おこづかいを貯めて買った思い出の一冊、大人になっても忘れられない特別の作品…ありませんか?ここは世界中から毎回50万人を超える人々が集う「コミックマーケット(コミケ)」創立者のひとり、コミケの父、マンガ評論家の米沢嘉博氏が残した貴重なマンガなどを収蔵する明治大学米沢嘉博記念図書館。その溢れる魅力は止まりません!
いまやマンガ、アニメは世界に誇る日本の文化。けれど米沢さんが明大生だった1970年代は、マンガを読んでいると叱られてしまう時代だったんです!そんな厳しい中で「本を捨てません!」と米沢さんは宣言。彼が生涯をかけて守ったマンガや同人誌、サブカルチャーに関する14万冊以上の図書資料をもとにつくられたのが明治大学米沢嘉博記念図書館です。
大衆文化関連の評論も行なった米沢さんを支えた書籍や情報誌。懐かしい雑誌もあれば、子どもにはちょっと…というものも。
コミケの父と称される米沢嘉博さんとは、どんな方だったのでしょうか?幼少期からマンガに親しみ、明治大学在学中から批評集団「迷宮」(コミケやMGMの母体となったグループ)に参加。1975年第1回コミックマーケット創立メンバーのひとり、また1980年から2006年までコミックマーケット準備会代表を務め、現在の同人誌即売会コミックマーケットの理念をカタチづくりました。また日本マンガ学会の設立にも参画し、理事にも就任しています。
第9階ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に展示された「コミックマーケットの箱庭」。よ〜く見てください!一つひとつにイラストが描かれています。
マンガだけではない、米沢さんの関心領域は驚くほど広い。音楽、映画、SF、古書、エロ・グロ・ナンセンス…サブカルチャー全般です。世間に認められたマンガ評論家だけではなく、文化史評論家としても多様なジャンルに進出して活躍、さらにその活動を海外へと広げていきました。ただ、残念なことに53歳という若さで、病気によりお亡くなりになってしまったのです。
和本をはじめとした古書のコレクション。妖怪・怪奇ものから性風俗まで幅広いジャンルを網羅、特徴的なものが多い。
米沢さんが「いずれ読めなくなってしまう」という危機感から、特にこだわって収集したのが散逸しそうなもの。読み終わったらポイッと捨てられてしまう、そう雑誌です。中でもマンガ雑誌は厚くてかさばるからスペース的にもたくさんの保存できません。しかし、米沢嘉博記念図書館には読み捨てられてしまうようなマンガ雑誌が約4万冊も揃っています!
当時のマンガ雑誌は限定イラストやマスコット、キャッチコピー、さらに芸能やライフスタイルの情報などマンガ以外の情報も掲載しており、総合雑誌の側面がありました。ところがマンガ単行本に編集されると、その多彩な情報は失われてしまう。価値がないと思われていたマンガ雑誌ですが、実は発売当時の社会・流行を知る貴重な資料だったのです。
懐かしい一冊が!雑誌や単行本など約4500冊が並ぶ2階の閲覧室(明大生・教職員以外は会員登録が必要)。こちらで書庫資料の請求をすると、さらに約7万冊が閲覧可能に。また各回のコミケの見本誌(約5万冊)を一時預かり、閲覧もできます。
3〜5階は閉架式書庫。マンガ雑誌・単行本、同人誌、サブカルチャー誌など収蔵書はインターネットでも検索ができるので、ぜひご利用を。
米沢嘉博記念図書館が多くのマンガファンから熱〜い視線を注がれているのが、年3回開催される企画展です。なかには、ほとゼロでも紹介した「りぼんのふろく展」のように全国を巡回する大型企画もあります。企画展ではテーマにあったトークイベントが開催され、作家のナマの声や担当編集者の裏話に会場がとても盛り上がります。
米沢嘉博記念図書館全景。米沢さんはコレクションのために家を3軒持ったとか、ここは米沢さんにとって理想のカタチだったのかもしれません。1階の展示室の観覧は無料、企画展やイベントはホームページで確認を。
マンガとサブカルチャーに精通した米沢さんのコレクションは、今後ますます評価が高まる、未来に託す価値あるもの。おこづかいで買った思い出の一冊、バイブルとなった作品、そして忘れられないヒーローやヒロイン…明治大学米沢嘉博記念図書館で再会してみませんか?