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  • date:2020.1.23
  • author:羽田理恵子

世界が注目する“しっぽ”ロボット?慶應義塾大学で聞いてきた!着けてきた!

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YouTubeで再生回数50万回に迫る話題のしっぽ・ロボットをご存知ですか?モフモフ、フリフリの尻尾ではありません!カラダに装着して身体機能を拡張するもの、名前は「Arque(アーク)」。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 (KMD)に所属する開発者に会いに行ってきました。

 

取材当日は、KMDが取り組むさまざまなプロジェクトの最新状況やワークショップなどが行われる「KMD FORUM 2019」の開催期間中。そこに来てくださったのが、開発者である大学院生、鍋島順一さんです。

「KMD FORUM 2019」では研究活動の成功と失敗など、その舞台裏を公開しており、プロジェクトを体験することもできる

「KMD FORUM 2019」では研究活動の成功と失敗など、その舞台裏を公開しており、プロジェクトを体験することもできる

 

ロボット尻尾は、「身体性メディア」プロジェクトの一環として開発された約1メートルの機械。動物の尻尾とそっくりの動きをするから驚きです。なぜしっぽ?どんなことに役立てていくの?気になる疑問をストレートにぶつけてみました。

鍋島順一さんは大阪大学出身。ハンドボールプレイヤーでもあり、阪大OBとともに現在も続けているそうです

鍋島順一さんは大阪大学出身。ハンドボールプレイヤーでもあり、阪大OBとともに現在も続けているそうです

 

なぜ、しっぽのロボットなんですか?

人間の体のバランスを保つことに焦点を当て、開発しました。しっぽというテーマはKMD入学後すぐに思いついたと思います。犬のようにしっぽを振って感情を表現しようとするデバイスは結構あるんですが、人間の進化の歴史から考えた時に感情表現ではなくしっぽがバランス能力に使うものだったのではないか?そういったところから着想を得て詰めていきました。

 

もともと動物好きで体育会系だったこともあって、それぞれが持っている身体の機能美に興味を持っていたんです。人間の能力と動物の能力は調べれば調べるほど、すごいものがたくさんあることがわかった。研究室内でも義手や義足などの身体拡張というテーマがあったので、しっぽはどうかと。

 

ドラゴンボールの孫悟空も木の枝に巻きついたり、立ったり、浮いたり、しっぽでバランスをとっていた。それで指導教員のムハマド ヤメン・サライジ先生(同大学院特任講師)に投げたら「しっぽいいかもね」と言われてスタートしました。

数あるしっぽの中でも、なぜこの形?

まずはデザインから考えました。猿みたいなしっぽ、ゴジラみたいなしっぽ、ワニみたいなしっぽ…どれも決め手にかけていました。しっぽのことを調べ続けていたら、タツノオトシゴのしっぽの四角いおもしろい形状に出会いました。その骨格形成を研究している論文を読むと骨格の耐久性などが興味深かったんです。

確かにタツノオトシゴの形状!

確かにタツノオトシゴの形状!

 

「Arque」は真ん中に椎骨となる部分があり、それを囲むように4つのプレートとバネ、4本の人工筋肉をエアコンプレッサーで伸縮させることで筋肉の動きを真似て動きます。

ロボット尻尾はこのようなパーツでできている

ロボット尻尾はこのようなパーツでできている

 

重量は、人間の祖先とも言われるオマキザルを参考に決めました。彼らは約40cmのしっぽを振り子のように振ってバランスをとることで、重たい石を運んだり、二足歩行をしたりしているんです。そこで、オマキザルのしっぽが体重の5%ということで、僕の体重から3.5kgと算出。装着する人の体重に合わせシッポの関節を変えることで重量と長さを調整できるようにしました。

身体が傾くと、しっぽは逆の方向へ。しっぽが振り子の役割を担っており、身体のバランスが保てるようになっている

身体が傾くと、しっぽは逆の方向へ。しっぽが振り子の役割を担っており、身体のバランスが保てるようになっている

実は工学系出身じゃないってホントですか?

そうです。経営学部で学んでいました。その中で、いろいろ経験して自分で考えて物作りすることが楽しいなぁって感じたんです。就職しようかと思っていた時に紹介されたのがこのKMDでした。工学の専門知識がなかったからしっぽを思いついたのかもしれません(笑)

 

KMDでは技術を突き詰めるのではなく、どう体験してもらったら一番わかりやすいか?第三者から美しく見えるのか?そういったことを先生がアドバイスしてくれる。ヤメン先生はとても忙しいんですが、一緒にやっていてすごく楽しいです。

左からムハマド ヤメン・サライジ先生、同じ研究室の李迪さん、鍋島さん

左からムハマド ヤメン・サライジ先生、同じ研究室の李迪さん、鍋島さん

 

またKMDというのが特殊で、僕みたいな経営学部からくる人もいれば美大系、高等専門学校から来る人もいる。しかも留学生も半数ぐらいいて、とにかく多様。デザイン、素材、技術など、バックグラウンドが違う学生同士がお互い得意分野を補って、話をしているだけでワクワクしてきます。

「Arque」はこれからどう進化しますか?

社会実装に結びつけたいです。僕はしっぽを身体拡張のひとつとして考えているので、バランス・サポートに存在証明を示すことができればどんどん進むことができると思います。

 

例えば平衡感覚が弱まり足元がおぼつかない高齢者や、足場が不安定な場所で作業をされている方の使用を想定しています。それからスポーツとか、エンターテイメントの分野でも活かせたらいいですね。しっぽがあったらどんな泳ぎ方ができるのか?宇宙でしっぽを着けていたらどんな重力になる?とか(笑)

 

今はいろいろ試行錯誤を繰り返して、進んだり後退したりの連続です。社会実装に結びつけたい一方で、おもしろくて始めたので、自由に考えていきたいと思っています。みなさん、しっぽというコンセプトがおもしろくていいとおっしゃってくれるので、僕らも頑張れます。

2019年夏にロサンゼルス・コンベンションセンターで開催された「SIGGRAPH 2019」に出展。みなさん興味津々

2019年夏にロサンゼルス・コンベンションセンターで開催された「SIGGRAPH 2019」に出展。みなさん興味津々

 

Arqueの動画はこちら!

「Arque」を着けてみたら…。

2人に装着を手伝っていただきました。

2人に装着を手伝っていただきました

 

装着はハーネスを背負うだけでOK。けれど長さと重さが初期設定なので、腰にどっしりと3.5kgの重さを実感しました。通常は上半身に付けた動作センサーが動きにあわせてしっぽをコントロールし、自然なバランスを保ってくれます。

 

今回は動作センサーが付いていないので、コントロールを鍋島さんが担当してくれることに。自分の意図しない瞬間にシッポが大きく振られた瞬間、あぁ~、カラダが持っていかれる~!バランスが崩される!カラダのコントロールが効かない…鍋島さんの意のままに動かされてしまいました。しっぽと身体バランスの関係性の深さを身をもって体感。逆にしっぽが動いていないと下半身がずっしりと安定して、3本目の足といった感じがしました。

 

人間の進化の過程でなくなったしっぽが身体拡張の一翼を担う時代がやって来るかもしれません。もしマイ・しっぽを持つ時代が来たら、きっと笑顔にあふれるでしょう。「Arque」の進化に目が離せませんね。


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