セガゲームスを代表するキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホック」と、京都を中心に展開する和装ブランド「SOU・SOU」がコラボした足袋と足袋下が2018年8月23日に発売された。プロデュースを行ったのは、立命館大学の映像学部だ。セガとの産学連携プロジェクトの一環として、学生たちが企画を提案し、商品のプロモーションを行った。
今回、筆者はほとゼロ編集部のインターンシップに参加し、取材を担当させてもらった。取材に応じてくれたのは、企画などに携わった学生と中村彰憲教授。セガと一緒にゼロから商品を作り上げた学生たちは、何を学んだのだろう。
プロジェクトは同学部の授業「プロデュース実習Ⅱ」のなかで2017年9月末からスタートした。「ソニックまたはぷよぷよを使って京都をアピール」というテーマを元に、学生がグループごとに企画を考え、コンペ形式で発表。セガの社員たちの審査を経て、今回のコラボレーション足袋の企画が採用され、販売が決定した。
今回の企画を考えたグループのリーダーである映像学部の西口司さん(4年生)は、京都に根付く和の文化に着目。ソニックが走るキャラクターであることと、グループ内で案の一つとして出ていた地下足袋からコラボ足袋の販売を考案。京都にあるテキスタイルブランドで、過去にもキャラクターとのコラボ商品を販売した実績のあるSOU・SOUに商品化の提案をした。
デザインは同ブランドが担当。赤を基調に、ソニックのイラストが大胆にあしらわれており、街中で目を引くこと間違いなし。キャラクターの持つ世界観を大切にしながらも、“和”の要素と調和したデザインはさすがSOU・SOUといったところだ。
「高砂足袋 いろは底 SONIC×SOU・SOU」8640円(税込)と「足袋下(普通丈)SONIC×SOU・SOU」594円(税込)
商品のプロモーションは「企業連携プログラム」という授業で今年4月から開始した。受講した学生は与えられた予算に基づいて考えた企画を提案。コンペでの審査を経て、SNS班とPV班に分かれてプロモーションすることが決まった。
SNS班は、Twitterでソニックのぬいぐるみが京都の観光名所を旅する様子を発信。商品の具体的な情報は伏せつつ、“セガと立命館が何かおもしろいことをやっている”と思わせる仕掛けをつくった。
ストーリー仕立てになっており、旅の中でソニックが、映像学部の公式キャラクター「リッツエイゾウ(呼称:エイゾウくん)」とSOU・SOUのマスコットキャラクターの「たびすけ」と出会うというもの。有名な観光名所だけでなく、京都の学生しか知らないような飲食店やスポットも紹介することで、学生らしさを意識してつくられている。彼らの様子を追うことで、私も京都の街を旅しているような感覚になった。
当初はインスタグラムでの情報発信も提案していたが、購入層を意識した方が良いのでは?とセガから指摘を受けたという。学生はどちらがより多くソニックについて話題に上がっているか調べた結果、Twitterの方がより多く話題にされていることが分かったそうだ。
Twitterの運営を担当した長谷川涼香さん(3年生)は、「ただ自分たちがやりたい企画を提案するだけでなく、ターゲットを絞るなど、宣伝効果の根拠となるデータを集めることが重要だと学んだ」と語る。
(https://twitter.com/rittsueizokun)
一方、PV班は、立命館大学のミス・キャンパスを起用したプロモーション動画を制作し、コラボ足袋発売のリリースを行う前日にYouTubeで公開。撮影には同大を拠点に活動する映像制作サークル「GREENS」に協力を依頼した。
撮影はスケジュールの調整が難しく、実際に公開するまで1週間ほどで編集作業を行ったという。しかし、出来上がった動画は短期間で制作したとは思えない仕上がりで、コラボ足袋もスタイリッシュに見えるよう演出が工夫されていた。PV班の長尾亮虎(りょうご)さん(3年生)は、「良い意味で学生が作った感じに見えないところが気に入っている」と話した。
SONIC×SOU・SOU コラボレーション足袋 プロモーションムービー ショートバージョン
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Twitter担当の長谷川涼香さん(写真左)、映像制作を担当した長尾亮虎(りょうご)さん(写真中央)、企画を考案したグループのリーダー西口司さん(写真右)
実は、日本よりも海外で人気が高いソニック。実際にTwitterやYouTubeでも海外から多くのコメントが寄せられた。中でもYouTubeでは8割以上が海外からのコメントだったというから驚きだ。
そして迎えた発売日。SOU・SOUのネットショップでは一般販売に先駆けて予約販売を実施したが、早くも完売。一般販売を開始した店舗でも売り切れてしまい、次回の入荷は9月下旬頃になるという。
1年前から企画をスタートし、SNSでの話題作りからPVによる認知度アップまで、真剣に取り組んだ学生たちの思いが実を結んだ。学生のがんばりはもちろんのこと、セガ側が何度も学生と打ち合わせを繰り返し、熱意をもってアドバイスを重ねた結果が売れ行きにつながった。
同プロジェクトを終えて、企画を考案した西口さんは「授業とはいえ、学生によって意欲にばらつきがあった。その中でも、グループ間で役割をもつことでグループをまとめられたと思う。皆を引っ張って一つのことを成し遂げるしんどさ、達成感が味わえた」と活動を振り返る。
「プロデュース実習Ⅱ」では、過去にも企業と連携した取り組みを行ってきた。今回のコラボは、実はこの授業を経験し、現在はセガの宣伝部にいる卒業生からの提案がきっかけだという。
プロジェクトを担当した映像学部の中村彰憲教授は「(授業を終えて)学生たちは圧倒的に成長したと思う。企画はアイデアが秀逸というだけではなく、時と場合にマッチしたものが選ばれることを学んだ学生も多いのではないか。今回のように受講した学生が社会人となり、企画を提案する側としてまた戻ってきて来て欲しい」と期待を寄せた。
企画を成功させた学生の姿からは、乗り越えてきたことや、経験を通して学んだことの大きさを感じた。
プロジェクトを担当した映像学部の中村彰憲教授
先生が手にしているのが「エイゾウくん」。すでに次のプロジェクトが動き出している