(C)國學院大學
スマホ>本になっていませんか?書店は減るし、図書館は面倒くさい、調べ物はネットでピンポイント検索すれば充分…デジタル・ネイティブである大学生の本離れは、おとな以上に深刻な問題です。そこで本離れに立ち向かう國學院大學のブックプロジェクト「みちのきち」を探ってきました。
渋谷キャンパスの学術メディアセンター1階にある「みちのきち」は、図書館ではありません。本が魂をもっているかのようにいきいきと美しく並ぶ、居心地のいいフリースペースです。読書や勉強することはもちろん、休憩したり、おしゃべりしたり、飲食することも◎。一般の方の利用がOKなのもうれしいです。
「みちのきち」へ行くと、まるで杜のようなウッディなスペースがまず目に入ってきます。木漏れ日を感じさせる暖色のライティング、美しい緑でまとめられたインテリア、語りかけるような本のレイアウト…とても心地よくておしゃれなラウンジのよう。本当にキャンパスの一部なのかと一驚しました。設計とインテリアを担当されたのはSUPPOSE DESIGN OFFICE。なるほど。
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中央にある本棚は大樹の幹のよう、本というたくさんの葉を守ってくれている感がある
中央に座っていても外からの視線が気にならない。キャンパスにあって「みちのきち」は別世界
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外からは屋根に見えた部分は3段のシェルフになっている
國學院大學と言えば明治から続く歴史ある学校で、国内では数少ない神職課程があるのはご存知の通り。皇学(天皇が統治する国の歴史・文化・伝統など)に関する貴重な資料をはじめ、大学が収蔵している書籍は都内トップクラスです。そんな同大の学生も本離れが進んでいるとか。本をもっと身近に!そんな願いから誕生したのが「みちのきち」でした。
また、「みちのきち」という響きに、子どもの頃に魅せられたヒミツ基地のような懐かしさと親しみやすさを感じませんか?
この名称にも大学の深い想いが込められています。未知のことを既知に変える基地、人生(道)の迷いに向き合う基地、機知に富んだ会話ができるような本がある基地…。
ページをめくることで遭遇する奇跡の出会いや、スマホやタブレットでは得られない醍醐味を、ぜひ体験してほしいという願いが込められているのです。
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テーブルのある席ではミーティングをする学生も多く、並んでいる本がヒントになることも
収蔵されているのはマンガから絵本、小説、高そうな写真集まで約800冊。本をほとんど読まない学生達の声を参考に、「食べる」「未知なる場所へ」「ものがたり」「身体」「日常」「日本の来歴」「神聖なもの」という7つのテーマを設定し、ブックディレクターの幅允孝さんが中心となって選書しました。同大らしいテーマもありますが、一番人気は「食べる」のコーナー。美味しいものは誰しも目がありません。
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こちらは「神聖なもの」コーナー。手塚治虫さんの『火の鳥』『ブッダ』を発見
そして注目したいのが【教員のおススメ本】。何を読んでいいのかわからないという学生のために、身近な同大の先生方が本を紹介するコーナーです。5分で読めるような絵本もあれば、山や猫の写真集、ドキュメンタリー、古典に哲学書…個性豊かな切り口でセレクトしているのがおもしろい。思わず本を手にとってしまいます。
【教員おススメ本】コーナーでは、先生が書籍の紹介文を作成
余談ですが、大学生の本とスマホのお話しを。2018年2月に発表された全国大学生協組合連合の調査では、1日の読書時間が0分という大学生が53.1%、一方のスマホは、学生の99.2%が所有して1日177.3分利用しているそう。数字で見ると本当に本離れが深刻なことがわかりますね。
学生が1冊でも多くの本に触れ、新たな知識と出会う機会を創造していくというこのブックプロジェクト。「みちのきち」に続く第二弾は書籍『私の一冊』の発行(2018年4月25日/Amazonへ)です。
今後も書店などとタイアップして、トークイベントなど様々なイベント開催される予定。お近くで開催されるかもしれないので、要チェックです。
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女優、スポーツ選手、作家、政治家、大手企業社長など、各界の著名人109人がそれぞれ選んだ一冊を紹介するブックガイド『私の一冊』。赤紫の美しく上品な装丁は、ずっと手元に置いておきたい一冊に
内容はもちろんのこと、装丁、サイズ、紙質、フォント…本には作り手の思いがすごく込められています。美しい表紙やキャッチーなタイトルから興味を持ち、新しい世界の扉を開いてくれるのも本の魅力。
スマホを置いて、本の杜「みちのきち」で自由に本と触れてみませんか?國學院大學博物館を見学した後の休憩にもおすすめです!