統一したビジュアルイメージで、
「ブランドイメージ」を醸成する。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第10回目となる今回は、明治学院大学の広報誌「白金通信」を取り上げます。
「白金通信」という媒体名称は、明治学院大学のメインキャンパスが位置する東京都港区白金台から取られたもの。白金台といえばバブル期に一部のセレブな女性たちが「シロガネーゼ」と呼ばれてもてはやされましたが、実際は庶民的な住宅も多く暮らしやすい街でもあります。
「白金通信」は少し小さめの判型でB5サイズ。紙質は手さわり感のあるマット系の用紙を採用しています。中面のデザインも徹頭徹尾やわらかい色合いと白場を活かしたレイアウトが貫かれており、しっとり落ち着いた印象は明治学院大学の持つイメージとも合致するのではないでしょうか。
ゆったり白場を持たせた清潔感あるデザイン
一方企画面は、卒業生へのアンケートや学内外のトピックス紹介、サークルやゼミの紹介に、数ページを割いた学生広報チームによる学生企画といった極めてスタンダードなもの。取り立てて注目すべき点が見当たらないといえばそれまでですが、逆にいえば押さえておくべきところはしっかり押さえていると捉えることもできるでしょう。
今回このコラムで紹介するにあたり、明治学院大学が発行する広報誌以外の媒体や、オフィシャルサイトも参照したのですが、驚いたのはすべてのメディアでビジュアルイメージがきちんと統一されているということ。これは大学が「社会に伝えたい大学のイメージ」をしっかり把握し、堅持しているからに他なりません。
白金通信とも統一がとれたデザインの大学案内(左)大学院案内(右)
明治学院大学といえば、2005年にアートディレクターの佐藤可士和氏を起用して全学的な「ブランディング」に取り組んだ大学です。一般的にブランドとは、消費者が抱くメーカーに対するイメージのようなもの。好意的な場合もあれば批判的な場合もあり、よりよいブランドを積極的に構築していこうという取組がブランディングというわけです。
佐藤可士和氏の手によるビジュアルアイデンティティ
ブランディングのためには社員一丸となった理念や行動の統一と共に、世の中に発信していくビジュアル要素を管理し統一していく必要があります。パンフレットでは陽気で快活な印象だったものが、同じキャンペーンのCMでは知的で寡黙な印象だと、消費者はメーカーにどんなブランドイメージを抱けばよいか戸惑ってしまいます。
特に大学は「教育」という一見すると形のないサービスを商品とするだけに、しっかりとしたブランドイメージの構築は長期的な経営という視点から考えても死活問題です。その点、「白金通信」を中心とした各種のツールは、「明治学院大学とはこのような大学なのだ」という確固たるスタンスを打ち出していると感じられます。
こういったブランディングは、歴史ある大学はもちろんですが、これから歴史を積み重ねていく新設大学にこそ必要な取組だといえるでしょう。どのようなイメージで歴史というレンガを積み上げていくのか。その舵取りは早い方がいいことは言うまでもありません。