イームズやヤコブセン、柳宗理…「欲しい!」と思わせるラインナップに、おしゃれなショップのような陳列。時代を超え愛され親しまれている名作の椅子に出会えるのが武蔵野美術大学の美術館です。“ムサビ”らしくアートの最前線をいく、その革新的なチャレンジを続ける現場にお邪魔しました。
武蔵野美術大学美術館があるのは東京都小平市、鷹の台キャンパス。近くには玉川上水が流れ、雑木林が茂る静かな文教エリアです。キャンパスは文化勲章を受賞した建築家・芦原義信のマスタープランのもとに設計・建築。正門からまっすぐ進むと、広場の先にパッと武蔵野美術大学美術館が見えてきます。
空と緑と建物が調和した光景はまるでひとつの作品、他の建物とのバランスも見事です。
美術館は背後に位置する図書館、民俗資料室、イメージライブラリーが一体となったムサビの「美と知」のシンボル。エントランスを抜けると中央が吹き抜けになったレンガと大理石を使用したアトリウムが開放感あふれる空間を醸成しています。
半世紀以上の歴史を持つ武蔵野美術大学美術館は、2011年にリニューアルした広々と風通しのいい雰囲気。
武蔵野美術大学の美術館には研究の貴重な基礎資料として社会的にも大きな意義を持つ約4万点のデザイン資料や美術作品が収蔵されています。400点を超える近代名作椅子や国内外の3万点におよぶデザイン性の高いポスターは国内トップクラス。その他、優れたデザインの工業製品や玩具、歴代教員の作品を主とした絵画、彫刻、版画、陶磁器など多彩なジャンルでコレクションは形成されています。
美術館の目玉ともいえる近代の名作椅子コレクション。約100点を常時公開している椅子ギャラリー。(見学はガラスの外側からとなります)
また「芦原義信建築アーカイブ」として20万点もの貴重な資料を収蔵。武蔵野美術大学キャンパスをはじめ「中央公論ビルディング」(1956年)、「駒沢公園体育館・管制塔」(1964年)、「ソニービル」(1966年)、「モントリオール万国博覧会日本館」(1967年)等の手書き図面や写真などの建築資料、ハーバード大学留学時の個人資料など、日本の戦後モダニズム建築を物語る圧巻のコレクションを形成しています。
武蔵野美術大学鷹の台キャンパス全体の模型。iOS用のアプリ「MAU-PIAZZA VRムサビキャンパス」は、芦原義信の計画によるキャンパスの変遷を3DCGによって再現しています。
「芦原義信建築アーカイブ展」(2017年5月22日-8月13日)の展示模様。現代のCADデータによる図面とは違い、技巧に裏付けされた緻密な鉛筆の運びによって描かれた図面が並びました。
訪れるたびに新しい発見がある、それが武蔵野美術大学美術館の魅力のひとつです。自由な発想と挑戦、美大ならではの独創性のある企画展を年間10回ほど開催。毎回、展覧会コンセプトにあわせて館内レイアウトを変更、展示作品も総入れ替えされます。毎年開催される学部卒業制作・大学院修了制作の優秀作品展と助手展(各研究室助手の研究発表)では、若々しくエネルギッシュな作品、多様な表現を肌で感じることができます。
展覧会のスケジュールはホームページで確認を。所蔵する貴重書や陶磁作品の高精細画像を解説とともに楽しむことができるiOS用のアプリ「MAU M&L 博物図譜」や「やきものの在処 デジタルアーカイブ」もおすすめです。
訪れる人を魅了してしまうのは、この美術館がただ鑑賞する場所ではないから。企画展に関連する講演会はもちろん、さまざまな参加型イベントが開催されます。美術館で落語など斬新なのがムサビらしい。その他、ライブや映画上映等が過去には行なわれています。また名作椅子をミニチュアで作るワークショップなども要チェックです。
自然と芸術が共生する武蔵野美術大学美術館、アートの最前線を玉川上水の散策とともに楽しんではいかがでしょう?