ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

小学生も中高生も、夏休みは大学の先生からオンラインで学ぼう

2022年7月26日 / まとめ, トピック

いよいよ夏休み到来。子どもたちの長い休み、どう過ごそうか悩んでいませんか?

そこで今回は、今からでも間に合う、小学生や中高生を対象にしたオンラインの公開講座を紹介。しかも、いずれも受講無料! 大学の先生から学べる機会を、ぜひ活用してくださいね。

 

●駒澤大学 公開講座「夏休みこどもアカデミー2022」

8/1(月)~8/31(水)

komazawa

小学生を対象に「お盆って、なあに?」「東京湾の海苔ものがたり」など4つの講座を開講。期間中ならいつでも視聴することができます。受講は無料ですが、事前申し込みが必要(先着800名、8月21日〈日〉締切)。申し込むと「学習シート」がもらえるので、夏休みの宿題も片付いちゃうかも!?

詳細はこちら https://www.komazawa-u.ac.jp/event/2022/0707-12304.html


●群馬大学 第17回こども体験教室「群馬ちびっこ大学」

8/2(火)~8/22(月)
gunma

ぶくぶくと泡立つ「入浴剤作り」、簡単な3つの練習で挑戦「逆上がりができるようになろう!」、プログラムづくりが体験できる「AIでグーチョキパーをはんてい」など、バラエティー豊かな20講座がYouTubeに登場。申し込み不要で、気軽に受講できるのも魅力です。

詳細はこちら https://www.gunma-u.ac.jp/research/res003/g1960


●日本免疫学会「免疫ふしぎ未来」

7/31(日) ※8/31(水)まで一部アーカイブ視聴可

meneki

免疫について学べるイベントが7月31日(日)、日本科学未来館でのオンサイト(対面)とオンラインで開催に。免疫がかかわる現象を博士たちが解説する「ショートトーク」は、オンラインからでも質問OK。さらに見逃しアーカイブ配信もあり、要注目です。ほか、ライブ実験などのプログラムが当日限定で配信。視聴には事前登録が必要です。

詳細はこちら http://fushigimirai2022.umin.jp/



●大阪樟蔭女子大学「心のふしぎとサイエンス」

9月まで

osaka-shoin

同学心理学科が主催する、中高生から一般向けの公開講座をYouTubeで配信。実際に体験をしながら目の錯覚(錯視)が学べる「”みる”ことのふしぎ」、世界の楽器の音色が楽しめる「音と心のふしぎ」といった講座動画で、心理学の一端に触れることができます。

詳細はこちら https://www.osaka-shoin.ac.jp/univ/lecture/20210401/

 

自宅にいながらにして、全国各地の先生から学べるのがオンライン講座の魅力。今回紹介した講座はジャンルもさまざまで、筆者も気になる講座がアレコレと……。お子さんはもちろん、大人も楽しめそう。

このはか「ほとんど0円大学」では、オンラインで大学博物館を体験できる「なかなか出かけられないアナタに伝えたい大学博物館オンラインミュージアム」も紹介。こちらも参考にしてくださいね。

社会人だって学びたい! 大学のおとな向け教育プログラムを編集会議でゆるゆるトーク

2022年4月14日 / コラム, 大学はこう使え!

ほとゼロでは週1回、編集会議があります。
そこで企画にあがったのが、特色ある社会人向けの教育プログラム。
ガチな学びからテーマが特徴的な講座まで、各サイトを見ながら「いろんな講座があるねぇ」と、ゆるゆる(好き勝手に)話していたのですが、よく考えれば編集部員だって社会人、受講対象者です。これらのプログラムをどう見たのか、せっかくなので、ゆるトークの一部をご披露したいと思います。
※特色を重視したため、募集終了のプログラムも含みます。

キャッチーすぎるネーミング、時代にあったアートの学び
京都芸術大学「手のひら芸大」

名前はカジュアルですが、実は京都芸術大学の通信教育学部の名称で、大学卒業資格の取得が可能。芸術教養学科、アートライティングコース、書画コース、イラストレーションコースの4コースがあります。

京都芸大

編集会議のゆるトークでは…

「手のひら芸大という、ネーミングがいい。ネーミングに対する大学の意識の高さを感じるよね」
「ネーミングに惹かれて調べ始めたら、サイトのデザインもいい」
「しかも学費は17万!(全額と思いこんでいたようですが実際は1年間17万円です。サイトにもちゃんと書いてある)」
「入学試験はなく、出願資格があれば誰でも入学できるそうですよ」
「大学の通信教育で学んだ経験があるけれど、結構大変。意思が強くないと大変かも」
「でも大学に行かず、オンラインですべてが完結するみたい。サイトを見ていたら、iPadで作品づくりをしていて、カジュアルな感じがいいな、と」
「iPadが手元にあったら、違うもん見てしまいそうや……」

●京都芸術大学 手のひら芸大


ワイン好きが夢見る!? 大学院レベルのプログラム
山梨大学「ワイン・フロンティアリーダー養成プログラム」

日本で唯一のワイン専門の教育・研究機関「ワイン科学研究センター」を有する山梨大学。この養成プログラムは、文部科学大臣認定「職業実践力育成プログラム」に認定されています。

山梨大
編集会議のゆるトークでは…

「これガチなやつですよね。大学院カリキュラムを導入したプログラム、とHPの概要にある」
「ただの経営学ではなくて、ワイナリー経営学とか、内容がピンポイント。ソムリエ学とか、国際ワイン学、日本ワイン学とか……」
「出願資格は山梨県内においてワイン製造業務およびワインブドウ栽培を2年以上従事、あとは山梨大学で出願を許可された方」
「しかも、募集人数は若干名」
「めちゃくちゃハードル高いやん」
「費用は年間14万。『手のひら芸大』と同じぐらいです」
「でも、こっちの方が惹かれるなぁ(酒飲み発言!)」
「しんどそうだけれど、ちょっと気になる。将来、農業に携わりたいなぁと、密かに思っているので。農業、手堅いですから」

●山梨大学ワイン・フロンティアリーダー養成プログラム


ビジネスの基礎を学び直して、キャリアアップの一歩に
日本女子大学「リカレント教育課程」

2007年からリカレントプログラムを展開している同大学。「再就職のためのキャリアアップコース」(1年間)と、「働く女性のためのライフロングキャリアコース」(半年間)の2コースがあります。

日本女子大

編集会議のゆるトークでは…

「サイトを見ると、“女性の職業生活における活躍を後押ししてきた”とあります。キャリア形成に注力してきた自負があるようですね」
「『働く女性のためのライフロングキャリアコース』というのが気になる」
「約7カ月のプログラムで、入学金3万3,000円、受講料は13万5,000万円ですね」
「生命保険のネーミングのような軽いノリかと思ったら……」
「自由選択科目ですけど、市場調査論とか管理会計の基礎とかがあって、内容はハード」
「経験値でこなしている人も多い分野のような気がするので、大学でしっかり学べるのはいいですね」
「内容が難しくて、編集部の感覚からは遠い感じがするけれど、万人受けはしそう(笑)」
「万人に含まれない編集部……苦笑」
「男女問わずビジネスに必要な内容だから、どのあたりが女性限定というのが気になるけどね」

●日本女子大学 リカレント教育課程


アーカイブ動画あり! 歴史の授業で学ばない忍者の実態に迫る
三重大学「忍者・忍術学講座」

国立大学のホームページで、大マジメに表示される「忍者」の文字! 三重大学と上野商工会議所、伊賀市が連携し、忍者文化による地域活性のために忍者研究を行っているのだそう。同大教員をはじめとする忍者の研究者が講師に登壇します。

三重大

編集会議のゆるトークでは…

「(過去の講座テーマを見ながら)忍者の天気予報とか、おもしろそう」
「通信手段で使っていたかもしれない炙り出しを、現代科学からアプローチするのが興味深いです」
「忍者だけで、これだけネタがあるのがすごい」
「動画を公開しているのも良いね」
「おもしろそうだけれど、結局、これって何の役に立つんだろう。子どもの心はわしづかみだと思うですけど(そんな、元も子もない……)」
「ポップカルチャー的な意味では、忍者って親しみがあるけれど、日本史にも出てこない。どこまでがリアルか、それがわかるだけでもおもしろい気がします」

●三重大学 忍者・忍術講座


座学に見学に利き酒も! めざせ焼酎の達人
鹿児島大学「焼酎マイスター養成コース」

焼酎を通じて鹿児島県の魅力を発信する人が対象ということで、飲食や酒販に関わらない人でも受講OK。鹿児島大学農学部農学部附属焼酎・発酵教育研究センターと鹿児島酒造組合、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)の連携講座です。

鹿児島大学
編集会議のゆるトークでは…

「焼酎マイスターという響きがいいよね」
「2022年度は、1カ月ほどで申し込みが定員に達したみたいです」
「結構なコマ数があるね、これ。講義時間の合計は97.5時間。(募集案内を見ながら)製造や文化、あとは製造見学も。おいしい飲み方を伝えるだけじゃなくて、焼酎で仕事をする人を育成する役割もありそう」
「利き酒がありますね! 楽しそう(真面目な科目はそっちのけ)」
「行ったからには、もう泊まりで……」
「土曜開講みたいだから、鹿児島に住まなアカンのとちゃう?」
「だとすると、鹿児島周辺の人しか申し込めないのに、定員が埋まるってすごいかも」
「鹿児島県民は愛がありますね、焼酎に」

●鹿児島大学 焼酎マイスター養成コース


レジャーだけじゃない! 地域にフォーカスした温泉学
別府大学「別府“温泉”大学」

大分県の別府といえば、言わずとしれた温泉地。8つの温泉エリアがあり、源泉数は日本随一だそう。そんな地にある別府大学では、地域のウリである温泉を総合学問領域として研究し、地域への還元をめざしています。

別府大学

編集会議のゆるトークでは…

「たしか別府大学にはキャンパスに温泉があったと思うんだよね。学祭のときは有料だけれど、入れたと思う」
「大学名に『温泉』を入れて展開してしまうのが、すごい。温泉がセカンドネーム」
「シンポジウムの動画があがっています。ただ、これは概論なので個別の講座のほうが面白そうですけれど(サイトいわく、個別講座の動画も公開予定の模様)」
「地獄蒸しとか。食に地球エネルギー、地域経済など、切り口がいろいろありますね」
「講師の方の『湯治ぐらし』という所属が気になります」
「外部リンクですが『ONSEN WAKIPEDIA』というネーミングもいいですよね」
「2021年度は9月スタート。今年もあるのかな……」
「今後の別府大学に期待ですね」

●別府大学 別府“温泉”大学

 

学生にとって4月は入学・進級の時期。
社会人の私たちも学生のスケジュールに便乗して、何か始めたくなりますよね。そんなとき大学なら、あなたの知識欲を満たしてくれる社会人向けのプログラムが見つかるかもしれませんよ。え、私ですか? そうですね……枯れ続ける情緒的な感性(!)を取り戻すべく、学びの春にしたいと思います。

編集長がBSフジから「大学博物館」の取材を受けたので、ほとゼロでも大特集!

2022年3月29日 / まとめ, トピック

3月27日に放送されたBSフジの科学ドキュメンタリー番組『ガリレオX』のテーマは「大学博物館へいらっしゃい~ニッチだけど楽しい!とっておきの知的体験~」でした。こちらの放送でなんと! 「ほとんど0円大学」の編集長が、大学博物館の特徴や楽しみ方について取材を受けたのです!

そこで今回はテレビ取材を記念して、「ほとんど0円大学」が勝手にコラボ!? 大学博物館に関する記事をまとめてみました。まずは『ガリレオX』に登場した4つの大学博物館からご紹介します。
※リンク先の施設情報は取材時のもの。博物館HPなどで最新情報をご確認ください。


●明治大学博物館

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ほとゼロでは、2019年開催の特別展『見えているのに見えていない!立体錯視の最前線』を取材。「明治大学先端数理科学インスティテュート」には、錯視研究の第一人者である杉原厚吉先生が所属されてるのです。先生によると、錯視は日常生活とも関係があるそうで……。記事では錯視を体験できる動画も紹介。たった5秒の動画なのに、筆者はしっかりだまされました。必見です。

記事はこちら 見たら絶対だまされる! 明治大学博物館の立体錯視特別展!」

●日本工業大学 工業技術博物館

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展示品の約7割を動態保存(動作・運用可能な状態で保存)し、中には実際に使われていた蒸気機関車も! しかも、蒸気機関車はキャンパス内の軌道を走ることがあるというから、見逃せません。所蔵品の178点が国の登録有形文化財、63点が近代化産業遺産として登録され、明治初期の工作機械(機械をつくるための機械)や町工場の再現展示から、日本の工業の歴史を垣間見ることができそうです。

記事はこちら 蒸気機関車が走る!明治の機械が動く! 日本工業大学の工業技術博物館はスケールが大きい

 

●龍谷大学 龍谷ミュージアム

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ほとゼロに龍谷ミュージアムの取材記事はいくつかありますが、今回取り上げる記事は『日本の素朴絵-ゆるい、かわいい、たのしい美術-』に即決です(だって、癒やされるんだもん)。例えば、室町時代の絵巻物のユルさといったら……。昔の人もこんなにおちゃめな絵を描いていたのか、と妙に親近感。記事には展示品の写真も多いので、写真を見て和むもよし、読んでさらにおもしろい1本です。

記事はこちら ゆる・かわ・キッチュな作品でときめこう!龍谷ミュージアム「日本の素朴絵」展

 

●大阪大学総合学術博物館

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真空管計算機など豊富な学術資料のほか、大阪大学を語る上で欠かせない江戸時代の学問所「懐徳堂」と「適塾」(福沢諭吉を輩出!)の資料や、ノーベル賞を受賞したあの研究者の業績など、同大学にまつわるアレコレを多角的に紹介。中には、博物館がある豊中キャンパスで発見された「マチカネワニ」の化石標本の展示もあります。マチカネワニとは、一体……? 詳しくは記事をチェック。

記事はこちら 郊外型大学ミュージアムで深呼吸。大阪大学総合学術博物館


ここまでは、『ガリレオX』に登場した大学博物館でしたが、最後にお届けするのは、コロナ禍で注目された「オンラインミュージアム」。大学の所蔵品をパソコンやスマホで気軽に見ることができます。

 

●大学博物館オンラインミュージアム

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多くの大学が展開しているオンラインミュージアムから、ほとゼロ編集長が個人的にグッときたものをピックアップ。当記事の冒頭で紹介した明治大学博物館も、オンラインミュージアムを設置しています。各大学ともオンラインならではの工夫された展示で、日本史や演劇など多彩なラインアップも魅力です。
記事はこちら 大学はこう使え! 第18回 文化の秋なんて言いながら、なかなか出かけられないアナタに伝えたい大学博物館オンラインミュージアム!

 

大学が所有する貴重な資料に、オンラインでも出合える時代になったとはいえ、やっぱり本物から感じるものは格別なはず(筆者はマチカネワニが見たい!)。大学施設の中でも、一般に広く門戸を開いているのが大学博物館。春のおでかけの候補にいかがですか?
そうそう。ほとゼロ編集長が取材を受けたBSフジ『ガリレオX』は、2022年4月3日(日) 午前11時30分から再放送があるようなので、こちらもぜひ。

2022年に乾杯!ホトゼロ編集部による大学発のクラフトビールとワインの試飲レポート

2022年1月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

「奈良先端科学技術大学院大が、発酵力を高めるビール酵母を開発したみたい」
きっかけは、編集会議での編集長の一言でした。
「ほかに大学発のビールがあるなら、集めて飲み比べをするのもいいかもね」。そんな、ゆる~い流れで決まった大学発のビール試飲会。今回は、大学発ワインも盛り込んで、その感想をお届けします。「2022年に乾杯!」

ビール好き編集部員が3種類を厳選

企画はゆるやかに決まりましたが、ビール好きの筆者によるリサーチは誰よりも真剣。厳選の結果、企画のきっかけとなった奈良先端科学技術大学院大「かぐやま」をはじめとする3種類を酒販店などで購入しました(大学で販売はしていないので要注意)。その3種類がこちら。大学名に続くのは、醸造したビール会社です。

  • 奈良先端科学技術大学院大学×ゴールデンラビットビール「かぐやま」
  • 東京薬科大学×高尾ビール「やまもも」
  • 石川県立大学×金澤ブルワリー「BOSAI BEER(防災ビール)」

それではさっそく試飲を始めましょう。

re試飲会

試飲会は納会も兼ねてホトゼロオフィスで開催しました

 

発酵力が高い酵母で淡い味わいの奈良先端科学技術大学院大

まずは、奈良先端科学技術大学院大学が開発に携わり、2021年7月発売のビール「かぐやま」から。同大先端科学技術研究科バイオサイエンス領域ストレス微生物科学研究室と奈良市にあるゴールデンラビットビール社の共同研究で生まれたビール酵母を使ったものです。醸造時に酵母の発酵力アップが期待できる「プロリン」を多く含むビール酵母ということで、酵母独自の味わいだけでなく醸造期間の短縮にも一役買いそう。

グラスに注いでみると…。

1奈良先端科学技術大学院大

 

“え、濁ってる!?”
慌ててラベルを読むと、「酵母入りのため、濁りが生じたり沈殿物が残っている場合がありますが、品質には問題ありません」。なるほど、それなら一安心。

では、乾杯! 味わいが淡いので、ビールのガツンとした感じが苦手な人には向いているかも。アルコール分も4.5%ですしね。「後味にほんのりビールの苦みがきて、飲み進めると印象が変わる」という声もありました。

東京薬科大学はキャンパスに生息する植物由来の酵母を使用

次に、東京薬科大学と高尾ビールが共同開発した「やまもも」を抜栓。
使われているのは商品名の通り、やまももの酵母です。同大生命科学部食品科学研究室では、キャンパス内に生息する植物や果実から得られた出芽酵母菌に「東薬花の酵母」と名づけ、研究を行っているそう。ビールのラベルによると、学内に生息するやまももから単離培養した酵母に加えて、やまももの実、同大がある東京都八王子市産のやまぶどう、ブルーベリーを発酵させているとのこと。ちなみに、ビールを醸造する高尾ビールも八王子市にあることからコラボが実現、第一弾の「やまゆり」に続いて、「やまもも」は第二弾としてリリースされました。

2東京薬科大

 

さて、試飲の感想は? 「香りがフルーティーやねぇ」という声があちこちから。やまもも、やまぶどう、ブルーベリーとさまざまなフルーツが使われているだけあって、たしかに香りが華やか! ところが飲んでみると、香りをいい意味で裏切るすっきり後味。ちょっとクセになりそうな、個人的にはゆるり、ダラダラと飲みたいビールでした。

ガスとビールの製造を循環させる石川県立大学

最後の1本は、石川県立大学が金澤ブルワリーとタッグを組んで誕生した「BOSAI BEER(防災ビール)」です。

「ビールなのに、なぜ防災?」と不思議に思うところですが、調べて納得。同大生物資源工学研究所では、雑草や廃棄される農作物を牛の胃液内の微生物を用いてメタン発酵し,都市ガスや電気を生産、さらに地域の防災拠点で活用するための研究を行っているのだそう。このメタン発酵で排出される液を肥料に学内でビールの原料となるホップを栽培し、そのホップを使って金澤ブルワリーから2021年8月に発売されたのが「BOSAI BEER」なのです。なお、商品の売り上げの一部は、防災研究に使われます。

re3石川県立大

 

名前は“硬派”ですが、ヴァイツェンらしいフルーティーな味わい。部内からはラベルの原材料に“はちみつ”の文字を見て「たしかに、香りがはちみつっぽいかも」という声や(ラベルに影響されている気がする)、「3種類の中で一番なじみ深い味」という声もありました。

re3防災ビールラベル

プロジェクト情報を盛り込んだ「防災ビール」。ラベルイラストもエネルギーの大切さを伝えるシーンが絵本タッチで描かれていました


高知大学は地域協働でブルワリーワインを開発

今回はビールだけでなく、高知大学地域協働学部の学生が農家と開発した「里人(さとびと)ブルーベリーワイン」もお取り寄せ。

高知県といえば日本酒のイメージが強いですが、ワイン、それもブルーベリーのワインとは…おしゃれ!
こちらは地域活性化の一環として製造しているもので、学生がブルーベリーの栽培を生産者から学ぶほか、キャンパス近くのカフェでの販売、百貨店に営業し販路を拡大しているというから驚きです。

re4高知ワイン

撮影しているときから、ブルーベリーの香りが周囲に広がります。
飲んだ編集部員からは「ジュースのように軽い」「タンニン控えめで飲みやすい」という感想があがりました。撮影後に飲んでみると、たしかにブドウのワインより渋みは控えめですが、ジュースではないです、ワインです! 食後のチーズに合う印象なので、家飲みの手土産によさそう。ちなみに、飲み口は軽いですがアルコール分9%(!)、飲みすぎ注意です。

最初は「消費者ニーズを学生が調査して、その声をメーカーが取り入れて誕生したビールが多いのかな?」と思いながら、リサーチを始めた大学発のクラフトビール。ところが調べてみると、独自の酵母開発や研究の副産物など、大学の研究の延長線に誕生したビールが多いことを知った今回の企画でした。興味深くて、個人的に深堀りしてしまいそうです(飲む方でも)。

気軽に大学を応援できて、選べる返礼品も。京都市のふるさと納税には、大学生への希望がつまっていた

2021年11月18日 / 大学の地域貢献

自治体と使用目的を選んで寄附ができる「ふるさと納税」。
テレビコマーシャルなどで目にするほか、返礼品にご当地の産品を受け取れることでご存知の方も多いはず。

ふるさと納税の申請は、年末に向けてこれからがハイシーズン。というのも、ふるさと納税は年度ではなく、年ごとの申請なので、12月31日が近づくにつれて、申請が増加していくのです。かくいう筆者も、12月の駆け込み申請が毎年の恒例行事(まったく自慢できませんが、大晦日に申請したことも……)。

 

今年はもう少し早く申請しようと、ふるさと納税のリサーチをスタート。そこで思ったのです。「大学に関係したふるさと納税って、ないの?」

調べてみると、返礼品に大学由来の商品が返礼品に使われているほか、ふるさと納税の制度で大学に寄附ができる自治体が意外とあるじゃないですか! 中でも目に留まったのが、今年4月から大学への寄附を導入した京都市。さっそく、京都市役所に話を聞きに行きました。

レトロ建築が美しい京都市役所

レトロ建築が美しい京都市役所

 

“ちょっと面倒”という思いをふるさと納税が取り除く

お話をお聞きしたのは、大学との地域連携を担当している京都市総合企画局総合政策室・大学政策課長の中小路正憲さんと、大学企画係長の東祐大さんです。

ふるさと納税のチラシを持つ中小路さん(左)と、大学との取り組みをまとめた冊子を手にする東さん(右

ふるさと納税のチラシを持つ中小路さん(左)と、大学との取り組みをまとめた冊子を手にする東さん(右)

 

今回、京都市で話を聞きたかった理由は2つ。
1つは「さとふる」「ふるさとチョイス」といった「ふるさと納税サイト」から寄附ができ、返礼品がもらえること。実はふるさと納税で特定の大学に寄附できる自治体はいくつかあるのですが、「ふるさと納税サイト」を導入し、さらに返礼品がもらえてしまうのは珍しいのです。そして、もう1つの理由は、大谷大学、京都女子大学、京都橘大学に“指名寄附”ができること。京都市には多くの大学があるのに、なぜこの3大学なのかが不思議だったのです。

 

まずは、大学への寄附に“ふるさと納税サイト”を導入した理由から。京都市もほかの自治体同様、産業振興や景観保全、子育て支援など全部で23種類の使いみちを用意しています。その中にあるのが3大学への寄附。ほかの自治体で大学を指名した寄附はほとんど見かけませんが、なぜ京都では導入しているのでしょう。


「京都市はこれまでにもふるさと納税をいただいてきましたが、市民が他の自治体に寄附をする金額の方が多い状態が続いています。そこで京都市では、2020年度からふるさと納税の取組を本格的に見直し、返礼品も拡充しました」と中小路さん。
テコ入れのために、返礼品に京都肉やおせち料理・京料理のお食事券、伝統産業品などを用意するなど、その力の入り方は相当なものです。

京都市HPから、ふるさと納税返礼品のイメージ。その数1,713件!(2021年11月4日時点)。 5,000円以上の寄附で返礼品が受け取れます

京都市HPから、ふるさと納税返礼品のイメージ。その数1,713件!(2021年11月4日時点)。 5,000円以上の寄附で返礼品が受け取れます

 

さらに中小路さんは続けます。「京都市には37の大学・短期大学があり、市の人口の1割に相当する14.7万人の学生が学ぶ“大学のまち・学生のまち”です。市をあげてふるさと納税への機運が高まったことをきっかけに、大学支援にも活用することにしました」

 

でも、それぞれの大学も寄附を受け付けていますよね。なぜ、市が窓口に ?
「大学からは、個人の方からの寄附に、より力を入れていきたいといった意見を聞いており、また、個人の方からは、大学への寄附は手続きが難しいといった意見を聞いています。そこで、ふるさと納税サイトで間口を広げ、個人で寄附をする方の負担を軽くしようと考えました」

たしかに、大学に直接寄附する場合、まず浮かぶのは「面倒だな」という気持ち。というのも、ふるさと納税も大学への直接寄附も、所得控除や税控除がありますが、大学への直接の寄附は確定申告が必要。ふるさと納税サイトからの寄附は、ネット通販のように気軽な上に、会社員がふるさと納税をする場合、ほとんど手続きが不要なのです(条件があるのでご確認を)。

 

ちなみに、中小路さんによると「大学への寄附は全額、大学が使いみちを考えて使うことができます。一方、ふるさと納税は自治体が窓口なので、京都市の場合、大学と締結した協定の内容に沿って寄附が使われます」というように、同じ寄附でも大学での使われ方に違いがあるそう。2021年3月の連携協定では、大谷大学、京都女子大学、京都橘大学と連携協定を締結。大学の地域貢献や学生のまちづくり活動にふるさと納税を活用することが発表されました。

約30年前から“大学のまち”を育て続けてきた京都市

ここでもう1つ聞きたかったのが、大谷大学、京都女子大学、京都橘大学に“指名寄附”ができること。京都市はこの3大学と連結協定を締結し、このふるさと納税の取り組みを進めています。37大学もあるのに、なぜこの3大学なのでしょうか。

 

これは東さんが教えてくれました。
「京都市では、市内の全大学・短期大学が加盟する『大学コンソーシアム京都』と協働で、『学まち連携大学』という事業を促進してきました。この事業は、地域連携活動に取り組む大学を支援するもので、平成28年から第1期として4年間、6大学を採択し、活動を後押ししてきました」

その活動は、地域連携型教育プロジェクトの実施や社会貢献、学生の地域連携活動拠点の確保など、各大学が特色をいかしたもので、内容はさまざま。今回、ふるさと納税の使いみちとして指定できる大谷大学、京都女子大学、京都橘大学の3大学は、この「学まち連携大学」と関係があったのです。

 

さて、3大学のふるさと納税の使いみちには「大学のまち京都・学生のまち京都を応援」と表示されています。先ほどからの話では、京都が大学のまちであることは納得なのですが、では「大学のまち京都・学生のまち京都」というのは、いったい……?

京都市HPから。大学名の後に「大学のまち京都・学生のまち京都」という言葉が続きます

京都市HPから。大学名の後に「大学のまち京都・学生のまち京都」という言葉が続きます

 

「キャッチフレーズのようなものです。“大学のまち京都・学生のまち京都”のもと、地域活性化に取り組む学生や、中学生、高校生に京都の大学をPRする学生など、大学のポテンシャル、学生のチカラで、京都市の盛り上げに携わっていただいています」

 

“大学のまち”というビジョンは、平成5年(1993年)に誕生。約30年という歴史があるのには驚きです。「工業等制限法(工場や大学の新設を制限する法律)により、市内にあった大学が新学部を設置する際、京都市外に流出し、危機感を抱いたのがきっかけです。普通、大学同士は“商売敵”というイメージを持たれるかもしれませんが、京都市はみんなで盛り上げようという空気があるんです」と東さん。

大学の枠を超えた多くの取り組みを教えていただく中で、筆者が興味を持ったのが「京都世界遺産PBL科目」。京都市にある世界遺産を教材に授業が行われ、単位が取得できるというもの。歴史のまち京都ならではの、スペシャルな学びですよね。学びも課外活動のサポートも、とにかく手厚いのが印象的でした。

京都市政に大きく影響!?  「3/4」と「2割」という数字

「新型コロナによって、オンライン講義が増えましたが、京都での学びを大切にしたい。そのために、安心・安全なキャンパスを目指していきますし、それが京都というまちの安心・安全につながります。そして、学生生活が終わっても、京都市で住んでほしい、働いてほしい。それが市の目指すところです」と東さん。

 

大学との協働から、市の行政活動に関わるミッションへと、話が壮大になってきましたが……。

「京都市には2つの数字があります」と、中小路さんが話を引き取ります。その数字とは、3/4と2割。「京都の大学に通う学生のうち、3/4は京都以外の出身。そして2割が京都で就職されます。ということは、8割は京都府外に出ていってしまうのです」
東さんも「卒業後に京都市で働いてほしい、住んでほしい。できれば子育てもしていただきたい。京都市の成長戦略として、若者に選んでもらえるまちを、これからも目指していきたいと思います」

 

ふるさと納税をつかった大学への寄附を聞きに来たはずが、京都市の大学連携にそんな重要なミッションが隠されていたとは。最後に、ふるさと納税を活用した大学支援の今後の展望は?

「ほかの大学の声を聞きながら、対象大学を拡大したい思いはあります。それから返礼品。ゆくゆくは、大学由来の商品やサービスを導入できれば。京都の大学を卒業された方が手掛けるアイテムもいいですね」

寄附を集めるのはもちろん、ふるさと納税を活用して、京都市が「大学のまち」を印象づけ、盛り上げようとしていることを実感。ふるさと納税という手札も増え、“大学のまち京都・学生のまち京都”はまだまだ進化しそうです。

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