東京大学がいざなう、知のワンダーランド。
全国の大学が発行する広報誌を勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第3回目となる今回は、日本の最高学府の最高峰、「東京大学」の広報誌「淡青」を取り上げます。
現在までに30号の発行を重ねる「淡青」。その名称の由来は、東京大学と京都大学が1920年に瀬田川で初めて対抗レガッタを開催した際のチームカラーから(ちなみに京都大学のチームカラーは「濃青」)。
名称からはトラディショナルで保守的な雰囲気を漂わせる「淡青」ですが、内容も毎号の特集を中心にその名に恥じない骨太な誌面に仕上がっています。むやみに派手さでデコレーションするのではなく、きちんと企画を立て、丹念に取材し、丁寧にデザインへ落とし込む「正攻法」の制作スタイルは国立大学の雄らしい「横綱相撲」です。
とはいえ、エンターテイメント性に乏しいインターフェイスが「とっつきにくい」ことも事実。たとえば過去3号の特集タイトルだけを見ても、28号(2014年3月発行)は「イノベーションと東大。 ―[大学][好奇心][研究][組織][企業][教育][学生]7つの切り口から迫るUTokyo式[新結合]の実像集」。29号(2014年9月発行)は「濱田純一総長就任から5年半 東大生は『タフ』になったのか? ―19/27,865人の実例でみる現代学生事情―」。最新号である30号(2015年3月発行)は「濱田総長時代の東京大学 動き始めた知の森 ―28,000字インタビューと関係者談で綴る6年の軌跡―」。
……いかがですか? 読む気しないんじゃないですか? 最新号なんて28,000字インタビューですからね。某音楽雑誌で恒例となっている2万字インタビューの約1.5倍弱ですから、ロックスターはだしの長時間インタビューだったことがうかがえます。
30号の巻頭特集。コラム等も挟みつつ20数ページにわたり展開
とはいえ、このまるで茶室のにじり口のごとき間口の狭さを通り抜けた先に待っているのは知のワンダーランド。ときには今後の国立大学の在り方について真正面から論じるなど、非常に「タフ」な内容がちりばめられています。教育業界人ならずとも、社会の行く末に少なからず関心のある大人であれば充分に楽しめるはずです。
連載企画「サイエンスへの招待」。スマートな図を使っての解説も
中でも教員の研究について紹介する連載企画である「Invitation to Science サイエンスへの招待」は、まさに東京大学の面目躍如。文化人類学や建築はもとより、「水」についての森羅万象を扱う「水文学」に、果ては「ももクロ」と、実に多彩な研究が紹介されていて、どれかひとつをとっても小説のネタにでもなりそうな興味深いものばかりです。
一見すると「とっつきにくい」入口の先に広がる東京大学の懐の深さ。「淡青」にはぜひこのスタイルを貫いてほしいものです。