ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2015.10.23
  • author:高村 四郎

大学発広報誌レビュー第5回 京都造形芸術大学「瓜生通信」

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学生編集部が手がける、
「もはや雑誌」の広報誌。

日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第5回目となる今回は、この企画では初めての芸術大学、京都造形芸術大学の「瓜生通信」を取り上げます。

京都造形芸術大学は、通学・通信をあわせて約10000名もの学生数を誇る、全国でも最大規模の芸術大学です。メインキャンパスである瓜生山キャンパスは、京都市左京区北白川に位置しており、前回ご紹介した京都大学から自転車で15分程度の距離。現在の学長は、同じく京都大学で第24代総長を務めた地震学者の尾池和夫氏。かの有名な「総長カレー」の生みの親でもあり、氷室俳句会の副主宰も務める多彩な科学者です。

瓜生通信がまず目を引くのは、なんといってもその面構え。表紙部分が半分に断裁されており、1ページ目と組み合わせて表紙を構成するという、一風変わった表現が取り入れられています。キャンパス風景を表紙に採用する大学が多いなか、大胆にも教員の顔をドカンと正面から。教育の本丸は「施設・設備」ではなく「人」なのだという想いの表れでしょうか。また、ニスや箔押しなど、毎号ちがった特殊加工が施されており、ここらも芸術大学の面目躍如といったところ。ロゴは印象的ながらも読めるか読めないか、ギリギリのラインでデザインされており、その「攻め」の姿勢は、2017年で創立40年という歴史からは想像のつかない若々しさです。

表紙部分が半分に断裁されている

表紙部分が半分に断裁されている

開けるとこのような感じ

開けるとこのような感じ

特集は毎号全10ページで一人の教員の活動にスポットライトを当てています。過去6号の特集を振り返ると、59号は「私立探偵 濱マイク」シリーズの映画監督 林海象氏の「林海象と彌勒 MIROKU」。60号はD&DEPARTMENT創設者 ナガオカケンメイ氏の「ナガオカケンメイ 『つくらない』から、学ぶ」。61号は建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を受賞した建築家 坂茂氏の「国境なき建築家 坂茂」。62号は近年舞台芸術に力を入れる現代美術家 やなぎみわ氏の「やなぎみわの翼。」。63号は日本版「プレイボーイ」の初代アートディレクターを手掛けるなど60年代からポップアートの最前線に君臨し続けるアーティスト 田名網敬一氏の「乱反射する田名網敬一」。64号は日本人初の宇宙飛行士として初めて宇宙からの報道を行ったジャーナリスト 秋山豊寛氏の「行動するジャーナリスト 秋山豊寛」。65号はナイキやMicrosoftといった企業のCMを幅広く手がける異色のクリエイティブ集団PARTYを率いるクリエイティブディレクター 伊藤直樹氏の「伊藤直樹の未来地図」。このラインナップを見るだけでも、生半可なカルチャー誌よりもよほど豪華な内容であると言えるでしょう。むしろこの全員が京都造形芸術大学の教員だという点に空恐ろしさすら覚えます。

表紙から中面まで、フォーマットに沿いながらも挑戦的なデザインが貫かれています。写真のクオリティも非常に高く、色味の調整も実に丁寧。入念な色校のチェックが行われたことが伺えます。一方これほどエッジの効いたデザインにも関わらず、編集面は極めて骨太。ロングインタビューや対談はもちろん、写真のキャプションひとつにまで、正確な事実を積み上げ読みやすいテキストを心がけていることが見て取れます。芸大だからと情緒的でいわゆるアーティスティックな文章に甘んじない点も好感が持てます。「BRUTUS」あたりの雑誌と印象的には近いかも。

今号の特集記事

今号の特集記事「伊藤直樹の未来地図」


なにより驚きなのが、これらすべての編集制作・デザイン・撮影を、学生たちによる編集部で担当しているということ。確かに芸大ならデザイン・撮影・編集と、それぞれ専門に学ぶ学生が集っているわけですから、こうした学生による制作も可能なのでしょうね。各ページには担当した学生の名前がクレジットされており、就職活動の際には「形に残る実績」として大いに活用できることでしょう。また、62号からはAmazonを通して販売もされているよう。ここまで来ると、広報誌というよりもはや雑誌に近いのかもしれません。

編集制作・デザイン・撮影は学生たち

編集制作・デザイン・撮影は学生たち

広報誌とは、その大学の活動や考え方を広く社会に知らしめるためのツール。その広報誌を学生たちが高いクオリティで手がけることは、こと芸術大学においてはその教育が高いレベルで行われていることの証明にほかなりません。下手なものをつくってしまえば「なんだ、あそこの大学はこの程度か」と足元を見られる諸刃の剣ではありますが、ここまで質の高い誌面を生み出せるなら、大学の実力を世の中にアピールできる充分な「ネタ」と言えるでしょう。


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