最近なにかと話題のジビエ。兵庫県では増えすぎてしまったニホンジカ(2011年の兵庫県における推測生体数は約14万頭!)を丹波鹿として食用に加工し、ひょうご推奨ブランドに認定し、県内外に向けてのアピールを開始しています。そんな丹波鹿をはじめ、国内の鳥獣害対策を研究する施設、兵庫件森林動物研究センターで、野生動物の保全と管理について研究する兵庫県立大学教授・横山真弓先生にお話を伺ってきました。
兵庫県立大学教授・兵庫県森林動物研究センター研究部長 横山 真弓先生
増え続けるニホンジカ
あらゆる動物の絶滅が嘆かれている今、人間以外の動物は減っている! と思われがち。ですが、ニホンジカを筆頭に一部の動物は増え続けています。今回はニホンジカに焦点をしぼってお話を伺いました。
「昭和初期、鹿や猪の毛皮は防寒具として重宝されていました。また海外へ輸出することで外貨獲得に一役買っていました。そのため、一時期は絶滅の危機に陥ったこともあったのです。
しかし時代が進み、ガスや電気を主として使うようになった人間は、燃料として木材を使用することがなくなりました。森林に足を踏み入れなくても生活できるようになり、里山林を放棄したのです」
里山林は家々を建てるために開発され、無くなったのだと思っていましたが、それは一部地域でのできごとだったんですね。
では里山を放棄するとどうなるのでしょうか? 自然が回復し、良いことだらけな気がするのですが…。
「昭和30年頃以降里山林が放棄され、人が山に入ることがなくなり、徐々にシカが増えてきました。野生動物たちは学習能力が高く、農地などで一度に栄養の高い作物を楽に食べることを覚え、繰り返し同じ場所にやってきます。そのため農業被害が深刻化しています。そして森林の下草がなくなるほど密度の高い地域が広がる状況までシカが急増しています」
人間たちが森林を破壊したせいで、動物がすみかを無くしている! と思われがちですが、シカの場合それは間違いときいて、私たちが悪いのに殺処分だなんて…とちょっとした罪悪感のようなものが少し晴れた気がします。
鹿は「何でも食べる厄介者」との扱い
生活を守るために鹿を捕獲
鹿の皮などをつかった製品と横山先生
「ニホンジカは繁殖能力が高く1年に1頭出産します。先に挙げた通り、食べ物に困らずシカの栄養状態が良い現在、毎年2割ずつ増殖しているとされています。毎年3万頭のニホンジカを捕獲していても絶滅の心配はないどころか、3万頭以上の捕獲を数年間継続しないとニホンジカの生息数を適正値に戻すことができないのです。
このままでは、10年後には現在の約2倍になることが予想され、深刻な問題となっています」と、先生は神妙な面持ちで教えてくれました。
そこで、兵庫県では年間3.5万頭の捕獲を目標として、ニホンジカの捕獲促進活動が行われているのですが、野生動物を捕獲するには狩猟者免許や有害捕獲許可が必要。しかし近年、狩猟免許を取得している方が減っているとのこと。バブル前には全国に50万人いたのが今や10万人だそうです。しかも高齢化が深刻化しているため、このままではさらに急激に狩猟者が減少してしまいます。
そのため、兵庫県では狩猟者を育成する取り組みを始めていますが、最近では、狩猟免許の受験者数が3倍ほどになるなど、明るい兆しもありますが、実際に捕獲にこぎつけるまでには経験が必要なので、捕獲をスムーズに行うことのできる人材となるためには、もう少し時間が必要です。
では、捕らえられたニホンジカはどうなるのでしょうか。
「鹿は山の恵み。命を奪った以上はしっかりとその恩恵をうけるべきです」と横山先生。
そんな考えもあり、鹿皮を使った手袋やお肌に優しい洗顔クロスなどが販売されています。その中でも、鹿肉を食べようという取り組みは、県を挙げて行われており、横山先生も関わられています。
どんな鹿肉料理があるんでしょうか? くわしいお話しは後編で!
(後編はこちら
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