大学の研究は専門家だけがやるもの、そんなものは今や古い考えです。今は研究者と市民が協働して研究を進めるプロジェクトが広がっています。京都大学の「みんなで翻刻」もその1つ。一文字からでも参加できる市民参加型の研究プロジェクトです!
「みんなで翻刻」は以前紹介したくずし字学習アプリ「KuLA」の流れを汲むプロジェクトです。くずし字学習に主眼を置いた「KuLA」と少し違い、活字化されていないさまざまな研究資料を市民の力で翻刻※していこうというもの。
※翻刻
写本や版本などを原本通りに活字に組むなどして新たに出版すること。ここでは写本や版本に書かれたくずし字を読んで活字にしていくことを指します。
中心となっているのは京都大学の古地震研究会。大きな地震は数十年、数百年という単位で周期的に起こると考えられているので、地震研究では古い史料を読み解くことが必要です。しかし、地震研究者のなかでくずし字が読める人は少ないのが現状。そこで史料を調査研究に適した活字資料にするため、くずし字が読める市民に協力してもらおうというのがこのプロジェクトの目的です。
こういった市民の力を借りる研究活動は、海外でも広がりを見せています。今回は翻刻に市民の手を借り、その後の研究は専門家が詳しく行うという方法をとっています。
プロジェクトへの参加はとても簡単。まず「みんなで翻刻」ウェブサイトへ行き、会員登録をします。
中央にある「参加する」ボタンから参加可能
登録はTwitterやFacebookのアカウントを連携すれば完了です。会員登録後、アップロードされている史料の翻刻に参加することができるようになります。
ログイン後のダッシュボード。翻刻文字数ランキングや翻刻された資料がほぼリアルタイムに表示されます。(モザイクはほとゼロ編集部で加工)
翻刻は自分がわかる範囲でOK。また、自信がない時は別の人に添削をお願いすることもできます。
参加したい史料は左メニューの「史料一覧」から探します。史料の中には既に翻刻が済んでいるものも。まだ作業中の史料を見つけて翻刻しましょう。
翻刻済みの史料には判子が押されたようになっているのでわかりやすい。翻刻済みの史料を閲覧もできる
翻刻画面。右の資料を見ながら左に文字を打ち込んでいく
登録されている史料は高解像度なので、わかりづらい部分は拡大して確かめながら作業ができるのも魅力。
最大でこれくらいまで拡大ができる
また翻刻を始める前に「翻刻ガイドライン」をチェックしましょう。こちらのマニュアルを確認し、ルールに沿って翻刻していくことで、利用しやすい翻刻データになります。
翻刻ガイドライン。合字や旧仮名のあつかいなどが記載されている
さらにこのアプリの特長は、KuLAでも搭載されていた「学ぶ」機能を利用できること。KuLAと同じ教材が使用されているので、相互で効率的に学ぶことができます。
「学ぶ」メニューの画面。KuLAと同じくテストで知識を確かめることもできます
さらにくずし字の質問などができる「つながる」機能もあり、わからないところを質問したり、返答したりすることで交流もできます。「つながる」機能は掲載されている史料以外のものでも画像がアップでき、くずし字をきっかけに気軽に交流を楽しめます。
KuLAのアプリはくずし字を読む力をつけることが主でしたが、こちらはその力を使ってプロジェクトに参加できるのがおもしろいです。自分の力が将来、大きな研究の支えになるかも?!
また、2017年3月からニコニコ動画で【みんなで翻刻してみた】プロジェクトがスタートします。
第1回放送は3月1日(木)21:00~。初級編としてくずし字や翻刻についてわかりやすく解説。
みなさんもぜひ一度チャレンジしてみてください!