おウチに眠っている「ぬいぐるみ」。捨てるのは気が引けるけれど、なんとかしたいですよね。そんなぬいぐるみたちに新たな価値を与えるプロジェクトが京都大学でスタートしました。このプロジェクトでは、世界中で推し進められている「SDGs(持続可能な開発目標)」の一環として、使われなくなったぬいぐるみで巨大オブジェをつくり、リユースを呼びかけます。このリユースのぬいぐるみでつくる巨大オブジェというのは、なんと世界初なのだとか。世界初と聞いては、取材しない手はありません。オブジェがお披露目される3月12日に、京都大学にうかがいました。
SDGsのロゴ・カラーとぬいぐるみが連動
今回のぬいぐるみリユースプロジェクトのメインメンバーとして携わるのは、浅利美鈴先生(大学院地球環境学堂准教授)と、SDGsの推進やエコ活動に取り組む「エコ〜るど京大」という学生サークルのメンバーです。
お披露目される京都大学百周年記念時計台前に到着すると、メンバーたちが赤、青、黄と色分けされたぬいぐるみの入った透明のキューブボックスをいくつも運んでいました。これがオブジェに? と不思議に思いつつ、作業を見ていると、ついに全貌が。ぬいぐるみの入ったキューブボックスがSDGsのマークになりました。
SDGsでは17の達成目標が設定されていて、それぞれにキーカラーがあります。今回、キューブボックスのなかには、キーカラーごとに色分けされたぬいぐるみが詰まっていました。各キューブボックスは一辺60センチの立方体で、かなり巨大! 積み重なるとすごい迫力です。通りかかる他の学生も思わず足を止めて見ていました。
学生たちが次々と運んでくるキューブボックスが……
SDGsのマークを表現する巨大オブジェに!
ぬいぐるみたちは、SDGsの17ゴールのカラーにきれいに色分けされていた
可愛いぬいぐるみがリユース習慣のきっかけに
そもそも、なぜ、オブジェにぬいぐるみを使ったのでしょう。浅利先生にたずねると、「ほとんどのぬいぐるみが化学繊維、つまりプラスチックできているから」とのこと。
プラスチック製品は社会や生活の必需品ですが、プラスチックごみは自然にかえらず、半永久的に残ります。捨てられたプラスチックが、海を漂い汚染する海洋プラスチック問題や、未知なリスクを抱えるマイクロプラスチック問題など、プラスチックはさまざまな環境問題・社会問題の原因になっています。このプラスチックについて考えるきっかけをつくりたかったといのが、理由のひとつ。もうひとつは、「リユースをピーアールしたい」という思いがあったからだと、浅利先生は説明します。
循環型社会の実現に向けて、さまざまなシーンで3R活動が推進されています。この3Rというのは、ごみを減らすリデュース(Reduce)、繰り返し使うリユース(Reuse)、ごみを再利用するリサイクル(Recycle)の3つのRです。このなかでリユースは、身近で簡単にできるものの、リデュース、リサイクルに比べると認知・実践度が低いそう。そんなリユースの意識向上に、ぬいぐるみは一役買ってくれるのではないか。先生たちはそう考えました。たしかに、ぬいぐるみは誰かに譲ればまた可愛がってもらえるわけで、リユースを伝えるには、ぴったりな製品なように感じます。
オブジェの制作現場。ぬいぐるみリユースの呼びかけに、たくさんの人が応じてくれた
集まったぬいぐるみを、SDGsの17ゴールの色ごとに分けていく
たくさんの人の思いが詰まった巨大オブジェ
今回の巨大オブジェには、ぬいぐるみの回収やチャリティー販売などに安田産業株式会社と株式会社ecommit、ぬいぐるみの詰め方やカラー構成に京都芸術大学が賛同・参画。さらに、キューブボックスは川上産業株式会社から無償提供されたとのこと。川上産業は、ストレス解消にもひと役買うプチプチ®の製造を行う会社で、同社のプチプチ®はなんとリサイクルができるのだとか!?
「今後、巨大オブジェは、周辺の商業施設や小中学校での展示を予定しています。多くの人に見てもらうことで、リユースに関心を持ち、習慣にしてほしいですね。もちろん、使ったぬいぐるみはチャリティーオークションや寄贈することでリユースしていくつもりです」と、浅利先生。
このプロジェクトで学生たちをまとめた「エコ〜るど京大」の久保さんは、「色分けには苦労しましたが、こうして展示すると、ぬいぐるみを提供してくれた方、協力くださった方の思いが伝わるものができたと思います」と、オブジェの出来映えに満足な様子でした。
「エコ~るど京大」の久保さん
リユースぬいぐるみのオブジェは、京都大学で3月に開催予定だった「第3回《超》SDGsシンポジウム&博覧会『プラスチックと持続可能性』」で展示する予定でしたが、新型コロナウィルスの影響でイベントは7月に延期に。7月のイベント開催に合わせて「エコ〜るど京大」では、ぬいぐるみ回収を呼びかけるようなので、ぜひ押し入れに眠っているぬいぐるみがあれば、これを機に起こしてあげてはいかがでしょうか。最後に、今回の一連の取り組みの動画があるのでご紹介。これを見たらプロジェクトの全貌がわかります!