滋賀県といえば琵琶湖が織りなす四季折々の風光明媚な景色が脳裏に浮かびますが、その琵琶湖を一望できる丘の上に位置しているのが成安造形大学。そんなロケーションばっちりな大学内にある「カフェテリア結紀伊國屋」を訪ねてみました。
学生たちが半年がかりで建築した「カフェテリア結」
カフェテリア結 紀伊國屋の内観。
「カフェテリア結」は、大きく開かれた窓から琵琶湖を一望できる場所にあり、自然光が降り注ぐ美しいカフェです。2004年の春から半年ほどかけて、学年を超えた住環境デザインクラスの学生たちの手によって建設されました。中心になって指導したのは、自然の素材を使った建築を試みるスローデザイン研究会の主宰であり、造形学部の教授でもある大岩剛一氏。その他、地元の職人さんや信楽森林組合などの協力を得て、建築、デザインはもとより、テーブルや椅子などの什器やランプシェードにいたるまですべて学生たちの手で造りあげたのです。
自然の素材の温もりに包まれるカフェ
ソファー席の横にある暖炉。冬には薪がくべられる
成安造形大学では「芸術による社会への貢献」というテーマを掲げているのですが、「カフェテリア結」でも、その試みは実践されています。間伐材や稲藁、土、瓦など地元の循環型素材を使用して建設されました。たとえば、ストローベイルという藁と土で作ったブロックを竹で支える工法を取り入れたり、間伐材を使用したり、いままで廃棄されてきたような資源を有効活用したのです。間伐材は森林の樹木を大きく育てるために間引かれた木で、それ1本では柱の強度を満たしません。そのため、4本の間伐材をボルトでつないで1本の柱にするといった使い方をしています。
こうした木材などの自然素材をふんだんに利用した店内は温もりにあふれ、ゆったりとくつろげる雰囲気。琵琶湖の雄大な自然の景色ともよくなじんでいます。店内には、ソファ席の横に暖炉があるのですが、明々と燃え盛る炎を見つめていると、静かなコテージでくつろいでいるかのような気分に。まさに、自然の恵みに癒やされる空間なのです。
「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」がプロデュース
ボリュームたっぷり!「パングラタン」
「カフェテリア結 紀伊國屋」をプロデュースしているのは、滋賀県でも有名なスローフードの店「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」です。「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」は、自社のブルーベリー農園で無農薬、無除草剤で育てたブルーベリーを使い、無添加のジャムなどを製造、販売しています。そのため、「カフェテリア結 紀伊國屋」では、フルーティーで安心して食べられるジャム、パンやケーキ、オーガニックコーヒーなどを楽しむことができるのです。
ブルーベリーを使ったパンやケーキも盛り沢山
学生たちに「母親が家で作るようなちゃんとしたご飯」を食べてもらいたいというコンセプトで作られたメニューは、どれも優しい味わい。玄米や無農薬有機栽培されたさつまいもなど、できるだけヘルシーな食材を使っています。メニューのひとつ「樹樹セット」のメインは、「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」の全粒粉のパンに特製ホワイトソースととろけるチーズをたっぷりかけて焼き上げた「パングラタン」。なかには、とろ~りとろけるポーチドエッグが忍ばせてあるんですよ!滋賀県産の玄米を使用した「棚田ランチ」や大きなブルーベリーの実がゴロゴロ入った「リングケーキ」、オーガニックコーヒーもおすすめです。
このほか、「カフェテリア結 紀伊國屋」では、地産地消というテーマや日野菜や畠庄つくねいもなど滋賀県の伝統野菜に注目した料理が登場するなど、滋賀ならではの味覚を楽しむこともできます。教員や学生だけでなく、地元の方はもちろん、誰でも利用できるよう広く開放されているのも魅力のひとつ。
本当の意味での「豊かさ」を知ってもらいたいという思いで作られた料理やデザート。自然の恵みや人の手の温もりが感じられる場所、それが「カフェテリア結 紀伊國屋」なのです。