新型コロナウイルスの感染拡大防止で、思うように外出ができないという状態が続き「家にいながら楽しめる、学べるコンテンツを探す機会が増えた」という声を耳にします。
そこでおすすめしたいのが、大学や研究機関のデジタルアーカイブ。研究機関ならではの専門性を活かして収集された貴重な資料が大量にアーカイブされ、ネット上で公開されています。見ているだけで楽しい画、あっと驚くような本、自分の育った地域の昔の写真、そんな資料も見つかるかも知れません。
ほとんど0円大学では、ぜひ一度はアクセスして欲しいデジタルアーカイブを、数回にわたって紹介していく予定です。第1回目は京都にある「国際日本文化研究センター」(通称・日文研)の怪異妖怪関係データベース。ちょっと怖いけれど、どこか憎めない妖怪たちに、たくさん出会うことができました。(編集部)
※メイン画像は「しん板化物尽し」(部分)。資料所蔵・提供:国際日本文化研究センター
“日文研”こと「国際日本文化研究センター」は、1987年に設立された大学共同利用機関のひとつだ。日本文化に関する国際的かつ学際的な総合研究と世界の日本研究者に対する支援を行うことを目的として、いわゆる普通の大学ではないが大学院も設置している。また、国内外から参加する、さまざまな分野の研究者と共同研究にも取り組んでいて、世界に向けて情報を発信し、日本文化の研究に寄与している。
そんな日文研によるデータベースが、とんでもなく面白い。所蔵する日本研究の資料やこれまでの研究成果に加え、他機関所有の日本研究資料などもまとめていて、2020年5月現在(以下同)、44種類をウェブサイトで公開している。大きくは、『日本関係欧文図書』『外像・古写真』『怪異妖怪関係資料』『浮世絵・絵巻物・美術』『図会・人物志』『地図』『古事類苑』『記録資料』『和歌・連歌・俳諧』『文献DB』『医学史関係資料』『その他』という12のカテゴリに分類。どれも開けたら最後、クリックしすぎて腱鞘炎になりそうなほどの“沼”なので紹介しきれないが、ここで足首だけでも引っぱらせていただこう。
妖怪研究の大家が指揮をとって集めた『怪異妖怪関係資料』が大充実
カテゴリのなかでも、ひときわ妖しく異彩を放っているのが『怪異妖怪関係資料』ではないだろうか。日文研は妖怪研究の大家・小松和彦さんが2020年3月までの8年間、所長を務めていたこともあり、この手の資料が恐ろしく充実している。
「怪異・妖怪絵姿」では、所蔵の妖怪絵巻29件を高精細画像でデジタル化。ご存知「百鬼夜行絵巻」が、どアップにしても細部まで美しい! 横スクロールで追っていけば、妖怪たちとの楽しい夜行気分が味わえる。読んで字のごとくな「化物婚礼絵巻」もぜひご覧いただきたい。「これが婚礼て!」と突っ込みたくなる奇妙なシーンが満載だ。
地底に住む大鯰が地震を起こすという伝説をテーマに描かれた錦絵、「鯰絵」のコレクションは87件。まさにこの伝説の様子を表した「鯰と要石」や、寄せ絵(だまし絵)としてもユニークな「面白くあつまる人が寄たかり」など、眺めるだけでも楽しめる作品が並ぶ。
留守中に大鯰が暴れだし、「これはたいへん 留守にとんだことだ はやくいって かたをつけずばなるまい」と慌てて馬を走らせる鹿島大明神 ※資料所蔵・提供:国際日本文化研究センター
そして圧巻なのが、「怪異・妖怪伝承」のデータベース。民俗学の調査などをとおして報告された怪異・妖怪の事例についての書誌情報35,089件も掲載されている。さらにそれを補完するものとして制作された「怪異・妖怪画像」のデータベースには、怪異・妖怪に関する画像が4,202件も。両者の検索機能を使って知的好奇心を満たしてみた(と書いて、遊んでみた)ので、その一例をご紹介しよう。
めざせ妖怪博士! お子様と一緒にも楽しめる、けど怖すぎ注意
「怪異・妖怪伝承」データベース
「怪異・妖怪伝承」の検索ページには、「全文検索」に加え、呼称や書名、地域など項目ごとに検索できる「詳細検索」が設定されている。さらに「地域検索」で地域を限定したうえで、「呼称検索」および「代表的な怪異・妖怪の呼称からの検索」もできる。
たとえば「地域検索」で「近畿」を選択して出てくる「代表的な怪異・妖怪の呼称から探す」欄を見てみると、「キツネ」の事例だけで439もある。そこをクリックすると出てくるのが、全49件の呼称リスト。キツネ、キツネツキ、キツネノヨメイリ…いろいろあるなぁと感心しつつ、目に留まったのが「キュウビノキツネ」。つまり「九尾の狐」だなと察し、ポチリと押すと、「余呉村の民俗―滋賀県伊香郡余呉村―」なる書物からの要約が。
ほほーう、那須、つまりは栃木県から全国に広がったのか! と思い、今度は「那須 狐」で「全文検索」すると、出る出るわ、これまたほほーう! な内容が。じゃあビジュアルは?と、今度は「怪異・妖怪画像」の検索ページから「キュウビノキツネ」を調べると…「那須野九尾狐討取」なる画像が! つながった!! …的、快感が延々と続き、それこそ狐につままれたように時間が過ぎ去っていく。
しかも!「怪異・妖怪画像」には「特徴から探す」「名前から探す」といった項目も設定されていて、特徴にある「しぐさ」のなかから「舌を出す」をクリックすると、おなじみの「唐傘」や「一つ目」、「垢嘗(あかなめ)」なんかも出てきて楽しいこと楽しいこと! そこからまた、「怪異・妖怪伝承」のデータベースで「一つ目」を検索しだしたりしたらもう…休む暇なく見続けてしまう無間地獄へ真っ逆さまだ。数珠つなぎのループから抜けられない。
伝承の要約はわかりやすいし、画像もポップなものが多いので、お子様のいらっしゃる方は一緒にズプズプ浸かるのも楽しそう。だけれども、なかには割とえげつない話やらえぐいイラストやらもあるので、トラウマにならないようにだけご注意を!