8月9日(火)夜、フェスティバルホール(大阪市北区)で関西大学130周年記念「豊臣期大坂図屏風コンサート」が開催されました。関西大学で2006年から研究されている「豊臣期大坂図屏風」。以前「偶然が生んだ奇跡の屏風 関西大学「『豊臣期大坂図屏風』の謎に迫る」でも取り上げたこの屏風を、音楽という全く違う視点から楽しむイベントを取材しました。
会場に到着したのは夕方17時半ごろ。開場1時間前ですが、すでに多くの来場者の姿が。小さなお子さん連れのご家族や教職員、会社帰りの人など、さまざまな方が会場に集まっていました。
会場外のホワイエには、「豊臣期大坂図屏風」のレプリカと説明、そしてこのコンサートで初公開となるタブレット端末用アプリの試作版が展示されていました。
タブレット端末用アプリの試作版
タブレット端末用アプリは「豊臣期大坂図屏風」を手で拡大縮小して楽しんだり、屏風に描かれている風景の説明を見るなど、直感的に屏風絵を楽しめるもの。まだ試作段階とのことで、完成がとても楽しみです。
豊臣期大坂図屏風を解説するパネル。
「豊臣期大坂図屏風」の等倍レプリカ。写真を元に制作されているそうだが、屏風本来の姿で見る大坂図はとても華やかだ
屏風や説明を興味深く眺めている方も多く、関心の高さが伺えました。
フェスティバルホールの緞帳には、この「豊臣期大坂図屏風」の図案が使用されています。
私も初めて拝見しましたが、客席から見てもわかる、非常にきれいな緞帳でした。
今回のコンサートは、今も屏風があるオーストリアグラーツ市とのコラボレーションであり、大坂図屏風をテーマにした新曲2曲が披露されました。
コンサートの前に第一部では、エッゲンベルグ城の研究員であり屏風発見の立役者であるバーバラ・カイザー氏から、「豊臣期大坂図屏風」についてドイツ語で講演があり、続く第二部からいよいよコンサートがはじまりました。
第二部はグラーツ・フェスティバルストリングスによる華麗な演奏
まずは今回のコンサートのため、グラーツ市に縁のある音楽家たちによって組織されたグラーツ・フェスティバルストリングスによる3曲の演奏。
大坂図の緞帳をバックに壮大な新曲を披露
1曲目はフーゴ・ヴォルフ作曲のイタリア風セレナーデ。そして2曲目と3曲目は今回のコンサートのために書き下ろされた「豊臣期大坂図屏風」をテーマにした新曲です。
2曲目の『大坂城下町八景』は、現代音楽やジャズ、電子音楽の分野で活躍しているオーストリア出身の作曲家、クリストフ・レッシ氏が作曲。
この曲はオーストリア伝統の楽器であるハックブレッドとコラボし、8扇からなる大坂図屏風と同様、8楽章が途切れることなくつながり、一つの楽曲になっています。「さくら」など日本の童謡にあるフレーズが、曲をつなげるモチーフとして散りばめられていて、どこか懐かしさを感じる不思議な曲でした。
ハックブレッドのソリストを務められたヘンマ・プレシュベルガー氏(提供:関西大学広報課)
続く3曲目は、大阪府出身の音楽家である杉本友樹氏が手がけた『義太夫三味線と弦楽のための協奏的譚詩』。それぞれ異なるイメージの3楽章から構成され、屏風が海を渡り再発見されるまでのストーリーと、屏風に描かれた豊臣一族統治時代の大坂をイメージした曲です。
弦楽の華やかな音と三味線の日本的な音が合わさり、豊臣一族統治時代当時の賑わいがありありと想像できる力強さと華やかさを感じました。
三味線を演奏された鶴沢清尤氏。洋楽にも通じる三味線奏者(提供:関西大学広報課)
第三部はプロと学生のコラボレーション
第三部ではグラーツ・フェスティバルストリングスと、関西大学の学生たちで組織された関西大学交響楽団、関西大学グリークラブ、関西大学混声合唱団ひびきが登壇。アントニオ・ドヴォルザーク作曲の交響曲第6番第1楽章・第4楽章、混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『土の歌』より『大地讃頌』を奏でました。
最後は関西大学学歌でコンサートが締めくくられました。
第三部の様子
屏風については先日もお話を伺っていましたが、屏風をテーマにコンサートをすることが想像できず、どうなるのかと思っていました。
しかし披露された新曲はどちらもすばらしく、知識としてだけではなく屏風そのものを多角的に楽しむことができました。
今回の取り組みは、大学の研究成果をどのようにアピールするかという活動にも関わっているとのこと。
ではどのようにしてコンサートが実現したのか、次回はその内容を伺います。
(次回掲載は9月中旬を予定しています)