神戸といえば、ファッション、港町、パン?私はやっぱりスイーツ!と答えてしまう。そんな甘党にうれしすぎる公開講座が甲南大学で開催された。神戸スイーツ学会の中心メンバーである経営学部の西村順二教授の呼びかけで、7人のパティシエがゲストとして集結。さらに街の活性化や洋菓子店の成長戦略についてなど、甘いだけじゃない知的な時間を多数の参加者が楽しんだ。
新作スイーツに目移り!!
土曜日の午後。甲南大学のカフェ・パンセに、ぞくぞくと人が集まってきた。その数約100人!この日の公開講座のテーマは「7人のパティシエが描く神戸スイーツ」。参加費1,000円でミニ講義が聴けて、ケーキとお土産セットまでもらえるという破格の内容だ。
みなさんのお目当ては、7人のパティシエからなる「ORIGINE KOBE(オリジンコウベ)」の新作スイーツ。
「ORIGINE KOBE」とは、神戸を中心に活躍する7人のパティシエが、お互い協力し合い、情報発信することを目的として2015年4月に発足したグループ。自身の店舗も運営しつつ、「ORIGINE KOBE」メンバーとしてのケーキもそれぞれが発表している。神戸っ子や関西のスイーツ好きなら知っているはずの有名店パティシエが揃い踏みなんて…奇跡っ!
こちらが新作。2016年3月まで各店舗にて買うことができる
7種の中から選んだケーキを手に席につく参加者の方々。目の前にずらりと並ぶケーキを写真に収めるだけなのはちょっと苦行だったが、おいしいスイーツがこれだけの人を動かす、その大きな力を感じた。
なかなか1つに決めきれない方も…わかります
講座では、甲南大学ビジネス・イノベーション研究所長で経営学部教授の西村順二教授を司会とし、「ORIGINE KOBE」の広報も勤めるスイーツコーディネーター、松本由紀子さん、「パティスリーモンプリュ」の林周平オーナーシェフら7人が、新作や「ORIGINE KOBE」への思い、神戸の洋菓子店としての展望を語った。
洋菓子店の成長戦略は2種類ある
おいしかった~で終わらないのが大学の公開講座。休憩を挟み、西村教授のミニ講義が始まった。
さまざまなデータを交えて解説する西村教授
神戸の産業はアパレルやケミカルシューズなどいくつかあるが、売上高、企業数、従業員数が共に堅調に伸びているのが洋菓子だという(神戸ファッション産業規模調査2009より)。
ただ洋菓子は、生ケーキとなると鮮度管理がとても大事。それにバースデーケーキをわざわざ神戸から京都へ買いに行く人はほとんどいないだろう。だからこそ「地域性が高く、小さい商圏となる。そこに宿命的にしばられてしまう」と教授は指摘。
確かに全国レベルの洋菓子店をめざすとなると、パティシエの腕を最も発揮できる生ケーキではなく、保存がきく焼き菓子中心にシフトしていく必要がある。全国の誰もが知っている有名洋菓子店の中には、残念ながら神戸発祥とあまり知られていない店もある。
「対して『ORIGINE KOBE』のみなさんのお店は地域密着型。持続可能な規模でやっていく成長戦略です。全国に拡大していく成長戦略と共に2種類の戦略が存在している。それがちゃんと両立しているのが洋菓子業界なのでは、という仮説をたてています」。西村教授は自らの研究内容を解説した。
“成長戦略”や“持続可能”といった言葉が飛び交い、経営者でもあるパティシエのみなさんも興味津々。一見キラキラしたスイーツの世界と、リアルな経営のお話で、会場は大学らしい引き締まった雰囲気になった。
講座終了後はパティシエと写真を撮る熱心なファンも。地域密着型の成長戦略が成功した姿が、この風景なのかもしれない。
なぜ甲南大学なのか?
ところで、なぜ甲南大学がこのようなイベントをしているかというと、神戸市東灘区という立地に関係している。
東灘区は市内の中でもっとも洋菓子店が集中している地区だ。西村教授によれば、洋菓子の製造小売業は、中央区では1万人に2.3軒、東灘区は1万人に1.7軒ある計算になるとか。住宅街なのに、繁華街の中央区に迫る勢いで洋菓子店があるのだ。
そんな立地を活かそうと、甲南大学では「神戸スイーツの研究活性化拠点」としてプロジェクトを進めることになった。西村教授が中心となって公開講座を開き、さまざまな形で神戸スイーツを盛り上げようとしているという。
中でも教授がかかわる「ひがしなだスイーツめぐり」は2015年の秋で5回目を迎えた。ルートバスのフリーチケットで好きな洋菓子店をハシゴできる企画だが、今ではスイーツだけではなく街の活性化につながっている。
「ひがしなだスイーツめぐり」のパンフレット。50軒近い洋菓子店を紹介している
「あちこちにある店=点と点をつなぎ、バスでめぐるようにしたことで、点が線になった。さらに開催期間中に街のイベントを同時に行うことで線を面に。お客さんがバスを降りて、もっと街を楽しめるようにしたんです」と西村教授。今では協力店も増え、店同士の交流も広がりつつあるという。
「スイーツめぐりとは言っているが、スイーツではなく地域のためのプロジェクトとして考えています」。
「甲南スイーツ」が生まれる?!
学生がかかわる企画も目下進行中らしい。過去には卒業式限定のオリジナルスイーツ「スヴニール」やオープンキャンパス等で甲南大学限定の「甲南フィナンシェ」という商品を配ったことはあるが、レシピはシェフにお任せだった。
今度は、カフェなどへの卸専門の洋菓子店とのコラボを考えている。学生は各店舗の商品を調査し、神戸らしさ、甲南大学らしさを考えたオリジナルレシピを研究中という。
最後に…私もケーキをいただきました!
「パティスリーモンプリュ」林周平オーナーシェフのケーキ!
バタークリームの程よい甘さと柔らかさの中に、シュクセという生地のサクサク食感がおいしい!さらにグレープフルーツのコンポートが爽やかな隠し味となり、見た目には分からない重層的な味を楽しみました。
このおいしさに負けない「甲南スイーツ」が生まれる日も近い?!ぜひ「ほとんど0円大学」でレポートしたい。