ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2023.10.26
  • author:(有)鐵五郎企画

東京・新宿歌舞伎町。夜な夜な研究者の卵や好奇心旺盛な社会人が集まる学問バー「Kisi」

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ここ数年で新しいスポットが続々とオープンしている新宿。新宿歌舞伎町の東急歌舞伎町タワーの誕生は記憶に新しいところです。そんな歌舞伎町の片隅にある「Kisi」という学問バーが、今密かに話題を呼んでいるそう。「お酒を片手にアカデミックな会話が楽しめるバー」がコンセプトで、夜な夜な研究者の卵や好奇心旺盛な社会人が集まっているといいます。今回は大学ではありませんが、そんな方々が集まる場所ならぜひ行ってみたい!早速、お店に向かい、店長の山口真幸さんに「Kisi」について詳しく聞きました。

人気イベントの“院生バー”を、学問バーという店舗に

インタビューに応じてくださった店長の山口真幸さん

インタビューに応じてくださった店長の山口真幸さん

 

新宿駅から徒歩10分ほどの雑居ビルの5階にある「Kisi」。この日は、9月だというのに残暑が厳しく、汗だくになりながら到着。扉を開けると、カウンターと奥のソファ席を合わせて11席ほどのこぢんまりとして落ち着いた雰囲気の店内で山口さんが迎えてくれました。

 

「Kisi」は、山口さんとは別にオーナーが居て、そのオーナーが経営するイベントバー「エデン」で開催していた“院生バー”をきっかけに生まれたといいます。「エデン」は、毎日異なる人が店長になってイベントを主催する店で、“院生バー”は、そこで定期的に開催されていたイベントの一つでした。大学院生が一日店長を務め、自身の専門分野や研究テーマについてもざっくばらんに話しながら、お客さんとコミュニケーションをします。

 

「毎回大勢の人が集まり、とても人気があったようです。大学院生だけでなく、バックグラウンドの違うさまざまなお客さんが来店し、アカデミックな会話で盛り上がっていたとか。その様子を見ていたオーナーが、そうした場や機会のニーズを確信し、“院生バー”をレギュラー化した学問バーをつくることになったというのが『Kisi』の背景です」と山口さん。

 

山口さんが、「Kisi」の店長になったのも「エデン」でのオーナーとの出会いからだそう。東京大学文科三類に入学し、卒業後は学術系出版社で編集実務全般に従事し、約5年間勤め退職。その後の約2年間のフリー期間に「エデン」で何度もイベントを企画・開催していたのだとか。「『考えすぎバー』やたこ焼きをみんなで焼いて雑談するなどのイベントをやっていました。全然アカデミックじゃないですね(笑)。何かを企画することはもちろん、元々人と話したり、知り合い同士を引き合わせたりすることが好きでした。そうした場として自分で店をやりたい気持ちが高まっていたところに、『Kisi』オープンの話を聞いて、店長に応募したんです」。こうして店長が決まり、2023年1月、幅広い「学問」を取り上げる学問バーとして「Kisi」はオープンしました。

コンセプトは、「お酒を片手にアカデミックな会話が楽しめるバー」

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「Kisi」では、日替わりバーテンダー候補枠を広げて、基本的に大学院生・院卒、または研究者の方を対象とし、学部生や研究活動をするアマチュアの方も相談に応じているといいます。17時~23時の営業時間を日替わりバーテンダーが自由に使え、現在はスライドを使った20、30分のレクチャー後、質疑応答や雑談などに移る流れが多いそう。中には、たくさん用意したトピックをお品書きとして提示し、お客さんに選んでもらうスタイルのレクチャーもあったのだとか。

 

これまでのイベントを一部紹介すると、「AIの基礎理論と応用について語る」「イスラム金融について語る」「物理学で楽しむ因果論」「エジプトの大衆芸能について語る:ベリーダンスと歌謡曲を中心に」「ゲームから考えるチームの合意形成」「図書館情報学徒が語る『図書館のあるき方』:イギリス図書館史から研究上の役立て方まで」「生物の入試問題を生物学者と解いてみるバー」「『日本のバルザック』山崎豊子を語り尽くす:人物像と創作術を中心に」など実に多彩。そして、アカデミックとは程遠い筆者でも、「おもしろそう」と興味の湧くテーマが並びます。

 

 「一見難しそうなイベントテーマでも、切り口を工夫するなどして、間口を広げ、敷居を低くすることを心がけています。フラットで、どんなお客さんにも開かれたバーが理想です。そして、レクチャー途中でも、お客さんが気になれば質問したり突っ込んだりして大いにOK。バーならではのカジュアルに砕けた感じで会話を楽しめる雰囲気を大切にしています」と山口さん。「お酒を片手にアカデミックな会話が楽しめるバー」という「Kisi」のコンセプトにはそんな思いが込められていると話してくれました。

知らないことや人に対してよりオープンになっていくきっかけに

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主にSNSなどによって「Kisi」の認知度は拡大しつつあり、現在、日替わりバーテンダーの応募も増えているのだそうです。お客さんは大学院生や大学生はもとより、勉強熱心で知的好奇心旺盛な社会人も来店するなど、客足も上々だとか。好調な理由を山口さんはこう話します。

 

「日替わりバーテンダーの大学院生や研究者の方に話を聞くと、『分野の違う人と話したり、お客さんからの思いもよらない質問や意見に刺激をもらったり、勉強になる』と言ってくれます。また、知り合いの研究者は『Kisiは学会後の懇親会の三次会っぽい』と話していました。お酒を飲みながら率直な意見交換などが気軽にできて、分野や立場を超えてゆるくつながる距離感が心地いいと。一方、お客さんは“知ることの喜び”というのはきっとあるとして、知識が広がるとおもしろかったり、自分と同じ興味を持つ人との出会いがうれしかったりするではないかと感じています。一つの世界だけにいるよりも、多くの人と出会うことで、知らないことや人に対してよりオープンになっていく――。「Kisi」がそんなきっかけになれたらうれしいです」。

 

最近のチャレンジとして、何人もの日替わりバーテンダーで構成されたオムニバス形態のイベントを開催していて、「一人は不安」という方や、学部生、研究熱心な高校生も活躍しているそう。「短い時間ですが、未来の研究者たちを応援する意味でも、こうした機会をつくっています」と山口さん。今後は、これ以外にも対談などイベント形態のバリエーションを増やしていきたいと話します。例えば、先日実施されたのは「研究とは何か?」をテーマにした文系・理系大学院生の対談だそう。「当たり前と思っている自身の価値観を問い直し、相対化するきっかけになるようなイベントができたらおもしろいと思っています」。

 

また、8月から始めた新サービス「大人の学びの水先案内サービス『Pilota』」にも力を入れていきたいと話す山口さん。「人生の何処からでも、学びの旅のよろこびを」をコンセプトに、高い専門性を備えた講師陣が強力かつ懇切丁寧に依頼者の学びをサポートするというサービスです。「日替わりバーテンダーを務めた大学院生や研究者の方の知識を『Kisi』だけで終わらせるのはもったいないと思ったんです。学び直しをしたい人とマッチングができたら、双方幸せですよね」。

イベント体験! 「宇宙を語るバー」

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同日開催されたイベントに参加。この日は、「宇宙全体から銀河研究最前線まで!」がテーマで、バーテンダーは、「銀河進化学」の中でも、地球から近い近傍銀河の進化を観測し理解する「銀河考古学」を専門に研究している名古屋大学大学院D1(博士課程1年)の松井瀬奈さん。将来は、自身の研究を続けながら、プラネタリウムの解説者になるのが夢だと話します。

 

17時頃から21時過ぎまでに、宇宙関連の研究者や、宇宙から見た死生観を書いた本を最近読み宇宙に興味を持って来られた会社員の女性、宇宙関連・理系テーマが好きなカップルなど、入れ替わりながら10人が来店。

 

自己紹介で松井さんが“プラネタリウム愛”を熱く語ると、「證願寺のプラネタリウム、住職さんの話もおもしろいですよね」とお客さんから共感の声が入るなど序盤から盛り上がっていました。宇宙に無数に存在する銀河がどうやってできて、どのように今の姿になったのか――。途中、お客さんからの質問に答えたり、都度会話したりしながら、松井さんの丁寧なレクチャーが続きました。その後は、お客さんと宇宙についてさまざまな方向に話題が飛びつつも、賑やかな雑談が繰り広げられ、松井さんもお客さんも終始楽しそうな様子が印象的でした。

 

宇宙に関してド素人の筆者は、ひたすらインプット作業ではあったものの、宇宙の果てしなさや銀河の成り立ちなどを知り、宇宙を少し身近に感じられる夜に。同時に店を出たカップルと帰りのエレベーターで一緒に。感想を聞くと、「周りの人の質問や話が興味深くて、本当におもしろかった。来てよかったね」と二人で目を合わせていました。


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