大阪芸術大学で発刊されている『我樂多文庫』。この雑誌は文芸学科長谷川郁夫ゼミの学生たちが年に1冊、2~3月に発刊しており、これまでに8冊が発刊されている。ほとゼロでは『我樂多文庫 第九集』の発刊を追いかけて取材させてもらっている。今回はその第2弾として、制作状況とともに、学生の声、担当をつとめる長谷川先生(大阪芸術大学 文芸学科学科長)の声をきいてきた。(第1弾はこちら)
発刊まであと5ヶ月
『我樂多文庫 第九集』の発刊は2017年3月を予定している。取材させていただいた日は10月初旬、発刊まであと5ヶ月というタイミングだ。
ゼミでは学生一人につき1本の記事を担当し、校正作業は全員で行う。第九集では政治や社会情勢といったテーマの記事が計15本掲載される予定だ。取材に行った日の時点で12本の原稿があがってきており、現在、長谷川先生と学生たちで校正作業中だそう。取材スケジュールの兼ね合いもあり、例年より少し遅れ気味で進んでいるようで、残りの3本も急ピッチで作業が進められている。
校正作業が進められている教室はしんと静まり、ペンの走る音だけが響いていた
前回、取材した時よりもピリピリとした空気感はそのためかと納得…。あと5ヶ月、長いようで短い時間を使って、より良い物に仕上げようとする学生たちを見て発刊がさらに楽しみになった。
記事には自信あり
前述の通り、みんな忙しそうなのだが合間を縫って『我樂多文庫』の制作に携わる学生二名に取材に応じてもらった。
岩本菜桜(なお)さんは現在“ヘイトスピーチ”についての記事を担当している。
「大学の授業を通して、アパルトヘイトや部落民などの差別問題について学ぶ機会があって、そのときにヘイトスピーチについても簡単に学びました。そんななかで、ゼミで社会的問題をテーマにするとなったとき、ヘイトスピーチをもっと詳しく調べて書いてみたいと思ったんです。そして、ヘイトスピーチの反対運動をしている中沢 けい先生(小説家・同大学文芸学科客員教授)に取材させていただいて原稿を書きました。普段聞き慣れないような言葉がたくさんでてきて、まだまだ校正が必要なんですけどね。ただ、難しい問題だからこそやりがいを感じています。」
山口啓二郎さんは“マイナンバー”についての記事を担当。
「僕がマイナンバーについて書きたいなと思ったのは、バイト先でマイナンバーの提出を求められたことがきっかけでした。重大な個人情報とされているマイナンバーをどうして提出しなくちゃいけないのかなと。まず、マイナンバーってなんだろうと考えるようになりました。そこで大槻 慎二先生(編集者・同大学文芸学科講師)に協力していただいてマイナンバーについて原稿を執筆しました。メリットやデメリット、調べてみればみるほど分かりにくいもので、誌面では他学科の友人に協力してもらって、イラストを盛り込んだ分かりやすいものにしようと考えています。」
右:岩本菜桜さん 左:山口啓二郎さん
二人とも自分の担当記事に対して深い思いと同時に、自分の記事への自信もにじませていた。
今が燃えはじめ
続いて担当教員の長谷川 郁夫先生にも話を伺った。
長谷川 郁夫先生(大阪芸術大学 文芸学科学科長)
「政治に興味の薄い芸大生にも政治が分かる本を、と制作をはじめた今回の『我樂多文庫』。今やっと燃え始めたところ。例年より遅いスタートになってしまったかもしれないけど、その分内容の濃いものができると思ってる。
原稿量が多い学生だと、3~40枚は書いてるから、校正するのも大変だよ(笑)」
今回のように、政治的なテーマを扱うと学生それぞれの思想が見えるのではと聞くと「それはもちろんそう。でも、思想の統一はしていないよ。学生だからこその声が聞ける誌面になる」とのこと。
ゼミで制作する『我樂多文庫』だからこそ、学生の声をそのまま掲載することができるのだ。みなさんも手にとっていただく際にはぜひそのあたりも注目して読んでほしい。