ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.1.28
  • author:中野祐子

目的は無目的に集まること!? 京大の名物企画「全分野交流会(特別版)」に行ってみた。

「京都のすべての大学から1名ずつ以上は集めて、ミニ『学術の街、京都』を再現してみたい!」

 

わかるようで、わからない。でも、何となくすごく惹かれるフレーズ……。これは、昨年末に開催された、京都大学が主催する「全分野交流会」という学術交流イベントの告知チラシのコピーです。

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チラシに大書された、例のコピー

 

このチラシのデータとともに、「面白いことをやる」と、本イベントの主催者である宮野公樹先生から連絡があり、イベントの内容をうかがいに、そして参加するために、会場となる「Impact Hub Kyoto」にうかがいました。ちなみに宮野先生は、以前、ほとゼロでレポートした「京大100人論文」の発起人。こちらもユニークな取り組みなので、未読の方はぜひご一読を!(記事はこちら

多様な人が学術的な対話を繰り広げる場

まずは宮野先生に今回のイベント開催のきっかけや目的をうかがうと「一度、やってみたかったんです」とひとこと。え、それだけですか?

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京都大学学際融合センターの宮野公樹先生(左)と井出和希先生(右)

 

「全分野交流会は2014年から開催しており、さまざまな興味や関心のある人たちが、目的もなくただ集まることを目的にしたイベントです。今回はこの特別版として、京都にあるすべての大学の関係者を集めてみたいと思って企画しました」

 

イベントの目的もなければ、具体的なプログラムもないとのこと。なんとまぁ大ざっぱな……と思いつつ話しをうかがっていくと、大上段に構える目的はないものの、その裏にはしっかりとした想いがあることがわかってきました。

 

「研究者は、授業や雑務をこなしているとき以外は、すべて研究のための時間だと考えている人が多い。オフがないんです。でも、これだとダメ。異分野と接することで、新たな知識を得たり、自分の考えは狭くないかと内省したりする、そういう時間も必要です。全分野交流会をはじめた理由は、そんな研究者たちと刺激しあう『ヒリヒリとした学術対話』がしたかったからです。大学のため! 学術のため! というより、自分自身がそうしたかったからです」

 

さらに、「目的をつくらないことで、参加者それぞれが自身の視点で価値をつくってくれるというのがあります。美術鑑賞みたいなものです。美術品への説明がなければ、それぞれがそれぞれの視点で作品を解釈する。これと同じで、こっち側で目的をつくらないことで、参加者はそれぞれの視点でこのイベントの価値を見つけ楽しんでくれます」

 

うーん、深い。ちなみに「全分野交流会」は、研究者のため、と言いつつも、大学関係者はもちろん、大学と縁もゆかりもない一般の人でも参加が可能です。普段生活しているだけでは、大学の研究者と自由気ままに対話ができる機会なんてそうそうありません。そういう意味では、一般の人にとっても、だいぶ刺激的なイベントなのではないでしょうか。

参加者120名! 会場はまさにミニ総合大学

さて、宮野先生と井手先生への取材が終わり、しばらく経つと「全分野交流会(特別版)」の開催です。今回は京都にある43大学のうち33の大学関係者が参加し、さらに大阪や神戸の大学関係者、公務員や企業人、フリーランスのクリエイターなども参加。なんと、合計すると120名もの人たちがやってきました。明確な目的がないイベントにも関わらず、この動員数は驚きです。しかも、当初の募集人数は70名だったとか。倍近い人が押し寄せたことになります。

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会場はどこもかしこも人、人、人!

 

受付では、全参加者の名前と所属、「こんなことなら私に聞いて」、「あなたの今の問いは」がまとめられたリストを配布。参加者はこのリストを見て、気になる人を探して話しかけることになります。これなら自らの目的にあわせて、イベントを利活用することも容易です。

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参加者たちはリストを見ながら誰に何を話すか思いを巡らす

 

19時からのイベントでしたが、開会の挨拶があるわけでもなく、なんとなく会はスタート。とはいえ、18時半ごろから訪れる来場者も多く、19時にもなると会場はとてつもない熱気でした。

 

19時半ごろに宮野先生から挨拶がありました。形式張ったものではなく、とてもフランクなもの。取材時に語ってもらった、今回のイベント開催理由である「とにかく一度やってみたかったから」も飛び出し、会場は笑いにつつまれます。

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なごやかなムードで行われた、宮野先生の挨拶

 

参加者に声をかけると「人のバリエーションがすごい!」、「専門が高等教育なので大学関係者と話せて刺激を受けた!」、「集まっただけなのに、この満足感はなんなのでしょう?」などなど、たくさんの人が有意義な出会いと会話への喜びを興奮気味に語ってくれました。

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会場のあちこちで真剣な対話が生まれていた

 

過去には、小学生の参加もあったという「全分野交流会」。このイベントがきっかけとなり、共同研究につながった事例も少なくないようです。京大内で開催される「全分野交流会」は月1回、特別版は年2回のペースで今後も開催予定とのこと。アカデミックな世界であったり、「真剣な対話や、本質的な対話」に興味があるなら、目的の有り無しかかわらず、まずは飛び込んでみてはいかがでしょうか? なお、「全分野交流会(特別版)」の様子は京都大学学際融合教育研究推進センターのウェブサイト上で動画を公開中。当日の熱気がびんびんと伝わるので、こちらもご覧ください!(動画はこちら

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