近ごろ大学内に併設されるカフェやレストランに、こだわりのお店が増えてきました。
今回はオープンして1年になる、東京大学内にある「廚 菓子 くろぎ」へ。湯島にある本家の日本料理店「くろぎ」は、今予約の取れないお店のひとつです。そんな名店がなぜ東京大学に和菓子店を開くことになったのか。
「廚 菓子 くろぎ」を立ち上げた事業総括の森藤さんにお話を伺いました。東大生と和菓子の意外な関係や、日本の伝統文化や和菓子に対する思いやこれからについて、わくわくするお話をどうぞお楽しみください。
日本一の大学に、日本一の和菓子店を。
ほとゼロ:今日はよろしくおねがいします。東京大学に和菓子屋さんができたということで、いろいろお話がきけたらと思っています。
森藤:こちらこそよろしくお願いします。
ほとゼロ:森藤さんは立ち上げからこのお店にいらっしゃるのですか?
森藤:僕自身はもともと黒木について本店に立ってきましたが、湯島のお店からこちらに来て立ち上げをして、1年前にオープンしました。
ほとゼロ:1年前と今でお店は変わりましたか?
森藤:そうですね。やっぱり、小さな1店舗しかない料理屋さんなので、そこから新しくお店をはじめるのは結構体力のいることだったのですが、やっと1年経って落ち着いてきたのかなと思います。当初と今では盛り付けが多少なり違っていたり、どうすれば食べやすくなるかを試行錯誤しているので、成長していっているなというのはすごく感じますね。
「葛きりセット」(1950円税込)
ほとゼロ:そうなんですね。この店舗自体も新しく作ったんですか?
森藤:この店舗がある東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館は2014年5月にオープンしました。これは東京大学さんとダイワハウスさん、設計が隈研吾さん。その3者の取り組みで作られました。
ほとゼロ:なぜ和菓子屋さんに?
森藤:オープン前の年に和食が無形文化遺産になったんです。和食ってひとくくりにしていますが、たとえばフレンチなどでは、パティシエって言葉がすごく出回ってますよね。あれはフレンチのデザート部門をパティシエと呼んでいたものが独立したものです。和食が無形文化遺産になったのに、和菓子職人ってそこまでスポットを浴びていないように感じました。だったら僕らで和菓子を東大生に知ってもらい、未来につながればいいのではないかというところから和菓子に決めました。
ほとゼロ:なるほど。ふつうの和菓子店と違うところはありますか?
森藤:やっぱり練り切りのお菓子がきれいに陳列されているイメージがあると思うんですけど、あれはやっぱり和菓子屋さんの和菓子であって、僕らがやっているのは料理屋の和菓子だと思っています。
ほとゼロ:というと?
森藤:葛きりとかわらびもちっていうのは出来たてじゃないとおいしくないし、出来たてじゃないと出せません。本家のくろぎでコース料理の最後に出てくるのがこの葛きりなんですね。その葛きりは消化剤にもなるので、最後に食べることに意味があります。そういう料理屋の和菓子なんです。
ほとゼロ:なるほど。
森藤:味も甘いだけじゃなくて、引き立てるために少し醬油や食塩を入れたりしています。和菓子屋さんの和菓子らしい和菓子ではなく、料理屋のやる和菓子っていうのはコンセプトにあります。