探せばアレコレと見つかる、大学発の商品たち。これら商品が生まれる背景はいろいろだが、「まちおこし」は、その理由の大きな一つといっていい。京都産業大学が京都市左京区静市静原町とともに開発したオリジナル商品たちも、まさにそんな目的から生まれた商品たちになる。今回はこれら商品のレビューを、開発秘話とともに紹介しよう。
京都産黄大豆“オオツル”を静原ブランドに
今回レビューする商品は「神山クッキー」「神山まどれーぬ」「神山コーヒー」の3点になる。静原なのに神山(こうやま)?と思われる人がいるかもしれないので、あらかじめ説明しておくと、神山は京産大のメインキャンパスのあるエリアにある、山の名前。この大学のシンボルともいえる天文台は「神山天文台」。京産大にとって「神山」は、自分たちの大学の別名のようなものなのだ。ちなみに余談ではあるが、関西だと大阪大学と待兼山の関係もこれに似ている。
話しが少しそれてしまった…。今回、レビューする3商品には、名前以外にも共通点がある。それは、静原で栽培された農作物を使っていることだ。とくに「神山クッキー」と「神山コーヒー」の“ソイブレンド”に使われている京都産黄大豆“オオツル”は、「静原ブランド」として売り出そうと関係者が力を入れる注目の農作物になる。
なぜ黄大豆なのか?だが、黄大豆は、市場価値の高い黒大豆に押されて京都市内ではほぼ生産されなくなってしまっていた。そんななか、みそや豆腐の生産者が地産地消をめざして、地元産黄大豆の栽培をはじめた。この情報をキャッチした学生たちが、ぜひ自分たちもと地域住民や大豆問屋の力を借りながら、静原で黄大豆の一種である“オオツル”の栽培をはじめたのだ。
ちなみに、つくっているのは「みらい発信局おむすび~静原応援隊」という、学生の有志団体になる。この学生団体が、静原のまちおこしに関わりはじめたのは2015年からで、黄大豆を使用したクッキーとコーヒーが誕生したのは2018年4月。この間、いろいろなトライ&エラーがあり、これら商品に結実したのだろう。開発の物語を、ぼんやりと想像しながら食べると、いっそう味わい深く感じられそうだ。
個性的でおいしい神山スィーツ&コーヒー
では、いよいよ、実食レビューにうつる。まずは、「神山クッキー」。こちらはプレーン、ショコラ、キャラメルの3種類の味が発売されている。どれもザクザクとした食感のなかに、カリカリとした黄大豆の食感があわさり、歯ざわりがおもしろい。また、よくローストされた黄大豆の香ばしさが味覚のうえでも、いいアクセントになっている。個人的には、大豆が強く感じられるプレーンが好みの味だった。
次は「神山まどれーぬ」。こちらは一見、普通のマドレーヌだが、生地を割ってみると、なかからたくさんの静原産の小豆があらわれる。やや固めに炊きあげられた小豆は、食べ応えがあり、一つ食べるだけでかなりの満足感。また、生地には京都特産の白みそを隠し味に使われており、食べていると、ふっと白みその香りが鼻へ抜ける。京都らしさを感じさせる、見事な演出である。
これらスイーツとぜひ合わせて欲しいのが、「神山コーヒー」の“ソイブレンド”。コーヒーカップを口もとに近づけると、コーヒーの香りのなかに、大豆の香りがかすかにする。飲むと、これまたかすかに大豆の味がする。個性的ではあるが、奇をてらった味ではなく、万人受けする味だ。言わずもがなかもしれないが、「神山クッキー」「神山まどれーぬ」との相性もばっちりだった。
和と洋がうまく混ざり合った「神山まどれーぬ」もさることながら、黄大豆をクッキーやコーヒーに利用する発想がおもしろい。とくにクッキーに大豆を使う場合、おからクッキーがポピュラーだが、あえて砕いた大豆をアーモンドやピーナッツのように味のアクセントに使っているのが印象的だった。
これら三品は静原のまちおこしという商品開発の背景も興味深いが、単純に商品としても魅力的である。京産大に立ちよった際に、おみやげに購入してみてはいかがだろう。ちなみに同大学100%出資会社(株)サギタリウス企画のウェブサイトでは通信販売もしているゾ!