千代田区…と聞いて連想するのは、皇居・公官庁だったり、オフィス街だったり、人々の生活と切り離されたイメージであることが多いはず。暮らしや住まいの印象薄い千代田区ですが、古くから住まいを構える世帯はもちろん、新たに転入する人など、区内で生活を営む区民も多くいます。そんな区民に魅力ある街情報を発信するフリーペーパーを明治大学が発行しています。
千代田区在住者向けフリーペーパー『Chiyomo』
明治大学商学部小川ゼミ生が制作するフリーペーパー『Chiyomo』は、千代田区の活性化をめざして年1回発行してきたもので、今年で10年目を迎えます。例年、千代田区の助成を受けながら、区が行っている区民対象の事業を広報してきました。
最新となる2016年8月発行号は、購入スタンプを集めると割引が受けられるスタンプカード事業の支援ツールとして制作。より多くの区民に加盟店を利用してもらうため、加盟店の魅力を紹介するほか、スタンプの使い方を解説しています。
フリーペーパープロジェクト10年目の成長
「これまではスタンプ事業の他に、区が主催する別事業も紹介していましたが、今年からスタンプカード事業を専門的に解説することになりました。そのため、今年はどうやったらスタンプカードを使ってもらえるかに焦点を絞り、編集方針を立てました」と話すのは編集長を務めた3年生の渡部さん。
発行10年目の節目を迎えた今年、初めてスタンプカード事業のみに特化することになり、“より一層の利用促進”という新たな目標を設定したそうです。
編集方針のもと、「加盟店で購入するとお得なスタンプが貯まる」システムをしっかり読者に理解してもらうため、今年の紙面では加盟店紹介のページに「これがイチ押し」という新コーナーを掲載。加盟店の商品を丁寧に紹介しながらも、購入することでいくつスタンプカードを受領できるか、イラストを交えてわかりやすく解説できるよう努めました。
「商品のPRだけでなく、スタンプカードの使い方が伝わりやすくなったと、お店の方に喜んでいただきました」と副編集長の小松原さんが今年の手応えを話してくれました。
さらに、30代~40代の子育て世代の転入が多いという調査結果に基づき、区内のレジャースポットや、子育て支援施設を取り上げる特集も企画することで、読者に響く紙面づくりをさらにブラッシュアップさせることにも成功したそうです。
上段、左上が自主制作した大学周辺マップ
編集長の渡辺さん(右)と佐藤さん(左)
実制作期間4カ月で、600店舗の営業
『Chiyomo』の特色の一つともいえるのは、圧倒的なボリューム。これまで学生がつくったフリーペーパーを色々見てきましたが、その中でもトップクラスのA4判68ページ! 実際の作業期間は約4ヵ月で、その間にすべての掲載店舗を学生が訪れて取材し、原稿を作成したというから驚きです。制作現場を知る一人として、学生さんの頑張りに心の中で拍手を送っていました。
加盟店600店舗を学生スタッフに振り分け、手分けてして電話営業を行ったとのこと。営業リーダーを担当した3年生の山水さんは「新規の電話営業では全く信用されず…。直接、お店に行ってようやく信用してもらうことができました」と、営業の難しさを語ってくれました。
また、4年生の佐藤さんは『Chiyomo』の活動を振り返り「辛いことも多かった営業活動でしたが、学生と全く接点がなかったお店の方々に出会い、喜んでもらえることがうれしかったです」と話してくれました。
副編集長の小松原さん(右)と山水さん(左)
大学と地域をつなぎ、新たな活動を発信したい
「『Chiyomo』そのものの活動を継続していくことはもちろん、今後はこのツールを介して、大学と地域をつなぐ新たな活動が生まれてくれることを期待しています」とゼミを担当する小川教授。
小川教授は10年前、ゼミ生が自主的につくった大学周辺マップの時代から、今年発刊した最新号まで、このフリーペーパープロジェクトを見守り続けてきました。
毎号、発行後にさまざまな反響があるそうですが、今年は、新規特集ページに掲載した保育施設から子育てイベントへの参加を依頼されるなど新たな効果があったとか。
「商学部の専門を活かしたワークショップを考案し、イベントを企画させていただきました。接点をもつことで、新たな可能性へと広がる。こうした“つながり”が増えていくと良いですね」と、教授は来年以降の『Chiyomo』の成長を見据えています。
中央が小川教授