外国人に一番人気な大学博物館はどこ? そんな恐ろしくマニアックな質問をされたら、私なら迷わず京都国際マンガミュージアムの名前を答えるだろう。京都精華大学と京都市の共同事業であるこのミュージアムは、ジャパンクールの代名詞の一つ、マンガを題材にしており、海外のガイドブックでも紹介される人気スポットである。今回はこのホットな大学スポットに行ってきたのでレポートをお届けしたい。
京都国際マンガミュージアム(以下マンガミュージアム)に訪れたのは、よく晴れた1月終わりの火曜日。ド平日、しかも午前だったにも関わらず、館内にはけっこう人がいて、中には白人の観光客の姿も。
京都国際マンガミュージアムの外観。緑色のグランドとクリーム色の建物がオシャレ
館内に入るとオリジナルマスコット「マミュー」がお出迎え。けっこうでかいぞ!
実はこれまでに何度か訪れたことがあるのだが、いつ来ても木造の建物が心地よくて落ち着く。ちなみにこの建物は龍池小学校という小学校をリノベーションしたもの。そのため、使い込まれた木の床や石づくりの階段など、小学校らしさが今も残っている。館内には「龍池歴史記念館」という部屋があり、そこに小学校時代の思い出がいっぱい詰まっているので、訪れた際には、ぜひこちらも見てもらいたいものだ。
館内は落ち着いており、マンガを読むには最適の雰囲気
龍池小学校の歴史がつまった「龍池歴史記念館」
1階、2階ともに壁という壁にマンガのぎっしり詰まった本棚が並んでおり、この迫力こそがまさに“マンガ”の“ミュージアム”といった感じである。館内を見回すと、立ち読みしている人がいれば、通路にある椅子に座って読んでいる人もいる。訪れた日は寒かったのでいなかったが、晴れたあたたかい日にはグラウンドで読む人もたくさんいるようだ。博物館というと、なんとなく高尚で襟を正して見て回らなくてはいけない印象をもってしまうが、ここはなんとも自由である。
2階で面白いものを見つけた。漫画家たちのサインとともに並ぶ、利き手の石膏型である。そのなかに、怪物くんや忍者ハットリくんで有名な藤子不二雄(A)先生のものを発見! 子どものとき見ていた、あのマンガ(私はアニメ派だったが)が、この手から生まれたと思うと、何とも感慨深いものを感じてしまった。
著名な漫画家たちの手の石膏型。無言の迫力がある
膨大な冊数のマンガに目を奪われがちだが、マンガミュージアムはミュージアムというだけあって展示もしっかりしている。展示は基本的に2種類、マンガの歴史やつくり方など、いろいろな角度からマンガを取り上げる<メインギャラリー・常設展示>と<企画展示>である。
訪れたときは、「江戸からたどる大マンガ史展~鳥羽絵・ポンチ・漫画~」と「原画´(ダッシュ)展示シリーズ 青年マンガの世界」の企画展示がやっていたので、両方とものぞいてみた。
多彩な切り口でマンガを紹介する<メインギャラリー・常設展示>
「江戸からたどる大マンガ史展~鳥羽絵・ポンチ・漫画~」の会場エントランス
原画'(ダッシュ)の一枚。描く線の太さや筆のタッチまでがよくわかる
「江戸からたどる~」は、江戸時代の戯画や鳥羽絵本から昭和初期のマンガを展示。マンガというと手塚治虫以降を想像しがちだが、日本人のユーモアはそれ以前から十分にあったようである。市川団十郎の死を悼む女性たちと一緒に泣くネコや、壮大なスケールで描かれた魚と青物との戦い…、どの絵(マンガ?)にもまじまじ見入ってしまう面白みがあった。
「原画´(ダッシュ)〜」は、以前からマンガミュージアムで精巧な複製原画を研究・制作する原画'(ダッシュ)プロジェクトというものがあり、その新作原画’(ダッシュ)を展示する展覧会。これまでは少女マンガを中心に展示していたが、今回は初の青年マンガになるとのこと。原画というものを、これまで見たことがなかったのだが、ホワイトによる消し跡であったり、別で描いたものを切り貼りしていたり、こういうふうにできてるんだ、と素直に感動した。誇張でなく、漫画家の息づかいみたいなものが感じられる展示だった。
ちなみにこの両企画展示だが、「江戸からたどる〜」は2月7日(日)まで、「原画´(ダッシュ)〜」は2月9日(火)までの開催とのこと。興味のある方は週末に出かけてみてはいかがだろう。
他にも、全国的にめずらしい紙芝居小屋や海外のマンガコーナー、巨大な火の鳥のオブジェなど、書き加えたいことがたくさんあるのだが、正直いってキリがない。1日たっぷり遊べる場所なので、続きはぜひ自身の目で見て体験してもらいたい。日本のポップカルチャーの底力を、きっと実感してもらえるはずである。
開館日には毎日紙芝居が開催され、張りのある声が館内に響く
金土日祝にはニガオエ絵コーナーも
全長約11メートルの巨大な火の鳥。(C)手塚プロダクション
非公開の館長室には館長・養老孟司氏の針金アートが!