学生が知りたいことと、学生が伝えたいことが詰まった一冊。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第29回目となる今回は、武庫川女子大学が発行する「M*arch」を取り上げます。
全国の女子大の中でも最大規模を誇る武庫川女子大学。10学部17学科で約1万人の学生が学んでいます。この武庫川女子大学では、学内外に向けた情報発信を行う広報誌「rivière」とともに、在学生に向けた学内広報誌「M*arch」を発刊しています。全てのページの取材・編集、デザインや撮影も学生広報スタッフ「la chouette*」(ラ シュエット)が担当。型にとらわれず自由な発想で作られた誌面をご紹介します。
2021年秋に発刊された第21号の巻頭特集は、キャンパスの施設紹介です。コロナ禍でオンライン授業をキャンパス内で受けることが増えた学生に向けて、おすすめの自習スポットを紹介するなど、学生ならではの視点が生きています。また、「女子大生のお悩み解決」コーナーでは、オンライン授業による目や肩の疲れを癒すツボの紹介や、マスクメイクのポイントをイラストと共に紹介。教員や学生にオンライン取材を行うなど、独自の情報を集め、読み応えのある記事にまとめています。
マスクメイクなど学生が知りたい情報を楽しく紹介
地方出身の在学生に、おすすめの観光地と食べ物についてアンケートを実施した「地元×旅」も良い企画だと思いました。コロナ禍で旅行に行きたくても行けない学生が多い中、広島県出身の学生がもみじ饅頭を揚げた「揚げ紅葉」を推薦したり、福岡県出身の学生が「あのBTSも食べに行った超人気のもつ鍋」を写真付きで紹介したりと、地元の人だから知っている名物や情報などを掲載。まさに全国各地から、多様な学生が集まっていることが伝わる内容でした。
出身県の地図を載せるなど、見せ方も工夫されている
今回は「M*arch」の編集を担当している学生スタッフのリーダー、米田さんからコメントをいただくことができました。現在は次号の制作に取りかかっているそうですが、実は企画のいくつかを大幅に変更することになったそうです。
「やり直しになった理由は、宣伝色が強すぎるページになってしまったからでした。事前に各関係者と話し合いの時間が取れていなかったことが原因だと考えています」
――しっかりした編集方針があるんですね。
「この失敗について話し合っている時、職員の方から『取材先の方の話をただ聞くだけではなく、自分たちの企画のためにお話を伺いに行っているという姿勢が大切だ』という助言を頂きました。例えば、実際にそこの方が提供されているものを体験する、女子大生に役立つ知識を専門家としての立場から教えてもらうなど、自分から動くことで得られることはたくさんあります。これからは、そういった点も意識して取材を行おうと考えるようになりました」
――「M*arch」は、約10年間にわたって発行を続けていると聞いています。編集活動を通して得られたことはありますか。
「リーダーを務める中で、自分が話を進める機会が増えました。そんな時、ただメンバーに質問を投げかけたり、職員の方に意見を聞いたりするだけでは上手く話が進みませんでした。しかし、先輩が仕切っている時に注目してみると、私はこう思うのですがどう思いますか?と意見を言って、方向性を最初に提示していることに気づきました。それからは、まず自分自身が思う進みたい方向性をしっかり考え、意見を伝えてから、他の人の意見を聞くということを意識しています」
巻末の編集後記からも、試行錯誤を重ねながら魅力的な誌面を作ろうという思いが伝わってきます。この学内広報誌「M*arch」自体が、武庫川女子大学の魅力であると感じました。
誌面のリニューアルにかける思いが伝わる編集後記