リニューアルにより2015年度の来園者数が100万人を突破した京都市動物園。そのニュースを聞き「そういえば、もう何年も動物園に行ってないな」と思った私。童心に帰って動物と触れ合うのも悪くない…とリサーチしたところ、何やら子どもたちに人気の新エリアがあることが判明した。
動物園で稲刈り、ホタル鑑賞、ザリガニ釣り?!
2009年からの7年がかりのリニューアルで、動物の展示を旭川動物園のように生態環境を再現する方式に転換した京都市動物園。園内を歩いていても、頭上に設けられた通路を悠々と歩く猛獣、木登りを繰り返すレッサーパンダ、ラオスからやってきた4頭のゾウへの餌やりなど、大人も子どももワクワクする動物との距離が近い動物園に生まれ変わっていることを実感できた。
さらに京都市動物園職員の和田さんによれば、体験型環境教育エリア『京都の森』がリピーター獲得にひと役買っているという。ここは京都の里山の自然環境を再現したエリアで、棚田を中心に琵琶湖疏水から引いた小川が流れ噴水池へと注ぎ、ホンドキツネ、クマタカなど京都に生息する30種以上の動物を展示する舎が揃っている。
実はこのエリアの開発に準備段階から、とある大学のゼミ生たちが授業の一環として関わっているという。それが、京都精華大学人文学部・板倉ゼミの学生たちだ。
彼らは京都各地で里山暮らしなどの体験を通じて研究活動を行ってきた環境フィールドワーカー。その経験を『京都の森』の水質検査や棚田・屋上庭園作りに役立てただけでなく、動物園内での子ども向けワークショップにも協力。棚田での田植え・稲刈り、生き物調査、噴水池でのザリガニ釣りやアシ笛作り、イチモンジタナゴの定点観測、ゾウのウンチから作るハガキなど、バラエティ豊かな内容を月3〜4回ペースで開催しているという。
棚田では地元小学生を招いて田植え・稲刈りを実施。今年6月には京都ほたるネットワークの協力でホタルの成虫を放つ予定で、ホタルの子孫がずっと暮らしてくれるよう、幼虫の餌となる貝・カワニナの育成も京都精華大学の学生により進められている。
動物園で環境教育をしたくても、職員だけでは人出不足。学生さんが担い手となってくれるのはありがたいことなんですよ。学生側は動物園でフィールドワークができる。我々は学生の協力で来園者にワークショップを提供できる。互いにウインウインのこの関係、これからも続けていきたいですね。(京都市動物園『生き物・学び・研究センター』課長補佐 和田晴太郎さん)
京都では社寺が保護する森林が動植物を守ってきました。そんな京都独自の自然環境を研究してきた我々と、京都固有の動植物を見せるゾーンを作りたいという京都市動物園の想いが繋がり、今回のプロジェクトが実現しました。『京都の森』には、学生が保護して介護・餌やりした野生動物も展示されています。(京都精華大学人文学部 総合人文学科 環境未来コース 教授 板倉豊先生)
噴水池に出没するタカハッシーに子どもたちは興味津々
学生たちの活躍はワークショップだけに留まらない。週1回、京都市動物園を訪れ職員に混じって『京都の森』の環境を進化させ続けているのだ。中でも2年連続で『京都の森』に関わり、主に噴水池で活動している高橋君は、京都在来種の魚・イチモンジタナゴの繁殖プロジェクトに関わり、産卵に必要な貝の養殖に取り組む。噴水池の中を胸まで水に浸かって作業している姿は、まるでネッシーならぬタカハッシー。他の学生とともに水辺の生き物観察のワークショップも行っており、一部の子どもたちからはゾウ以上の注目を集めている。
「京都の人は琵琶湖疎水との関わりが深いですよね。その水で育つ在来種にどんな動植物がいるのかを、京都の森を通じて知っていただければ。またワークショップをきっかけに何度も来園して、京都の森の成長を感じてもらえれば嬉しいです」
と想いを語る彼を中心に、2015年度は16名の京都精華大学生が『京都の森』に関わった。この協力体制は2016年度以降も継続予定。学生の協力で、京都市動物園がさらに楽しくなりそうだ。
学生たちが京都市動物園の職員たちと取り組む地道な水質調査や水質改善活動のおかげで、園内の噴水池にはイチモンジタナゴが卵を産みつける二枚貝が着実に成長している。
『京都の森』プロジェクトに関わるメンバーたち。左から京都精華大の高橋君、吉田君、西村さん、板倉先生、奥田さん、京都市動物園の和田さん。「外来種駆除を目的に噴水池でザリガニ釣りワークショップをしたときは、子どもたちが大喜びでしたね(吉田君)」「私は動物園の屋上庭園を担当。また京都の森で育てたお米を炊いて食べたのが思い出深いです(西村さん)」「ワークショップでの子どもたちとの触れ合いが楽しく、事前準備や勉強も苦になりませんでした。草食動物の糞に含まれる食物繊維から紙を作るワークショップは、特に子どもたちの反応がよかったです(奥田さん)」