粉雪吹きすさぶ12月の札幌。所用で北海道大学を訪れていた筆者は、白銀の世界に変わっていくキャンパスで、「北大マルシェCafé&Labo」という名の施設を発見した——。学食レポート、テンション高めでお送りします。
北大キャンパスで絞られる「日本の牛乳の元祖」、それが北大牛乳だ
北大マルシェCafé&Laboは、JR札幌駅の北口から徒歩約10分、北9条通の大学正門を入って右手に広がる森の奥にあります。
キャンパス内を流れるサクシュコトニ川のほとりに立つ
店内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、壁一面のガラス窓! 木々や川、小さな池に囲まれて、ここはまるで森の中。木のテーブルや板張りの床、赤いレンガ壁や天井からつるされたオレンジの電灯も、人里離れたログハウスに来たかのような居心地にさせてくれます。
お店のイチ押しは、何といっても「北大牛乳」です。北大牛乳とはその名の通り、北海道大学が札幌キャンパス内で飼育する牛の牛乳のこと。北大牛乳は市場に出回っていないため、ここ北大でしか飲めません。
しかもこの牛たち、北大がまだ札幌農学校だったころの1889年に日本へ初めて連れてこられたホルスタイン種の子孫にあたるそう。それってつまり、北大牛乳は「日本の牛乳の元祖」っていうことですよね? ……北大牛乳、貴重すぎませんか?
北大牛乳、衝撃のおいしさ
北大牛乳をそのまま飲めるだけでなく、様々な形で楽しむことができる北大マルシェCafé&Labo。メニューには、終日オーダーできるグランドメニューと、11:00〜14:00限定のランチメニューがあります。胃袋の助っ人として家族を引き連れてきた筆者、ランチメニューから「北大牛乳モッツァレラチーズハンバーグ」を、グランドメニューから「まるごと北大牛乳モッツァレラピザ」を、揺るがぬ決意で注文します(本当は「北の大地のパンケーキ」も食べたい)。
早速、ランチメニューにセットとして付いてくる北大牛乳が運ばれてきました。
北大牛乳(アイス/ホット)は単品注文も可能(500円)
パッと見たところ、何の変哲もない牛乳です。「まあ北大でとれたってところに価値があるわけで、味は別に普通でしょ」と思いながら飲んでみると……
「!?!?!?」
まず、瓶を口に近づけるだけで立ち昇る牛乳の匂いの濃さに衝撃を受けます。そして口に入れると、なんという舌触り……! 決してドロドロではなく、ザラザラでもない、しかし濃厚と呼ぶにはあまりに個性的な……。グッと飲み干しても、舌いっぱいにのしかかる、こってりとした甘み。と思ったら、急にスッと消えていった――。
これは、これは……“あらごし牛乳”だ!!!
成分無調整、低温殺菌、ノンホモジナイズド製法
なぜ北大牛乳はこんなにおいしいのか。その理由のひとつは、製造方法にあります。
第一に、脂肪分を除去したりビタミンを加えたりすることなく生乳をそのまま使う「成分無調整」であること。第二に、生乳本来のおいしさを保つため「低温殺菌」をしていること。120~150℃で1~3秒加熱する「超高温瞬間殺菌法」が主流であるのに対し、北大牛乳は63℃で30分間以上保持して殺菌されます。
三つ目の秘訣は、「ノンホモジナイズド製法」です。ノンホモジナイズドとは、「ホモジナイズ(均質化)」しないという意味。もはや当たり前すぎてあまり意識しないですが、私たちが普段飲む市販の牛乳は、サラサラした均一な液体ですよね。実はこれ、工場で生乳をふるいにかけて脂肪分(脂肪球)を細かく粉砕するというホモジナイズ加工の結果なのです。
ホモジナイズを施していない牛乳はどうなるかというと、時間がたつにつれ脂肪分が浮き上がって、表面にクリームの層(クリームライン)が形成されるのだそう。先ほど飲み干した牛乳瓶を見てみると……ほんとだ、クリームラインの跡と思われる輪っかが瓶の首に薄っすらできています(痛恨の写真撮り忘れ、みなさん是非ご自身の目で確認を)。
北大マルシェCafé&Laboでは、北大牛乳をおいしさそのまま届けるべく、「成分無調整、低温殺菌、ノンホモジナイズド製法」という、できるだけ手を加えない製法を選択しているのだそう。筆者が感じた牛乳の“あらごし感”は、この直球勝負がダイレクトに届いた結果だったんですね。こんなおいしい牛乳が大都会のど真ん中で楽しめるなんて、北大関係者や札幌市民のみなさんが羨ましいです。
四季でうつろう北大牛乳
おいしいことだけが北大牛乳の魅力ではありません。もうひとつの魅力、それは季節で味が変わるということです。
北大牛乳を生み出してくれる北大農場の乳牛たちは、夏は室外で放牧され、雪が積もる冬は牛舎の中で飼われています。夏は牧草地に生える青草を食べるのに対し、冬は青草を干した乾草や、青草などを発酵させたサイレージを中心に食べます。こうした季節ごとの食べ物の違いが、文字通り牛のお乳である牛乳の味、色、香りにも反映されるのです。その違いをひと言で表すと、「夏は爽やか、冬は濃厚」だそう。……私、夏にまた来てもいいですか?
夏は牛たちが草をはむキャンパス内の牧草地。北大マルシェCafé&Laboから徒歩約15分
店内に書かれたボードを見ると、今日の北大牛乳の乳脂肪率は4.51%、無脂乳固形分率(牛乳から水分と乳脂肪分を除いた成分)は9.11%だそう。市販の成分無調整牛乳の乳脂肪率は3.5%、無脂乳固形分率は8.3%前後というところ。冬の北大牛乳の濃厚さは、数値からもよくわかります。
北大牛乳モッツアレラチーズや北大牛乳ジェラートは、店内の工房「MILK LABO」で製造されている。だから店名が「Café&Labo」なのか!
北大牛乳、七変化
北大牛乳の魅力を力説していたら、文字数が足りなくなってきました。ここから北大牛乳グルメを一気にご紹介します。
北大牛乳モッツァレラチーズハンバーグ(1,980円)。北大牛乳とスープ付き。ライス(蘭越町産ななつぼし)またはパン(北大牛乳ホエーブレッド)を選択できる。肉の旨みがつまったハンバーグ、甘みの強い道産野菜、モチモチのパンに顔がほころぶ
まるごと北大牛乳モッツァレラピザ[1日5食限定](2,000円)。見よ、このチーズの海を! 「あ、このピザおいしいやつだ」と一目でわかる生地の焼き上がり
冬の北大キャンパスの雪景色をイメージした、北大マルシェの白いパフェ(1,280円)。中には北大牛乳ジェラートとソフトクリームとりんごバターと……後は食べたときのお楽しみ!
こちらはホットの北大牛乳カフェラテ(660円)。エスプレッソとミルクが別添えという憎い演出。札幌発のコーヒースタンド「BARISTART COFFEE」が北大牛乳に合う豆を焙煎。コーヒーには厳しい筆者、一口飲んで、その華やかさに唸りました
お腹も心も満たされて周りを見渡すと、外国からの観光客と思しき方々がたくさん来店されています。ここでしか体験できない北大牛乳は、確かに札幌観光のマストと言えるでしょう。すっかり北大牛乳の虜になってしまった筆者。もっとたくさんの人にその魅力を伝えたい――僭越ながらも筆者はそんな思いを込めて、このレポートを書かせていただきました。
店内にはジェラート、モッツァレラチーズ、クッキーといった北大牛乳の加工品や、こだわりの道産商品が購入できるショップを併設
【おまけ】北大でスイーツ巡り
北大には他にもおいしいカフェがあります。北大でスイーツ巡り、楽しいですよ。
大学博物館内「ミュージアムカフェ ぽらす」にて、「西興部村のソフトクリー夢」(450円)
正門入ってすぐ左、「カフェdeごはん」の「北大牛乳のソフトクリーム」(500円)と「ハーベストムーン 自家製ほろにがプリンにアイスを添えて」(700円)
【出典】
北大牛乳については、北大マルシェCafé&Laboの宮脇店長のブログ「Miyawaki Blog」を参考にさせていただきました。北大牛乳の歴史や魅力をもっと知りたいかたは、ぜひブログを読んでみてください!
Miyawaki Blog: https://marche-mywk.com/