新型コロナウイルスの蔓延によって、日々いろんな我慢を強いられているが、いくつかいいこともある。たとえば、テレワークが世に浸透してきたり、たとえば、インフルエンザ感染者が激減したり。大学などによるオンライン講座が急増したのも、そんないくつかある、いいことの一つだろう。ほとんど0円大学でも、ここぞとばかりにオンラインの取り組みを取材させてもらっている(これとか、これとか、あとこれとか)。今回は、そんなオンライン講座のなかでも、コロナ禍&アフターコロナを考えるヒントになりそうなものをいくつかピックアップしてみた。ちなみに、すべて無料である!
立ち止まって、考える(京都大学)
ホトゼロとも絶賛コラボ中の京都大学人社未来形発信ユニットが主催するオンライン講義。人文・社会科学の研究者たちが、コロナ禍やアフターコロナを考えるヒントになる知恵や視座を提供してくれる。2シーズン実施された講義には、合計20名以上の研究者が登壇しており、一つのテーマに対して1回から5回に分けてみっちり語り尽くしてくれている。ちなみに1回の講義は1時間程度で、講師はすべて京都大学の研究者。正直、全部のオンライン講義を聴いたら、さぼりがちな京大4年生の1年分ぐらいの情報量になるんじゃないだろうか。これだけのものを、無料で提供する京大の懐の広さには、ただただ感謝である。
►第1シーズンの動画リストはこちら ►第2シーズンの動画リストはこちら
京都精華大学 講演会アーカイブ(京都精華大学)
次に取り上げるのは京都精華大学の講演会アーカイブ。コロナ・パンデミック以前のものもいくつかあるのだが、とにかく登壇者が豪華。坂本龍一、竹宮恵子、内田樹、ダライラマ14世などなど、さらにホスト役でしばしば登場するウスビ・サコ学長も日本初の黒人学長であり、著書も多い有名人である。アートや表現に関わるものから、BLM運動、フェミニズム、分断社会といった、これからの社会を考えるヒントになる動画もたくさんあるので、ぜひのぞいてみて欲しい。
►動画リストはこちら
シリーズ動画「博士の回答」(近畿大学)
こちらは、子どもが思いつくような素朴で切れ味鋭い疑問について、近畿大学の研究者が真正面から答える動画企画だ。なんとこれら動画は、すべて研究者たちが自ら企画・制作しているのだとか。内容からすると、あまりコロナと関係ないのでは?と思ってしまいそうだが、実はそうでもない。というのも、コロナによって小・中・高への出張授業ができなくなった状況を受け、子供たちの学ぶ意欲を維持・向上してもらうきっかけづくりのためにはじめた企画だからだ。内容としても、大人が見ても十二分に楽しめる。動画が生まれた経緯や精神も含め、アフターコロナのヒントにして欲しい。
►動画リストはこちら
Choose大学(Choose Life Project)
研究者たちのオンライン講座を楽しめるのは、大学のウェブサイトだけかというとそうでもない。むしろ大学以外が運営しているものの方が、いち大学の枠に収まらない魅力があったりする。「Choose大学」もまさにそんな魅力が詰まった、オンライン講座の一つになる。
主催するのは、「Choose Life Project」という、テレビ、映画、ドキュメンタリーを制作している有志による動画配信プロジェクトのみなさま。講座は毎週土曜日13時からの30分間。アーカイブもあるので見逃しても安心だ。テーマは国家や政治、民主主義など。ここだけ聞くと難しく感じてしまうかもしれないが、登壇するのはさまざまな大学や研究機関の若手研究者たちで、話し口調もフレンドリーで、内容もとてもわかりやすい。政治なんて知らないわからない、そう思っている人にこそ見て欲しいオンライン講座である。
►動画リストはこちら
WIRED UNIVERSITY(WIRED)
大学以外が主催するオンライン講座をもう一つ。こちらはテクノロジーによって「未来がどうなるのか」にせまる雑誌『WIRED』(日本版)の企画「FUTURES LITERACY」から生まれた動画企画になる。利他学、発酵メディア学、リモート学、プライヴァシー・デザイン学などなど、WIRED編集部が注目する研究者たちが語る学問の話は、どれも目新しく刺激的。これからの社会を生き抜くために、ぜひこの動画群で未来のリテラシーを身につけて欲しい。ちなみに、第1回に登壇し、利他学について語った伊藤亜紗先生は、ほとぜろでも取材をしている。興味がある方は、こちらもぜひ!
►動画リストはこちら
いかがだっただろうか。本記事をまとめるにあたり、改めて調べてみたが、昨今のオンライン講義の充実ぶりは、本当にすごい。ここで取り上げたのはごくごく一部で、実際、探せば探すだけ出てくるような状態だ。まとまったシリーズ企画もあれば、オンラインで開催されたシンポジウムや公開講座を収録した単発ものもある。講義系の動画のいいところは、音声だけでもわりかし楽しめるところなので、通勤や家事、散歩のお供にしてもいいだろう。コロナ禍が生んだ恩恵を自分のスタイルで役立てて欲しい。