特集テーマに沿ってじっくり読ませる、雑誌クオリティの学内誌。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第23回目となる今回は、大阪学院大学が発行する「L’horloge」を取り上げます。
大阪学院大学は1940年に創設された関西簿記研究所を前身とする、社会科学系学部を中心とする私立大学。将来の経営者をめざす学生が多いことで知られています。また、女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんをはじめ、多くのアスリートを輩出しており、大学スポーツ界でも注目を浴びる存在です。さて、今回取り上げる広報誌「L’horloge」は、フランス語で大時計という意味があり、レンガ壁で統一されたキャンパスのシンボルである時計塔を表しているようです。
「L’horloge」は、主に保護者に向けて年2回発行されています。2021年6月発行の161号の特集は「知ってる?OGU」。ポップなイラストの表紙をめくると、大学のトリビア的知識を数字で見せる巻頭ページ、おそらく大学が力を入れている学内留学の紹介ページと続きます。どのページも読者を飽きさせないタイトルやデザインが秀逸。これはもはや一般の雑誌と変わらないレベルでは…?と思って奥付けを見ると、『SAVVY』や『Meets Regional』といった京阪神のエリア情報誌で有名な出版社、京阪神エルマガジン社が編集制作を担当しているとのこと。なるほど!と誌面のクオリティの高さに納得したのでした。
目を引くタイトルと読みやすい誌面はさすが
近畿大学の大学案内を筆頭に、情報誌の制作チームが入試広報ツールを手がける事例は他にもありますが、大学広報誌に起用しているケースは珍しい気がします。バックナンバーにも目を通すと、毎号の企画に必ず学生が登場して、学生の目線から大学や大学生活を紹介。制作の実務は学外に委託しつつも、広報課が特集のコンセプトから取材手配までしっかり手をかけていることがうかがえます。また、過去にはPBLの一環として、ゼミの学生が京阪神エルマガジン社のオフィスを訪ね、誌面の企画に参加したケースもあったようです。
大学が発信したい情報は、教育、研究、スポーツ、卒業生の活躍など多岐に及びます。一つの冊子に伝えたい最新情報を盛り込んでいった結果、「いろいろ載っているけれど、読後感が残らない」というケースに陥りがち。この「L’horloge」は、特集テーマを強く打ち出して、その内容を学生のリアルな声とクオリティの高いデザインで紹介することで、「大阪学院大学の魅力的な一面」を切り取ることに成功した好例だと思います。