アートエリアB1が主催した【鉄道芸術祭vol.5 ホンマタカシプロデュース「もうひとつの電車~alternative train~」】という展覧会が行われていたのですが、とにかく驚くべきものばかり展示されていたんです。
今回は「鉄道芸術祭」という名にふさわしい、アートと鉄道が融合した新しい世界観に圧倒されてきました。
アートエリアB1に入って、まず出迎えてくれたのは今回の展示のプロデューサー・ホンマタカシ氏の「映像の世紀~alternative train~」(映像作品)。こちら写真・映像撮影が禁止となっておりました…。
続きまして、こちらもホンマ氏の作品「カメラオブスキュラ スタディーズ」がドーンと待ち受けていました。
「カメラオブスキュラ」というのは写真史において最も重要とされている光学装置のことで、カメラの原点とされています。
「カメラオブスキュラ」とは
原理はピンホールカメラと同じで、被写体の各点で乱反射した光線のうち、空間にあるピンホールの一点を通る光線のみを選び出し、平面に投射することで射影された像を得る、というもの。(Wikipediaより抜粋)
ホンマ氏はこのカメラの原点に改めて着目し、世界各地をめぐって撮影を行っていらっしゃいます。
そんなホンマ氏が京阪沿線3ヶ所(光善寺駅、寝屋川車庫、京橋駅界隈)にて撮影した作品が、実寸大の京阪電車をモチーフにしたインスタレーション空間で展示されているのが「カメラオブスキュラ スタディーズ」です。
この空間内では、幅広い音楽活動を展開する蓮沼執太氏が手がけた音響作品が流れていました。この音響作品はホンマ氏が作品を撮影した場所を巡りフィールド・レコーディングで採取した音を元に制作されており、京橋駅の雑踏や寝屋川市駅の車庫の整備工場の音、光善寺駅で流れるアナウンスなどを元に制作されたもの。聞いていると本当に駅のホームにいるかのような錯覚に陥りました。
窓から見える作品。まるで本物の電車に乗っているみたい
外側ではちゃんと行き先も表示されている
ホンマ氏が手がけているのはこれだけではありません。場内ではもうひとつ映像作品が上映されていました。それが、光善寺駅で撮影された写真を映像化した「列車の到着byカメラオブスキュラ」です。そして、向かい側の壁では、ベルリンを拠点に活動を展開する二人組、マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフの作品「蛍光オレンジの牛」が上映されていました。二つの映像が流れる空間は、ここが大阪市内の駅の中だということを忘れさせるほど静かで、どこか異世界のようでした。
写真左側が「列車の到着byカメラオブスキュラ」、右奥に進むと「蛍光オレンジの牛」が上映されていました
素晴らしい作品が展示されている中で、一際目を引いたのがこちら。
「NAZEtopiaと空飛ぶCUTEちゃん」
こちらは京都を拠点に活動するアーティストNAZE氏の作品。この作品は3つの要素からなりたっています。
・京都から大阪までの移動中に電車内やホーム等で人物・モノゴトを観察し、そこから妄想を膨らませ描かれたドローイング
・ストリートアートを彷彿させる壁面の描画作品
・日常的に収集している、街に落ちていた様々なものを用いて創りあげた独創的な鉄道模型空間
この鉄道模型を用いた空間がすごいんです。角度や高さによって見えてくる世界が変わるので、作品の周りをぐるぐる。立ったり、しゃがんだりしながら飽きることなく眺めていられます。実際に2台の電車が空間内を走っているのですが、この電車も独特の様相…!
個人的ベストショット!
かわいらしい謎の生命体(?)
この他にも、小山友也氏のイヤホンやヘッドホンの音漏れで踊る様子を撮影した「Obey individual languages.」や、黒田益朗氏の京阪沿線の宿り木を撮影した「宿り木調査記録」、ファッションブランドであるPUGMENTが電車内で居眠りする人に着目したインスタレーション作品「SLEEPING PASSENGERS」といった作品が展示されており、見応えのあるイベントとなっていました。
「鉄道芸術祭」と銘打たれていますが、「鉄道にあまり詳しくないから…」「芸術には疎くて…」なんて方でもなにも考えず、ふらりと行って楽しめるイベントで、わたしは鉄道にも芸術にも明るくないですが、すごく楽しめました! 当たり前ですが、自分の感性では絶対に生まれない作品ばかりで、見ていてわくわくしました。
例年、秋から始まる「鉄道芸術祭」。次回はどんなエッジの効いた展示を見ることができるのか・・・楽しみです!!