2019年の秋、「おばあちゃんの原宿」といわれる巣鴨にご当地スイーツ(プリン)が誕生しました。その名も「誰かといっしょに すがもプリン」(以下、「すがもプリン」)。「なめらかプリンの生みの親」である所浩史シェフが監修していて、京都や長野の食材を使用した5種類のフレーバーがそろっている本格派。
そして、「すがもプリン」の企画や販売にはなんと大学が関わっているそう。くわしい話を聞きに取材に行ってきました。
「すがもプリン」のフレーバーは全5種類
現在、発売している「すがもプリン」は、プレーンな味で食感が違う「なめらか」と「レトロ」、京都福寿園の宇治抹茶を使用した「抹茶」、同じく京都の井筒八ッ橋本舗の小倉あんを使用した「粒あん」、長野・小布施の小布施堂の栗あんを入れた「栗あん」の5種類です。
このプリンは、巣鴨の商店街にお店を構える「座・ガモール2・3号店」と、すがもプリンの本店であり、製造を行う「鴨台花壇カフェ(座・ガモール4号店)」(以下、「鴨台花壇カフェ」)で購入できます。
「すがもプリン」の旗が目印の「鴨台花壇カフェ」
そこで、本店の「鴨台花壇カフェ」にて、「すがもプリン」の立ち上げを担当した大正大学地域構想研究所教授の北條規先生と、イベントでの販売に関わった同大学地域創生学部地域創生学科2年生の坂下拓夢さん、古田柚月さんにお話を聞いてみました。
「すがもプリン」は大学が見つけた地域の特産品を使ったこだわり品!
「すがもプリン」の製造・販売を行うのは、大正大学と巣鴨の3商店街が設立した一般社団法人「コンソーシアムすがも花街道」。ここでは、大学が連携している自治体の特産品を扱うアンテナショップ「座・ガモール」を運営しています。大正大学 地域創生学部では、1年生と3年生の時に連携先の自治体で地域実習を、2年生の時に東京実習を行います。首都圏での実習を2年次に取り入れることで、地域創生はもちろん、都市と地域の共生を都市の視点で再確認することも学びの目的にあるため、このショップを学生の学びの場としても使っています。
さらに、大正大学のオリジナリティーを加えて、地域の特産物を使った大学発の商品として「すがもプリン」や「あちこちもち」※を生み出してきました。
※「あちこちもち」とは、日本各地の銘店の餡を使用した4つのお餅が入った贅沢なセット。「すがもプリン」の前に、大学発のオリジナル商品として生まれた。
「すがもプリン」は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか? プロジェクトの立ち上げを担当した北條先生はこう語ります。
「大正大学では、『すがもキャンパス構想』を推進しています。すがも地域を大学のキャンパスとしてとらえ、『すがもで育む日本の未来』をキャッチフレーズにしながら、学生がすがもの街で活動し、商店街、住民一体となって当エリアの活性化を図っていくものです。そんなすがもの新しい名物を生み出そうと考えたのが、連携自治体の食材を活用した『すがもプリン』でした」
プロジェクトがスタートしたのは、2019年の春頃だったといいます。
「何とか秋には発売しようと、急遽プロのパティシエに監修を依頼し、夏頃にはプリンに使用する地域の食材やレシピが大体かたまりました。そこから10月の発売に向けて、鴨台花壇カフェの製造工場への改装、店舗のショーケースの手配など、目まぐるしい速さで進めましたね(笑)」と多忙な日々を笑顔で振り返ってくれました。
「すがもプリン」の製造をしている「鴨台花壇カフェ」は、もともとランチなどが食べられる普通のカフェだったそう。そこに、プリン製造ができるように改装が行われ、工場兼イートインもできるカフェとして生まれ変わりました。
「鴨台花壇カフェ」の店内
「鴨台花壇カフェ」のナチュラルで落ち着いた店内の奥では、「すがもプリン」を製造している様子が見られるようになっています。
店内からプリンを作る様子が見られる
「すがもプリン」製造のためだけにカフェを改装するという決断力に、「すがもプリン」に対する強い想いを感じます。
「すがもプリン」誕生の経緯を真剣な顔で聞く坂下さんと古田さん
「『すがもプリン』で使っている食材は、京都福寿園さんの宇治抹茶、井筒八ッ橋本舗さんの小倉あん、長野・小布施堂さんの栗あんなど、どれもその土地の一級品です。地方の老舗企業にご協力いただくのは簡単なことではありません。それをこうしてプリンに商品化して食べられるのは、本当にすごいことです」と、北條先生が「すがもプリン」の付加価値について教えてくれました。
大学生は「すがもプリン」の売り子として活躍!
坂下さんは、2019年秋の東京実習前に行われた合宿で、「すがもプリン」発売のニュースを聞いたと言います。
座・ガモールでの物産展の様子を話す坂下さん
「1年生の時の実習で行った長野県小布施町の栗を使っていると聞いて興味がわきました。2年生の東京実習の後半では、座・ガモール3号店で1年生の時に行った実習先の物産展を開いたのですが、自然と『すがもプリン」の販売には力が入りましたね」と坂下さん。
古田さんは、少し前まで座・ガモール2号店でアルバイトをしていて、その時に「すがもプリン」を売っていたそう。
座・ガモール2号店でアルバイトをしていた古田さん
「『巣鴨はおばあちゃんの原宿』といわれているように、座・ガモールは地元の方の利用が多く、お客さんは高齢の方が目立ちます。私たちみたいな若い世代は『小布施』と聞いてもピンときませんが、高齢のお客さんの中には小布施のことを知っている方が多くて、『小布施の栗を使っているのね』と、声をかけていただくこともありました」と古田さん。
「すがもプリン」についてイキイキと話してくれた坂下さんと古田さん。実習先の特産品の小布施の栗が使われていることで、「すがもプリン」をより身近に感じ、販売にも自然と力が入っていたようです。
「すがもプリン」はどんな味?
取材をしたのは2019年11月。発売が10月ということもあり、じっくりとプリンを味わうことができなかったという坂下さんと古田さんを交えて、5種類ある中から、「なめらか」と「粒あん」と「栗あん」を試食しました。
試食をした「なめらか」、「粒あん」、「栗あん」
プレーン味の「なめらか」は、舌触りのいい今時のプリンです。食感違いの「レトロ」は、少しかための昔懐かしいプリン。バニラビーンズ入りの本格派なのだそう。「粒あん」は抹茶プリンの上に、上品な甘さの粒あんが乗っている和なプリンです。あたたかいお茶と一緒に食べたら、ほっこりしそうです。「栗あん」は抹茶プリンの上に、なめらかな栗あんが乗っていて、一口食べた瞬間に栗のやさしい風味が広がります。
おいしいプリンに舌鼓を打つ2人
2人とも「おいしい」、「しっかり素材(栗や粒あん)の味がする」と大絶賛。この日の取材がお昼前ということもあり、あっという間に平らげてしまいました。
そして、最後に「すがもプリン」の今後の展望を伺ってみました。
「『すがもプリン』販売に関わる様々なプロセスは、大学を挙げて取り組む地域創生に関する研究活動や地域創生学部の教育理念とリンクする部分があり、これらとは切っても切り離せないプロジェクトの一つです。今は、まだフレーバーが5種類しかありませんが、今後は学生たちの力を借りて、各地の特産物を使った色々なフレーバーのプリンを開発して、『すがもプリン』をみんなで育てていきたいですね。そして、完成したプリンは座・ガモールだけではなく、逆輸入のように各地域で販売できたらと考えています」と北條先生。
「すがもプリン」計画について話す北條先生
今回、「すがもプリン」開発のお話を伺って、大学の取り組みと学生のやる気の2つが揃っているからこそ実現した、大変珍しい取り組みだと感じました。
その土地で育った特産品を使って新たな商品を作り、地域創生の一助になることを目指しながら、首都圏と地域との交流を活発にしたいと考えている大正大学の大プロジェクトは、今後も進化していくそうです。
“東京発”の地域の商品が一躍人気になる日も近いのかもしれませんね。