ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2019.8.29
  • author:岡田 正樹

世界の大学!第1回:ハーバード大とMITが運営するオンライン講座プラットフォームedXで、スーパーヒーローの歴史を学んだ。

The Rise of Superheroes and Their Impact On Pop Culture _ edX (2)

新企画スタート!

さて、今回からほとゼロの新しい企画がスタートします。題して『世界の大学!』。この企画では、海外(主に英語圏)の大学に焦点をあて、その興味深い取り組みやイベントなど、編集部がこれはと思ったことを紹介していく予定です。


海外の大学が何をやっているのか、なかなか知ることはありません。しかし海外の大学も何かおもしろい、ハッとするような試みをやっているかもしれない!やっているでしょう!そこで、そういえば海外の大学ってどんなことをやっているのだろうか?日本にいながら海外の大学を活用できないだろうか?といった視点で記事をお届けしたいと思っています。


第1回目となる今回は、まさに自宅にいながら海外(主にアメリカ)の大学・研究機関の講座を体験できるedXというサービスの体験記をお届けします。


ちなみに今回の講座の題材は、バットマンやスパイダーマンなどの「スーパーヒーロー」。楽しげなテーマを入り口に、学びの世界に飛び込んでみよう!ということで、やってみました。


ちなみに語学学習にも良いと思うので、外国語にちょっと興味があるんだよなあという方にもおすすめしたいです。

edXとはなんだ。

さて、今回登場するedX(エデックス)について簡単に紹介します。ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)によって2012年に開設されたedXは、アメリカを中心とする大学や研究機関の講座をパソコンやスマホアプリから受講できる、オンラインの教育サービスです。


こうした「ネットを使って大規模に公開の講座を提供するサービス」全般のことをMOOCs(Massive Open Online Courses)と言います。MOOCsについては過去に記事を配信しているので、そちらもぜひ読んでみてください!

edXのサイト

edXのサイト

たくさんの講座がほとんど0円。

edXでは、ハーバード大学とMITはもちろん、プリンストン大学やオックスフォード大学、ソウル大学校、清華大学、そして日本の東京大学、京都大学といった各国の大学が講座を開いています。マイクロソフトのような企業や、研究機関の講座もあります。大学が整備したプラットフォーム上で、いろいろな機関が独自の講座を設けているのです。
講座は興味のあるキーワードで検索することも、分野から絞り込むこともできました。分野はコンピュータ・サイエンス、数学、ビジネス&マネジメント、哲学・倫理学など、他にもいっぱいあります。もちろん機関名から選ぶこともできます。

講座の検索画面。受講可能な講座数は膨大

講座の検索画面。受講可能な講座数は膨大

 

どんな講座があるか、いくつかあげてみましょう。

 

  • 「グローバルな視点からの香港映画」(香港大学)
  • 「生物学入門:生命の秘密」(マサチューセッツ工科大学)
  • 「ビデオゲームデザイン:チームワーク&コラボレーション」(ロチェスター工科大学)
  • 「動物倫理学入門」(京都大学)
  • 「19世紀のオペラ:マイアベーア、ワーグナー、そしてヴェルディ」(ハーバード大学)
  • 「ライフスタイル医学の基礎」(ドーン大学)
  • 「デジタル世界における評判管理」(カーティン大学)

 

最近注目のテーマから古典的なテーマまで、実に多彩です。やさしめの講座から大学院レベルの講座まで難易度もさまざまなので、ちょうどよい難易度のものから選ぶのもありかもしれません。

 

かくも多彩なedXの講座は、なんとほとんどが無料で受講できます。「修了証」を発行する場合はお金がかかりますが、発行は任意。受講するだけなら無料という講座が多いです(有料の講座もありますので事前に確認してください)。

 

ちなみに言語は英語が圧倒的に多いですが、スペイン語や中国語、フランス語などの講座もあります。それほどたくさんはありませんが、日本語の講座もあるようです。

日本の大学も講座を開いている。言語は英語が多い

日本の大学も講座を開いている。言語は英語が多い

スーパーヒーローの歴史を学ぶ。

ということで、何か楽しそうな講座は無いだろうかとフィルタリングをかけてみます。とりあえずArt & Cultureで絞り込んでみました。

オペラやスタートレックに混じって、スーパーヒーローという文字を発見した(左下)

オペラやスタートレックに混じって、スーパーヒーローという文字を発見した(左下)

 

すると、「スーパーヒーローの興隆とそのポップ・カルチャーへの影響(The Rise of Superheroes and Their Impact On Pop Culture)」という講座を見つけました。主催しているのは、アメリカのワシントンD.Cやその周辺にある大規模な博物館群「スミソニアン博物館」を運営するスミソニアン協会です。難易度は最も平易な「入門レベル(Introductory)」。聴講だけなら無料、修了証を発行したい場合は50米ドルです。

 

ここ数年『アベンジャーズ』などのスーパーヒーロー映画が公開され、日本でも大変な人気ですね。この講座では、そうした映画の下敷きにもなったコミックスもいろいろ登場するようです。


たまたま発見したこちらの講座ですが、おもしろそうなので挑戦してみます(以下、若干ネタバレになる記述があるかもしれません)。

「スーパーヒーローの興隆とそのポップ・カルチャーへの影響」

「スーパーヒーローの興隆とそのポップ・カルチャーへの影響」

 

ユーザー名やメールアドレスを入力してアカウントを登録すればすぐに受講できるようなので早速試しました。今回は聴講だけ(無料)で受講します。

メールや名前などを入れるとアカウント登録できる

メールや名前などを入れるとアカウント登録できる

字幕付きのビデオと超豪華な講師陣。

こちらの講座は、基本的には動画で講座を見て、補足テキストを読むという流れ。ときどきクイズ・ゲームがあったり、掲示板を使ったディスカッションのコーナーがあったりします(書き込まなくても次に進めます)。

 

動画は英語音声ですが、今回の講座は入門レベルだからなのか(?)、それほど難しい言葉は出てこないし、字幕表示もできるのでわかりやすいです。再生速度を変えることもできます。

 

動画に登場する講師陣も非常に豪華です。ガイド役を務めるインディアナ大学のマイケル・ウスラン氏は、映画『バットマン ビギンズ』の製作総指揮も担当したプロデューサーで、大学教育にコミックスのカリキュラムを導入した先駆者です。

 

そして、スタン・リー氏。コミックスの原作者として、スパイダーマンやハルク、マイティ・ソー、Xメンなど絶大な人気を誇るキャラクターたちの誕生に貢献した、アメコミ界の巨匠です。残念ながら2018年に亡くなられましたが、動画では生前のスタン・リー氏がスーパーヒーローについていきいきと語ってくれています。

『アベンジャーズ』など、たくさんのマーベル映画にも出演していたスタン・リー氏が登場

『アベンジャーズ』など、たくさんのマーベル映画にも出演していたスタン・リー氏が登場

 

主な講師陣。ゲストスピーカーを含めるとより多くの方が登場

主な講師陣。ゲストスピーカーを含めるとより多くの方が登場

スーパーヒーローから社会を読み取る。

講座は全6パートにおよぶ、盛りだくさんの内容でした。私は記事の締め切りもあって急ぎ足で受けましたが、そうでなければ1パートあたり合計で1、2時間くらいでしょうか。もちろん10分だけやって中断するなど、細切れに受講してもOK。サイトには、1週間で1パート分進め、全部で6週間かけて受講するのが目安として書かれています。

 

さて内容ですが、1930年代のコミックス台頭の理由、第二次世界大戦期のキャラクター描写、戦後に人気凋落しウエスタンやホラーに取って代わられたことの背景、マッカーシズムやコミック排斥運動の影響、スーパーヒーロー復活のプロセスなどなど…スーパーヒーローがアメリカ社会の鏡のように展開してきたことがよくわかる講座でした。

※Photo by Hermes Rivera on Unsplash

※Photo by Hermes Rivera on Unsplash

 

ウスラン氏はスーパーヒーロー・コミックスを「今日の神話」「現代アメリカの民話」と表現していました。自分たちの暮らす世界を理解するために神話や民話が必要とされてきたのと同じく、スーパーヒーローは現代アメリカ社会を理解する鍵となるのですね。

※Carlos Gabriel Morales ToroによるPixabayからの画像

※Carlos Gabriel Morales ToroによるPixabayからの画像

 

もちろん昔の話ばかりではなく、講座の後半では最新の話題も出てきます。
例えば映画『アイアンマン』と『キャプテン・アメリカ』のように、「別々の作品なんだけど同じ世界を共有している」という映画がたくさん作られ、コミックス単体ではなし得なかったような世界規模での反響を呼んでいることについて、その多彩なメディア展開が紹介されています。

 

また最近のスーパーヒーロー・コミックスでは、多様性が重視されているといいます。Ms.マーベルは、パキスタン系移民のムスリムの女子高生(カマラ・カーン)だし、新しいスパイダーマンはアフリカ系アメリカ人の父とプエルトリコ人の母を持つ中学生(マイルス・モラレス)だったりするのだと、そんなことが紹介されています。

最近たまたま『Ms.マーベル』を読んでいるところだったのですが、確かに、自分はどんな人間orスーパーヒーローになっていくのか、という多様なアイデンティティのことをしっかりと描いていました。

 

日本のマンガについての動画講座もありました。日本ではコンビニや本屋など割とどこでもマンガが買えるが、アメリカではコミックスはコミックショップという専門店で買うものであるという話など、日米のマンガ/コミックスの比較が語られていました。

※Photo by Lena Rose on Unsplash

※Photo by Lena Rose on Unsplash

 

という感じで、無料でこんなにたっぷりと講座が受けられるのかと、結構得した気分です。この講座を受けてからコミックスや映画を見れば、より楽しめるのではないかと思いました。

好きなテーマで楽しく学ぶ。

edXでは、今回試したようなポップなテーマから、バリバリのビジネス系の講座、硬派で伝統的なテーマの講座まで、とにかく幅広いテーマを扱う本格的な講座を、好きな場所好きな時間に受けることができます。

 

海外の大学や研究機関ってどんなことを教えるのかな?と気になる人、英語に挑戦してみようかな?と思っている人など、何か学びの場に飛び込んでみようと思う人には、こうしたオンライン講座という選択肢もよいのかもしれません。

 

ちなみにedX以外にもオンラインの学校はあるので、機会があればそちらも挑戦してみようと思います。


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