ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.11.17
  • author:三浦彩

京都産業大学内に「PCR検査センター」開設! コロナ禍のキャンパスに安全・安心を届ける、大学の新たな取り組みを学長に聞いてみた。

コロナ禍による緊急事態宣言を経て、秋学期から対面授業を再開する大学が増えたと同時に、クラスター(感染者集団)の発生も相次ぎました。そんななか、京都産業大学は、学内に「PCR検査センター」を設置するといち早く決め、10月20日に運用を開始。医学部をもたない大学としては異例のことです。その経緯や概要を、黒坂光学長のお話を交えてご紹介します。

無症状者による感染拡大を防止し、安全・安心なキャンパスライフをめざす

緊急事態宣言下にあった今春、この先キャンパス内の安全・安心をどう保つかが、各大学の大きな課題となっていました。京都産業大学でPCR検査センター開設の計画が立ち上がったのは、ちょうどその頃だったといいます。

 

「地元京都の企業である株式会社島津製作所が、コロナ検出用の簡便なキットを開発されたという情報を受けて、5月末頃から動き始めました。従来の検査方法では、遺伝情報を伝達するウイルスのリボ核酸(RNA)を検体から抽出してから、目的のDNAを増幅してウイルス量を測定しなければならなかったんですが、この検出試薬キットならRNA抽出のステップなしで検査できるため、手間が省けて検査時間を短縮することができます。工程が長くなると偽陽性や人為的なエラーが出る恐れも増します。検査に際して採取が容易な被験者の唾液を用いて短時間で測定できる、とても画期的な開発だと思います」

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PCR検査センター設置の経緯を語る黒坂光学長

 

そんな京都の産学がタッグを組み、9月1日に両者は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けた包括的連携協力に関する協定を締結。同社支援の下、キャンパス内にある保健管理センターに併設させる形で、PCR検査センターを整備しました。広さは約88㎡。ウイルスの飛散等を防ぐバイオセーフティレベル2+の基準を満たし、検体の採取から判定まで一貫して実施できる施設となっています。だけども検査をするってことは、感染の疑いのある学生が大学に来てしまうのでは!?

 

「目的は、無症状感染者による感染拡大を防ぐこと。つまり検査対象となるのは、症状がない学生や教職員です。発熱などの症状がある場合は、一般の方と同様に医療機関で受診をしてもらいます。学外での検査を支援する手法もありますが、学生が安心して学ぶことのできるキャンパスの環境づくりには、一度きりではなく、折に触れて測定するのが大事だと考え、キャンパス内にPCR検査をできる施設を開設する運びとなりました」

 

1日あたり40件程度の検査を実施する予定で、10月20日の開所後は、試験的にサンプルをとって工程を確認しながらの運用が進んでいます。しかしながらPCR検査といえば、ちょいと検索してみても、15,000円だかの高額な費用がかかっちゃうはず。学生さんに対してそのあたり…大丈夫なんですかね?

 

「学生に検査を受けてもらいやすいよう、負担額は1回900円に抑えました。当面は大学側から声をかける形で、寮生やフィールドワークなどの学外活動をする学生を優先的に検査の対象とします。集団生活をする学生寮で感染者が出てしまうと、クラスターになってしまう恐れがありますし、フィールドワークにおいても、検査を行っていれば本人も受け入れ先も安心ですからね。大学として学生のことを考え、それぞれに必要なタイミングで検査できる体制を整えていく予定です」

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京都産業大学の保健管理センターに併設されたPCR検査センター(検体採取室)

府や市、他大学とも連携し、“大学のまち”京都全体の安心につなげたい

今回の取り組みは、京都府や市の助言や協力も仰ぎながら進めていったんだとか。開所については、学生たちからも「学内で受けられるのはうれしい」「安心な大学生活につながる」などの声が。外部の人たちからは、「思い切ってよくやった」「学生のことを考えた対策だ」といった評価がされているようです。

 

「データを蓄積していけば、より精度が高まり、検査自体の改良にもつながるはず。本学と同じようにコロナ対策を考えている大学もあると思いますので、他大学でも展開できるよう協力したいです。情報提供も積極的に行い、より広くコロナ対策の体制ができる手がかりにできればと」

 

ゆくゆくは「衛生検査所」として整備することも視野に入れ、緊急時に京都府や市からの検査協力の要請があれば応じる方針とのこと。運用期間は現状、2025年末までを想定しているそうです。

 

「ワクチンや治療薬が開発されれば、PCR検査自体が必要なくなるかもしれませんし、早くそうなってくれるのに越したことはありませんからね」

 

とはいえ、学内にPCR検査センターを設置したからといって、感染者を減らせるわけではありません。コロナの対策に向き合うと同時に、何より大切なのは日常の行動様式だと黒坂学長は語ります。

 

「学生がキャンパスに入構する際は、全員検温していることはもちろん、感染予防などに関する呼びかけも、Webサイトでの告知ではなく全員にメールで配信し、連絡もれがないようにしています。学生に配布する啓発用のポケット版リーフレットも作成したんですが、上賀茂神社で祈祷してもらったんですよ。定期的なPCR検査で無症状感染者の早期発見をめざすとともに、感染防止への意識を向上させる啓発活動も徹底していきます」

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上賀茂神社で祈祷した新型コロナ啓発のポケット版リーフレット。アマビエのイラストがかわいい

 

京都にある48の大学・短期大学に加えて地方自治体や経済団体が参画し、産学官の連携を深める「公益財団法人 大学コンソーシアム京都」の理事長も務めている黒坂学長。京都府や市とも一丸となって、コロナ対策を推進しています。

 

「京都は数多くの大学が集まる “大学のまち”です。無症状感染者の早期発見と適切な対処を行えば、地域の感染者も減らせ、京都全体の安心にもつながりますからね。対面授業が戻りつつあるなか、安心して学べる環境を整えることが重要です。専門分野を学ぶことはもちろん、課外活動やアルバイト、友人との語らいなど、トータルで経験してこそ人としての幅は広がりますし、そのためのベースとなるのが大学です。さまざまな対策を通じて、今後もより安全・安心なキャンパスづくりに取り組んでいきます」

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