見た目も内容も様変わり、編集方針の大幅リニューアル
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうという企画「大学発広報誌レビュー」。今回は、法政大学が発行する「HOSEI」を取り上げます。
法政大学は東京六大学の一つ。都内に3つのキャンパス(市ケ谷・小金井・多摩)があり、15の学部と17の大学院研究科をもつ総合大学です。そのルーツは明治期に設立された私立の法律学校で、私学の法学部としては日本最古の歴史をもちます。
今回、法政大学の広報誌に注目したのは、2023年度より編集方針が大幅にリニューアルされたと聞いたから。
リニューアル前の冊子と表紙を比べてみると、その違いは一目瞭然です。
左がリニューアル前(2023年3月号)の表紙、右がリニューアル後(2023年4・5月号)
大学の公式サイトによると、これまでは在学生の保証人を主な読者としていた誌面を、在学生の興味・関心に寄り添ったものへと刷新。誌面を見比べても、その違いがよくわかります。
たとえば巻頭の特集記事。「なぜ大学に行くのか」という大学生にとって根本的なテーマについて、4人の在学生が語り合っています。
コロナ禍でオンライン化が進むなど、さまざまな学び方、交流の方法が選択できる今、なぜ大学へ行って学ぶのか。「多様なバックグラウンドを持つ人と出会い、視野が広がる」「学生でいるからこそ、失敗をおそれずチャレンジできる」「目標を見つけるための猶予期間」など、興味や専攻、活動内容も異なる4人がそれぞれの経験や思いを語り合っていて、読者の学生もヒントを得られそうな内容です。
さらにページをめくると、「教授直伝 学生生活設計のススメ」として、充実した学生生活とその後の人生を送るための指南が。自分の「軸」を見つけること、「軸」を見つける方法などについて、キャリアデザインの教員が具体的に解説しています。
記事の副題は「卒業後も見据え、人生を生き抜くためには。」手元において、折に触れて読み返したくなりそうです。
さらに、学生によるキャンパス内おすすめスポットも。食堂や庭、学習スペースなど、在学生お気に入りのスポットがコメント入りで紹介されていて、学ぶのにも、人と交流するのにも役立ちそうです。
「大学で学ぶ意味」という直球の問いに対し、在学生、教員、施設(ハード面)、と3つの視点から応える特集記事。保護者や校友会メンバーに報告するようなリニューアル前のスタイルから「在学生の興味・関心に寄り添ったものへ」と編集方針を転換した大学の本気さがあらわれていると感じます。
デザイン、インターフェイスも刷新
内容だけでなく誌面デザインも刷新され、より親しみやすいものとなっています。下は、卒業生紹介コーナー。法政大学のスクールカラー・オレンジと青の配色が目を引きます。
アナウンサーとして活躍する卒業生が、好きなサッカーを軸に夢に近づいていった道のりや、後輩へのメッセージなどを語っています。
下は研究紹介のページ。今回は、理工学部の先生が小型航空機の研究について紹介する内容です。イラストや色づかいで楽しそうな雰囲気を出していて、専門的な話も「読んでみたい」と思えるよう工夫されています。
大学の公式サイトでは、これまでもPDFの誌面が公開されていましたが、リニューアルを機に、オンラインならではの利便性も向上しています。PDFから電子ブックに変更となり、特集記事のキーワードとなる言葉やQRコードをクリックすると、リンク先ページで詳細情報を確認できるように。
また、大学の公式インスタグラムも広報誌と連動していて、記事の要点をまとめた画像が投稿されています。インスタで興味をうながし、紙の冊子(または電子ブック)に誘導。それぞれのメディアの強みが生かされています。
中身は学生に寄り添い、本質に触れるものを。デザインやインターフェイスは親しみやすく、間口を広く。
多くの大学や学生が「大学に通う意味は何か?」を問い直したコロナ禍の数年間を経て、リニューアル後の誌面は、大学や学生の意識の変化を映し出していると感じました。