ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2020.4.2
  • author:増田 ひとみ

怪しくも面白い。東洋大学らしさが生んだ妖怪とスポーツの世界へようこそ。

2020年1月に公開された東洋大学のWebコンテンツが、話題を呼んでいる。

タイトルは「妖怪 meets SPORTS」。

 

オリンピック・パラリンピックと連携したさまざまな事業や、東洋大学の在学生・卒業生アスリート、指導者のインタビューなどが掲載されたサイトの1コンテンツとして誕生したのだが、異彩を放つ仕上がりだ。

 

一言でいうと、オリンピック競技の解説企画。しかし話はスポーツだけにとどまらない。さまざまな競技にまつわる誤解や思い込みを紹介するだけでなく、スポーツを取り巻く社会や歴史、科学技術の進化を、東洋大学の教授やスポーツ指導者が解説してみせる。しかも、その案内役を務めるのは“妖怪”(!)なのだ。

 

10回シリーズのうち、例えば「怪力という“思い込み”に隠された真実【だいだらぼっち】×【ウエイトリフティング】」の場合。

「だいだらぼっち」は日本各地の山や湖を作ったと言われている妖怪だが、「国づくりの神」への厚い信仰心が、人々の思い込みによって巨人として表象され、怪力の妖怪の姿へ変化していったとされる。一方、「ウエイトリフティング」は、腕の力だけでバーベルを持ち上げる競技と思いがちだが、実は…と解説が続く。“思い込み”と“怪力”をキーワードにした技ありの掛け合わせに加え、ページの最後には、パワーリフティング・ウエイトトレーニング部の監督が、具体的なトレーニング方法や選手をサポートする最新の取り組みを紹介している。

【だいだらぼっち】×【ウエイトリフティング】ページ。このあとに指導者の解説“スポーツを哲学する”が続く

【だいだらぼっち】×【ウエイトリフティング】ページ。このあとに指導者の解説“スポーツを哲学する”が続く

 

10回とも、必ず東洋大学の現役選手や指導者、教授などが登場。競技やテーマについてきっちり解説してくれる。だから、「へえ~♪」と思えるトリビア的な知識とともに、スポーツを通じたさまざまな知識に触れることもできるのだ。

 

妖怪とスポーツなんて、全然結び付かないと思っていたけれど、こうしてみると意外に接点はあるらしい。ときには、「百鬼夜行」と開・閉会式、「鬼火」と聖火なんて変化球も飛んでくるが、それはそれで面白いし、それぞれ好き勝手にスポーツしながら行進している妖怪たちの姿は、見ているだけでも楽しい。

味わいのある妖怪たちは、東洋大学の卒業生でイラストレーターの伊野孝行さんによるもの

味わいのある妖怪たちは、東洋大学の卒業生でイラストレーターの伊野孝行さんによるもの

 

「発想のもとになったのは、本学の創立者・井上円了が研究した妖怪学でした」と話すのは東洋大学総務部広報課の担当者。「明治時代の哲学者だった円了は、自ら考える姿勢を身につけることを“哲学の第一歩”とし、人々を根拠のない迷信から解放するための活動として、全国をめぐり、妖怪を科学的に解明する研究にも取り組みました。世間ではこう言われているけれど、よく調べてみたらこうでしたよ!というように、誤解や勘違いを解決していく。このコンテンツも、井上先生の妖怪学を参考にした考え方なんです」。

白山キャンパスにたつ井上円了像

白山キャンパスにたつ井上円了像

約10年間の調査研究の結果をまとめた『妖怪学講義』。迷信の多かった当時の日本において高く評価され、明治天皇に奉呈された

約10年間の調査研究の結果をまとめた『妖怪学講義』。迷信の多かった当時の日本において高く評価され、明治天皇に奉呈された

 

このコンテンツに関する最初の話し合いが持たれたのは、2018年の夏頃だったという。その頃はまだ、もっとシンプルな大学の体育会学生による競技解説ページを想定していたそうだが、翌2019年が井上円了の没後100周年というメモリアルイヤーだったことで、風向きが大きく変わったらしい。

 

29歳で東洋大学の前身にあたる「私立哲学館」を創立し、妖怪研究においてもパイオニアとして知られる井上円了。学内全体が、そんな円了や大学のルーツを振り返るムード一色に包まれる中、“東洋大学らしさ”を探し求めていた広報スタッフが出会ったのが“妖怪”だったとか。

「円了の妖怪学とスポーツとをうまく結びつけられれば、面白いものができるんじゃないか」。

そこからが、制作の本格的なスタートとなったという。

 

東洋大学の建学の精神は「諸学の基礎は哲学にあり」。哲学を学ぶのではなく、哲学することを学ぶ。周囲に惑わされずに自分で考えて行動することを重んじる。そんな活動主義の哲学者だった円了の精神は、いまの東洋大学にも脈々と受け継がれているのだろう。

広報課の皆さんが作られたこのコンテンツにしても、かなり異質であり、いい意味で挑戦的だ。

 

実際「スポーツに妖怪」という前例のない企画に、最初は周囲からも戸惑いの声が上がっていたそうで、今にして思うと「没後100周年じゃなかったら企画が通らなかったかも?」と考えたりもするとか。

けれども、だからこそ、どの競技と妖怪を組み合わせるか、あるいは、そのテーマについて誰に解説してもらうかについては、一番頭を悩ませ、その分時間をかけて検討を重ねたうえで、最終的に10組のストーリーを選び出した。

 

そんな苦労のかいもあって評判はよく、公開以来、PV数も順調に伸びているそう。ウェブデザインのサイトでの紹介や、妖怪雑誌からの思わぬ取材依頼もあるそうで、予想を超えた広がりをみせているようだ。

 

当たり前のことだけれど、スポーツの楽しみ方は一つではない。たとえば勝ち負け以外の面白さ、それをひもとくヒントをお探しの人がいたら、ぜひ一度、この妖怪たちの棲み処をのぞいてみたらいかがだろう。もしかしたら、今まで見えなかったものが見えてくるかもしれない。

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