ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

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  • date:2025.2.4
  • author:谷脇栗太

キャンパスライフは波乱万丈!?大阪大学発・リアルな大学生活を追体験するボードゲーム「DAIGAKU」で遊んでみた

取材で大学生と話す機会がままあるのだが、最近の学生さんたちは勉強に就活にバイトに課外活動にととにかく忙しそうだ。自分の学生時代を振り返ると遊びとバイトの記憶しか残っていないけど、勉強や就活も少しぐらいはしていたはずで、今の学生さんほどではないにしてもせわしない日々を送っていたのだろう。あの頃のよくわからない充実感と少しの後ろめたさを心のどこかに抱えつつ、今日も元気に社会人をやっている。

 

さて、本日紹介するのは、そんなキャンパスライフをだれでも体験できる「DAIGAKU ~いばら色のキャンパスライフ~」。大阪大学の学生たちと教員が中心となって開発したボードゲーム型教材だという。さっそく編集部で遊んでみた。

「DAIGAKU いばら色のキャンパスライフ」のパッケージ

個性豊かな大学生になりきって、波乱万丈のキャンパスライフを体験

ゲームの目的は、各プレイヤーが大学生になりきって4年間の学生生活を充実させること。いろいろな活動を通して自分で決めた目標の達成をめざしたり、予期せぬハプニングに振り回されたりしながら、「学識」「情報」「リソース」「人間性」という4つの資本を集めていくことになる。

 

最初にプレイヤーのキャラクター設定を決める。キャラクターカードを引くとそれぞれ「奨学生」、「下宿生」、「上昇志向」、「破天荒」となった。これから同級生として4年間をともに過ごす4人だが、奨学生なら奨学金を借りてスタートする(あとで返さなくてはならない)など、キャラによって初期条件が異なっている。

 

次に、それぞれが学生生活で大切にしたいことをふたつ選ぶ。たとえば、「上昇志向」さんは経験を積んで起業したいということで、留学/旅行就活/起業を選んでいた(すっかりキャラが入っている)。これらの目標を達成するために、必要な資本を集めてゆくという流れだ。

入学準備は整った。4年後、果たして4人はどうなっているのだろうか……?

学生時代の友人たちの顔が脳裏に浮かぶ

目標を設定する「いそしみマス」。最初はキャラクターごとにひとつ指定されていて、あとのひとつを自由に選ぶ。各年度の節目でふたつのうちひとつを変更することもできる。勉学、就活、サークル、バイトなどとともに「のんびり」や「ソロ活/趣味」という選択肢があることに良い意味で時代を感じる

 

人生ゲームのようにルーレットを回してコマを進めるわけではない。授業、バイト、趣味、ボランティア……といった生活マスの中から、自分がやりたいと思った行動を選んでいく。バイトをすればお金が手に入り、授業に出れば時間と精神を消耗するが学識が手に入る、という具合だ。どうやらバイトや課外活動に明け暮れるプレイヤーが多いようだが、勉強の方は大丈夫なのだろうか。

一年目では、オレンジ色の枠の中から2つの行動を選んで「ペルソナ」と呼ばれる駒を置き、資本をゲットする。あえて授業に出ない自由もあるが、その選択が後々響いてくることに

人間関係のトラブルに感染症……さまざまなハプニングが降りかかる

そんなこんなでそれぞれが2回行動を選ぶと1年目が終わり、節目を迎える。ここで学費を払ったり目標を見直したりといろいろあるのだが、厄介なのがハプニングカードを必ず引かなければならないことだ。ハプニングカードは「日常」と「波乱」に分かれていて、「陽キャと疎遠になる」という日常カードに苦笑いさせられたかと思えば、社会を揺るがす出来事も起こる。

 

下宿生さんが引いたのは、波乱カード「感染症の蔓延」。なんと2年生では全員の行動ターンが1回少なくなることに。つまり、知識もお金も経験も得られるチャンスが半分になってしまうということで、影響の大きさにどよめきが起こる。コロナ禍で行動制限に直面した学生さんたちに話を聞くことは何度かあったが、こうして追体験することになるとは……。

 

他にも、「大学デビューで空回り」「カルトの勧誘」「住宅トラブル」などなど実際に学生の身に起こりがちなハプニングの数々がリアリティを与えている。これから大学生活を迎える人にとっては、ゲームを通してこうした落とし穴を知っておくことが備えにもなるだろう。

「陽キャと疎遠に」。1年生にありがちなモヤッと感

まだ記憶に新しいコロナ禍の行動制限を反映した「感染症の蔓延」カード。QRコードを読み取ると詳しい解説が読めるようになっている

 

2年目、3年目と進むにつれて選べる行動が増え、だんだんと資本も貯まってくる。一方、学費が払えなかったりキャパシティを超えるハプニングに見舞われたりすると、ペナルティとして心に「ささくれ」が溜まってくる。こいつを消すことはできないため、ゲーム終了まで増えることはあっても減ることはない。

「ささくれ」、絶妙な表現だ

よくよく見れば「卒業要件」が書いてある

 

ゲーム終盤の4年目。プレイヤーシートに書かれた「卒業要件(学識が5個位上必要)」の存在に気づき、バイトや趣味に打ち込んでいたプレイヤーたちが慌てはじめる。なんだか懐かしい光景だ。要件に満たなくてもゲームオーバーになるわけではないが、ささくれが残ってしまう。それも人生である。

それぞれの4年間を語り合う

あっという間に4年間が過ぎ去っていった。得点計算の前に「ポートフォリオ」を発表する時間だ。自身のキャラクターやこれまでに起こったハプニングを振り返って、ひとつのストーリーとしてそれぞれが語り、筋の通ったストーリーを発表した人にはボーナスポイントが入る。せっかくなので、それぞれのストーリーを紹介しよう。読者のみなさんが最も共感できたのはどの学生だろうか?

 

下宿生さんの学生生活は感染症の蔓延で幕を開けた。バイトを諦めざるを得ず、資格取得という目標を定めて打ち込んできたが、外出自粛中にも下宿の隣人の騒音に悩まされ、スマホ依存に陥るという負のスパイラルに。最後は指導教官の異動という大きめの波乱に見舞われ、卒業要件には届かなかった。

 

奨学金を借りて学生生活をスタートした奨学生さんは、突然の不況や保護者の収入減によって奨学金をさらに追加することに。返還のためにバイト中心の生活になったが、それが良いモチベーションにもつながったからか、後半は徐々に上向き、就活でまずまずの結果を残すことができた。

 

破天荒さんは趣味の音楽に打ち込んだ。カルトの勧誘を受けたり自己啓発書にハマったりと少々危うい学生生活を送り、就活にも積極的になれない中、留学生との交流を機に、音楽修行のために渡米を決意。学識は卒業要件に満たなかったが、語り口はどこか晴れやかだった。

 

入学当初から起業を目標にしていた上昇志向さんは、入学早々クレカを作って活発に活動。それゆえ周りから浮いてしまったり、飲み会でアルハラを受けたりと苦労も経験するが、持ち前の前向きさで学業でも結果を残して企業との共同研究にこぎつけ、夢への一歩を踏み出した。

 

ポートフォリオの評価が終わると、最終的に得られた資本とささくれの数、達成できた目標を「充実度」のポイントに換算して勝敗を決める。学識をためてポートフォリオで高い評価を得た上昇志向さんと、バイトに打ち込み奨学金を完済した奨学生さんが8.5点の同点で勝利となった。あとの二人も、勝敗以上の貴重な経験を得たはずだ。

お金で苦労する人、周囲に振り回される人、孤独に陥りがちな人と、大学生にはそれぞれの困難がある。人生の縮図だ

 

大学で過ごす数年間は、多くの人にとってはさまざまな選択肢が一気に広がる時期だ。できることの可能性は限りないけれど、時間やお金や体力は限られているし、うまいやり方を誰かが教えてくれるわけでもない。目標を立ててバランスよく舵取りをしていく難しさを改めて実感した。自分が学生のときにこんなゲームがあればよかったのに……などと思いつつ、大人どうしで学生時代の思い出を語り合いながらわいわい遊ぶにも楽しいゲームだった。

 

公式サイト(https://www.daigaku.info/)では、ハプニングについて大学教員や現役大学生が解説する「まなびの芽」や、各種ダウンロードコンテンツも公開されているので、チェックしてみてはいかがだろうか。

 

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