大学創立50周年を迎えた2015年を契機に、新学部開設や学部改組など変革を続ける京都産業大学。新しい大学像をアピールする大学広報においても挑戦が始まっている。
あのナショジオとコラボした「Re:世の中」開設
京都産業大学が、2018年4月から「Re:世の中」というサイトを立ち上げた。トップページには、宇宙に浮かぶ地球と一筋の光と「今日も世界は更新中!」のフレーズ。デザインもかっこいい。
記事のタイトルが宇宙のような空間に浮かび上がるトップページ
京都産業大学の研究や学生の取り組みとともに、ナショナル・ジオグラフィック(以下ナショジオ)誌の記事の冒頭が読め、興味があればさらにリンクをたどってナショジオ日本版サイトへ飛んでじっくり記事を読むことができる。よく見ると、京都産業大学の記事よりもナショジオの方が多いぐらい。大学の取り組みを集めたキュレーションサイトかと思いきや、よくあるものとはちょっと趣が違う。
広報部・課長補佐の増村尚人さんは「Re:世の中」の狙いを、次のように語る。
「社会で今起こっているさまざまな事象の一端を紹介することで、現代社会にとって大切なものとは何か、気づきや発見を提供したいと考えました。進路選択の岐路に立つ高校生にとって、自分の興味や関心のありかを見つける手助けになればという思いもあります」。
この思いを叶えてくれるコラボ先として白羽の矢を立てたのが、ナショジオだった。「未知の地球をわかりやすく伝える」をスローガンに、社会の今を幅広く切り取って示してくれるメディアだ。「高校生には内容が難しすぎるのではないか」という心配もあったが、それよりも新たな興味や関心を開拓してくれるカバー領域の幅広さや記事の読み応えを重視したとか。ナショジオの記事に興味を持つ社会的な関心の高い層に、本学のことを知ってほしい、とも考えた。
京都産業大学のニュースは大学ホームページにも掲載されているが、大学名を知っている人や興味を持った人しかアクセスしない。その点「Re:世の中」では、研究分野やナショジオの記事の分野に興味を持った世界からのアクセスが期待できる。「ナショジオの記事と並ぶ本学の進んだ研究内容や取り組みの記事を読んで、すごい研究をやってるんだなと再認識してくれれば」と増村さん。コンタクトポイントを広げると同時に、研究や取り組みの時代性や社会性、守備範囲の幅広さや専門性の高さに改めて気づかせる、大学リブランディングのツールにもなるというわけだ。
世の中を見直し自分の未来を見つめるツール
毎月10日、ナショジオの記事と学内の記事と併せて、8本ずつ更新。ナショジオの記事本文の冒頭はそのまま転載するが、「より気付きや視点を提供するきっかけに」と、記事の始めに「京都産業大学による見どころチェック!」をつけて記事へと導入している。
記事の選択は、ナショジオ・大学の記事とともに、広報部で行っている。もっとも重視しているのは、多様なテーマをバランス良く選ぶこと。2019年度には10学部になり、人文・社会・自然科学分野を網羅した全国でも最大規模の一拠点総合大学として、さまざまな関心を持った学生を集めたいという思いがある。また、ニュースの鮮度はもちろん、多様性と話題性、高校生の興味度、分かりやすさもポイント。5月は、京都文化についての記事なども取り上げられている。現時点では、狙い通り高校生が見ている他、30~40代の読者も多いとか。保護者層も含まれているかもしれない。
更新された記事がスマートに並ぶ
今、高校の進路指導が変わりつつあるという。早期に自分の関心事を見つけること、社会と自分の関わり方を考えた学びを探究すること、それによって将来、社会的活躍を果たし個性を発揮することが求められている。こんな職業に就きたい、というよりも、その職業に就いて社会にどう貢献したいか、というところから職業観を育んでいくわけだ。「ナショジオの記事を教材に使う高校もあると聞いています。『Re:世の中』で社会の動きを知り、職業選択の役に立ててくれればうれしい」。
高校生、受験生、もちろん大人にとっても、世の中を見直して課題を再確認し、進むべき道を再構築するきっかけとなるサイト、それが「Re:世の中」だ。今後、読者の関心のありかを探りながらさらに発展させていきたいという思いを語る増村さん。
「『Re:世の中』だけでなく『Re:大学』全体も、また交通広告などその他の媒体についてもどんどん新しい挑戦を進めていきたいと考えていますし、現に進めています」。
「Re:大学」? 交通広告?
このまま記事を終わらせることができない事態になってきた。ということで、詳細は後編に続きます。