ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2022.7.12
  • author:おだのぶこ

誰でも閲覧できるデータが2800件以上! お茶の水女子大学「理科自由研究データベース」を運営する千葉和義先生に自由研究のヒントを聞きました

今回お話を伺った研究者

千葉和義さん

お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科教授。

専門分野は発生生物学、細胞生物学。同大学「サイエンス&エデュケーション研究所」の研究所長として、科学教育と科学コミュニケーションの振興活動にも従事。『どうしてオナラはくさいのかな?: 人に聞けない!? ヘンテコ疑問に科学でこたえる!』(評論社)、『1日1ページで身につく イラストでわかる 科学の教養365』(SBクリエイティブ)など、科学に関する著書・監修多数。

夏休みの宿題で、子どもだけでなく保護者も悩ませることが多い「理科の自由研究」。コンクールや地区の発表会に学校代表として出展されることもあり、保護者が過熱ぎみになる傾向も……。では、なぜ理科の自由研究はあるのでしょうか。お茶の水女子大学のサイエンス&エデュケーション研究所で「理科自由研究データベース」を運営する千葉和義先生に、理科の自由研究の意義や取り組み方のヒントなどをお聞きしました。

答えがわからない問題を解決する力を養う「理科の自由研究」

夏休みの宿題は算数も国語も「宿題」。ではなぜ、理科だけが「自由研究」なのでしょう? 千葉先生によると「学校教育は、答えのある質問について回答する力をつけていくもの。でも世の中には、答えがわからないもの、解決できないことがたくさんあふれています。中には、答えがあるかどうかわからないことも。そのような問題を解決する力をつけるのが、理科の自由研究の役割なのです」。

千葉先生提供

今回、お話を聞いた千葉先生。理科の自由研究の大切さを教えていただきました

 

確かに、学生生活とは違い社会に出ると、“答えのないもの”がほとんど。自ら問題を解決する力が求められるシーンによくぶつかります。「答えがわかっていないものに仮説を立てて、その答えに迫っていく経験をさせることが、問題解決力を養う学習方法。それはまさに、理科の自由研究です」と千葉先生。つまり夏休みの自由研究は、子どもが主体的に取り組める数少ない「探究学習」。最近では、高校で理数系や探究科目をメインに学ぶ、文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール」が増えたり、理数探究といった科目が新設されるなど、探究学習を学校教育の中でもっと取り入れて行こうという動きがあるそうです。

大学の研究も自由研究も“文献検索”が最初の一歩!

理科の自由研究が、問題解決の助けになる学習ということが、よくわかりました。となると、テーマ探しは大きな課題。理科の自由研究の事例がデータ化された「理科自由研究データベース」はありがたい存在ですが、なぜ、このようなデータベースを立ち上げたのでしょうか。
「大学で行う研究でも、第一に求められるのが文献検索です。つまり、自分が取り組もうとしている問題が、すでに解かれているか否かを、あらかじめ知っておく必要があります。それは、理科の自由研究でも同じ。取り組んだものがすでに解決していたら、意気消沈しますよね。とはいえ、興味を持った問題について、研究に取り組んだ人がいるのであれば、その内容は大いにヒントになります。似た研究の発表があるかを知っておくことも役に経ちます。なので、文献検索は重要なのです」と千葉先生。

 

ところが、「理科の自由研究」においては、過去の研究の検索システムがなかったのだそう。そこで千葉先生は、過去の自由研究が検索できる「理科自由研究データベース」を約11年前に公開。いまや2814件の作品を閲覧でき(2022年7月12日現在)、中・高校生を対象にした日本最高峰といわれる科学コンクール「日本学生科学賞」の近年の作品は、全て収録されているというから驚きです。

 

約2800件ものデータの蓄積があるなかで、今と昔でテーマの違いや傾向などは見られるのでしょうか。「アサガオなど、昔からなじみのある素材でデータベースを検索すると、毎年一定の数が出てきます。ただ扱う素材は同じでも、研究の切り口はさまざまですね。一方でコロナ感染症に関する研究は、最近出てきたテーマ。マスクに関する検証や、密を解消するためのソフトウエアの開発など、社会現象も自由研究のテーマとして着目しているのは、すばらしいことです」と千葉先生。

「中学生、高校生、教員、一般向け」のほか、サイトにはひらがな表記の「小学生向け」を用意。中学生から一般向けページでは、単語検索のほか、学年、コンクール名、単元からも検索可能

「中学生、高校生、教員、一般向け」のほか、サイトにはひらがな表記の「小学生向け」を用意。中学生から一般向けページでは、単語検索のほか、学年、コンクール名、単元からも検索可能


過去の研究から一歩先にオリジナルの研究課題がある

過去の自由研究の研究方法や考え方を改めて試す“追試”にも、新たな一歩を踏み出す意義があると千葉先生は語ります。「自由研究は0から生み出さないとオリジナリティがないと思われがちですが、そもそも研究は文化ですので、先人の上に立って、そのもう一歩先にオリジナリティが生まれてくるもの。つまり文献検索は、先人の考え方を学んで自分の研究に生かすためにするものなのです。過去の文献を引用しながら、自分なりの疑問、新たな研究に取り組むことが大切だと思います。そして自分の研究レポートには、先人の論文を引用することが正しいお作法です」

 

子ども自身が積極的に自由研究に取り組んでくれるのがベストですが、小学生の子どもがいる筆者としては、やきもきすることも。保護者の立ち位置をお聞きしたところ、検索のアシストや、子どもとディスカッションしてあげるのがいいと、アドバイスをいただきました。「一人で考えるより、いろいろな人と議論を重ねることで、自分の考えの輪郭がはっきりしたり、新しい世界が見えてくることがあります。先端的な研究でも、全然違う方向からヒントをもらうこともあるんですよ」。アシストのつもりが、ついつい大人が研究に熱中して……というケースもありそうですが、千葉先生は「大人も楽しんでいいんですよ! 全部やっちゃったらダメですけど(笑)」と自由研究を一緒に楽しんでほしいと教えてくれました。

 

さて、いざ仮説を立てて、一生懸命取り組んでみたものの「仮説と結果が違っていた」というケースが出てくるのが自由研究。仮説と結果が一致しないと、子どもはひどくがっかりして、やる気を無くしてしまうことも。理科の自由研究を取り組む上での、大きな壁の一つです。でも千葉先生は、その結果についても「素晴らしい成果」と力説します。

「仮説は“正しいのか? 正しくないのか?”を明らかにするために立てる説。仮説が間違っていても“正しくないことがわかった”という、一つの大きな成果なのです。これはぜひ、大人から説明してあげてほしい」

仮説は間違っていたと自信をなくす子どもに、「正しい結果に近づける、次の仮説が立てられるね」と、ポジティブな声かけをすることの大切さ。これは、正解を導かねばならないと思い込んでいる保護者(筆者を含む)にとって、気づきになる考え方ではないでしょうか。

これからも世代を問わず、科学の楽しさを伝えていきたい

大学では発生生物学と細胞生物学を専門に研究をしている千葉先生。「私の研究はヒトデの卵の受精など、世の中にすぐに役立つものではないのですが、探究によって新たな知識を作り出し、科学分野のすばらしさを人に伝えていきたい気持ちがあります」。そんな思いがあるから、「サイエンス&エデュケーション研究所」の研究所長として、理科自由研究のデータベースのほか、自治体を通じての理科クラブ支援や、災害時の教育サポートなど、科学教育に積極的に活動されているんですね。

 

「理科自由研究データベースでいえば、探究活動を行う子どもたちに絶対必要だと考えて作ったものです。でも本当は、すべての国民の自由研究を紹介する巨大なデータベースをつくってみたいですね(笑)。そんなデータベースが何十年と続けば、子や孫に自分の自由研究を伝えられて、きっと盛り上がるはず。そして、そんなデータベースこそが、日本人の科学的素養を高めてくれるものだと信じています。子どもさんも保護者の方も夏だけに限らず、データベースをたくさん使って、理科・科学の楽しさを体感してください」

 

先生のお話から、まずは、“やってみよう”を合言葉に、データベースを親子で検索。そして、トライ&エラー、ポジティブ精神を持つことで、今年の夏は理科の自由研究がスムーズに、楽しく取り組めそうです。

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