龍谷大学が食と農の楽しさを伝えるWEBマガジン「Mog-lab(もぐらぼ)」というオウンドメディアサイトを2017年11月に立ち上げました。
昨今、大学の広告・広報戦略として、オウンドメディアの活用が進んでいますが、「Mog-lab」は大学の公式サイトとは切り離し、大学名も大々的に掲載していないとのこと。その狙いをうかがうため、龍谷大学を訪ねました。
身近な内容で読みやすく、早くも愛読者が多数
Mog-labは龍谷大学初のサテライトサイトで、学長室(広報)と農学部が中心となって運営。およそ週2回のペースで更新されています。
食と農に関するトピックスが掲載されているというと、「学部の研究や取り組みの紹介なんでしょ」と思いますよね。Mog-labは違います。
食材のおいしさの秘密、京都をはじめとする料理店の紹介、グルメ紀行と、大学が運営するサイトとは一線を画す内容。筆者も大好きなお酒の話も盛りだくさんなのです。
「大学のサイトは堅いという先入観があり、閲覧者も学生や受験生、保護者などに限られてしまいます。そのためMog-labはまったく別のサイトとして、幅広い方々に情報を発信することを目的にしました」と広報担当の橋本和美さん。
コンテンツも誰もが気軽に読めて面白い内容にこだわり、更新時の話題やスマホでの見やすさ、写真の美しさにも配慮しているそうです。
テーマを「食と農」に設定したことにも狙いがあります。
「今、人びとの食と農への関心度は非常に高く、広く情報を発信するサイトとしては格好のテーマです」。そうと語るのは、うま味研究の第一人者でMog-labに記事を定期連載している農学部教授・伏木 亨先生。
うま味研究の第一人者、農学部教授・伏木 亨先生
「私自身、研究やシンポジウムなどを通じて、食と農への関心の高さをヒシヒシと感じています。とくに東日本大震災以降、豊かさを取り戻すひとつとして食が影響していることや、ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されたことなどが関心を高める要因となっているのではないでしょうか」と先生は分析します。日本的な豊かさへの関心が、より高まってきているのかもしれません。
ネタは無限大!食と農はあらゆる要素につながっている
さらに食と農は、時代、社会、経済、歴史、文化、アート、スポーツと、多様な要素とも紐づいています。農学部教務課の糸井照彦さんは「龍谷大学は農学部をはじめ、9学部あるので、さまざま視点から記事の作成が可能です」と、同大がもつリソースに自信をのぞかせていました。
確かにカテゴリーは「味わう」「文化・歴史」「豆知識」「ビジネス・企業」と、バラエティに富み、内容も興味深いものがずらり。
例えば、伏木先生は『岩牡蠣とホヤを生で食べる喜び』『ラーメンは和食か?』といった食通でもある先生のグルメ記事、鼻かぜが味覚を狂わせた『嗅覚を失った話』といったご自身の体験などをアップ。さらに『ビールのつまみはなぜ塩からい』というような、知っているようで知らない食の豆知識も教えてくれます。
Mog-lab編集部が京都の有名ラーメン店に麺を提供する麺屋さんを紹介する『あなたの知らない麺の世界』といったレポートや、グルメ雑誌の編集長も務めた卒業生がつづる食べ歩き・飲み歩きなども今までの大学のサイトにはなかった内容といえるでしょう。
今まで考えたことがなかった・・・!という視点が見つかる
金曜日にはお酒の話題を発信。ディープな飲み歩きスポットが見つかるかも?
ブランディングや学生獲得の新しいカタチに
一方で、先生方の記事は研究や学会で発表された内容がベースなので、情報の確実性、信頼性は抜群。「大学名は大きく出してはいませんが、龍谷大学が発信するものとしての正確さ、責任は堅守しています」と糸井さんはいいます。
検索・閲覧結果を分析すると、専門性の高い記事もヒット数が多いそうで、「勉強や研究などの調べ物を通じてMog-labにヒットしたことで、読者になっていただいた方もいらっしゃると思います」と橋本さん。
もちろん、研究をはじめアカデミックな内容、知的好奇心をそそる情報を発信することは、龍谷大学の知名度向上、ブランディングにもなるため、高校生はもちろん、社会人入学など優秀な学生の獲得につながるのではと伏木先生は期待しています。
今後は学生や卒業生、産学連携などの関係者と、記事のライターを増やしていく予定。食と人生、歴史上の人物の好物、オリンピックとスポーツ栄養、お酒と宗教、農業体験記など、内容もさらに濃く、面白く、充実させていくそうです。
筆者もためになったことを誰かに話したくなったり、登場した場所やお店を訪れてみたくなったりして、さっそくスマホにブックマークしました。ちょっとした空き時間に読めるのもいいところ。Mog-lab、要チェックです!