと「木は異方性を持つからです」と仲井先生。

異方性とは聞きなれない言葉ですが、ある方向には強く、ある方向には大きくしなるというように、方向によって強度などが変わる性質のこと。木は森林の中で上に伸びていくため、タテ方向に強い性質があるのはわかりますが、この性質が、木の音色にどう関係しているのでしょう。

講座スライドより

講座スライドより

 

音色は、音が出た瞬間(「ポン」とか「コン」とか)がいちばん大事だと思っていたんですが、仲井先生によると「音がどのように消えていくか」も、非常に重要なのだそうです。

 

音が鳴るとはどういうことかというと、まず振動の入力(木をたたくなど)があり、木が振動し、鳴ります(振動が空気に伝わる)。

振動の大きさは入力したときがピークで、そのあとは減衰していきますが、減衰のしかたに注目すると、木は異方性があることにより振動時の音の損失が大きく、金属などと比べると高音が減衰しやすい性質があります。高音が消え、低音がよく響くと人はそれを「あたたかい音」ととらえ、心地よく感じるのだそうです。

クラリネットとごま油の意外な関係

楽器に使われる木は、当然、どこかの森林で育っているわけですが、これまで楽器と森林とを結びつけて考えたことはほとんどありませんでした。楽器と森林とはどのような関係があるのでしょう。

 

仲井先生によると、全世界の産業用木材(丸太原木)の生産量は年間約40億㎥(人口一人当たりに換算すると0.5 ㎥ぐらい)。消費される丸太原木は数億~20億㎥で、そのうち楽器製作に使われる量は、日本の楽器メーカーであるヤマハの場合、年間約8万㎥。全体からみると大きな量ではありませんが、なんの問題もないわけではなさそうです。

 

仲井先生が例として挙げたのは、クラリネットやオーボエの管体に使われるアフリカン・ブラックウッドという木です。タンザニアの森林で育つ硬く黒い木で、豊かな響きを生み出しますが、生長に時間がかかる貴重材で減少傾向にあり、国際自然連合のレッドリストで準絶滅危惧種に分類されています。

講義スライドより。仲井先生は数年前からタンザニアの森林保全モデル構築などに携わっています。

 

タンザニアでは林業より農業の優先度が高く、意外にも私たちの食卓にも上るごま油ともかかわりがあります。世界有数のゴマ生産国であるタンザニアではゴマが高い値段で売れるため、ゴマの作付面積はここ15年で5倍に増加。ゴマ栽培のために焼き畑が進み、食糧需要が森林を圧迫しているのです。

 

森林資源を楽器にも、他の用途にも使いたい。でも、森林の近くで暮らす人たちの生活も大切です。

「食糧需要との共存がカギの一つ」と言う仲井先生は、「楽器の新しい材料開発や、手に入りやすい木材に置き換えるイノベーションも必要だと思います。ただこの講座では、高品質な木材が育つよう森を適切に管理し、伐採して有効に使い、産業として原産地域に利益をもたらす持続可能なモデルを推奨したい」。

 

木は50年、100年と、人間の経済活動とは異なる時間軸で生長します。仲井先生はタンザニアでブラックウッドの植林も計画的に進めていますが、これが楽器に姿を変え、音を響かせるのは50年以上先のことになります。

調査の様子

調査の様子

(左)育成中の苗木 (右)育てた苗木を植えつけ

(左)育成中の苗木 (右)育てた苗木を植えつけ

 

楽器の材料開発にも携わってきた仲井先生は「楽器の材料という観点でいうと、木は人工的に再現することが本当に難しい。楽器は木材の価値を最大限に高められるものなので、価値のある材料を次世代にも使ってもらいたい。楽器を通して木を見て森を見て、未来の森林を考えるきっかけにしてもらえたら」と語りました。

 

講座を視聴後、オーケストラの演奏を聞きに行く機会があり、今まで意識することのなかった楽器の「木」に意識を向けて聞いてみました。一目で木でできているとわかるバイオリンやチェロなどがずらりと並んだステージ。ホールの天井や壁を覆う木の反響板。耳を傾けていると、木や森が音を奏でているような心持ちがして、音楽は自然の恵みでもあったと気づきました。

 

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