自分にとって最高の未来は、自分で創り出していくしかない。誰でもない自分の手で、自分の人生をデザインするのだ。頭ではわかっていても、いざ取りかかろうとすると、どうもとらえどころがなく、どのように考えたらいいのかわからない。そこで注目したいのが、同志社女子大学の日下菜穂子教授が開発した、ライフデザインの思考を補助してくれる道具「ワンダフル・キューブ」だ。
人生を集約する道具
一見するとかわいらしい普通の箱だが・・・!?
従来の心理学が弱さの克服に焦点を当てていたのに対して、人の持つ強みに注目して人生を充実させることに目を向けた研究と実践を行うのがポジティブ心理学だ。
心理学者で臨床心理士でもある日下先生は、ポジティブ心理学に基づいたライフデザイニングプログラムを開発。自分の考え方や感じ方を見つめ、言葉や身体で表現することを通して、本当に自分の求めている目標を見つけ実行に導くワークショップを行っている。
大学でのキャリアデザインの授業はもちろん、京田辺市との連携で取り組む高齢者の心の健康づくり、生きがい創造プログラムや、高齢受刑者の社会再参加プログラムなどでも活用してきた。
キャリアデザインの授業の様子
これまでワークショップでは、テキストを使いながら紙に書き込む形のワークをやっていたが、紙の上だけだとどうも会話が弾まない。もっとよい教材があれば、という思いが、「ワンダフル・キューブ」開発の原点になった。
高齢者も学生も使えるライフデザイン支援の教材開発を目標に、教材製作会社サティスタとの連携がスタート。学生と一緒にさまざまな試作品を作り、大学のキャリアデザインの授業や週に1度の高齢者セミナーで試しながら、ブラッシュアップを続けた。
開発までの道のりについて話す日下教授
学生たちは自分たちの考えが次々と形になるのがうれしくてどんどんアイデアを出し、プロジェクトはかなり活性化したという。
さらにデザインユニット・un labo.(アンラボ)の参加でアイデアとデザインが結びつき、原型を考え始めた頃から約2年後の2014年に「ワンダフル・キューブ」が完成。2016年には特許を取得した。心理学分野の「考える道具」というのはかなり珍しく、申請は想像以上にすんなり通ったという。
「ライフデザインニングで未来を考えるには、未来と同じ分だけ過去を振り返らないといけない。過去に戻り、過去の自分が何を考えて生きていたか、今は何を大切に生きているか、今後は何を大切に生きていきたいか。過去・現在・未来という時間の広がりと、自分・社会・運命というような空間の広がりとをクロスさせた立体が『ワンダフル・キューブ』なのです」と日下先生は話す。
見た目はかわいい、実は深い
「ワンダフル・キューブ」の構造は、ゴム製のスーパーボール、それを包むガチャガチャと同じ透明カプセル、さらにそれを包む立方体の透明ケース、それらを6面に大きな穴と小さな穴のあいた紙の立方体が包むというもの。
ワンダフル・キューブのキット
組み立てると手のひらサイズの箱に
紙の立方体には、カードが6枚収納できる。小さな穴に赤い糸を通していろんなところにかけることができ、最も外側には青色のカードを1枚、同じ糸で一緒に通してある。パッとみるとかわいいサイコロみたいで、雑貨屋さんに置いてありそうな印象だ。
ライフデザインニングの複数のワークを1つのキューブに集約するというイメージで、ワークの記録ツールという側面もある。せっかくワークショップでいろいろ自分を見つめ直しても、そのままにしておいたら忘れてしまうだけだが、キューブとして残しておけば後で振り返って何度でも見直せる。
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