「サイエンスカフェ」というものはご存じでしょうか。恥ずかしながら私は最近まで知りませんでした。「カフェのような雰囲気の場所で『科学』について語り合う場所」、それがサイエンスカフェです。
元々は90年代後半、イギリスとフランスで同時発生的に行われたものが起源だそう。最近では全国の大学や生涯学習センターなどなど、さまざまな場所でサイエンスカフェが開催されているようです。そんなサイエンスカフェのひとつが、大阪大学の総合学術博物館で開催されている「サイエンスカフェ@待兼山」です。
今年3月に行われた「『マッサン』と竹鶴政孝―ドラマと史実の“ビミョーな距離感”―」に参加してきました。
「サイエンスカフェ@待兼山」とは?
サイエンスカフェといえば、一般的には宇宙や化学など、理系のプログラムというイメージがあります。実際行われているプログラムもいわゆる「サイエンス」のイメージに近いものがほとんどです。
しかし大阪大学総合学術博物館では、人文科学なども含め、学問そのものを「科学」ととらえて、文理問わずさまざまな分野のプログラムを展開しているとのこと。
私が参加したのは、2015年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説「マッサン」をテーマにしたプログラム。博物館の上田先生にお伺いしたところ、「参加者層は、プログラムによってまちまちです」とのこと。今回は女性が半数程度いらっしゃいました。
開始前の様子。ほぼ満席です。
プログラムが開催された時期は、ちょうどドラマがクライマックスに差し掛かったころ。どんな裏話が聞けるのか、自然と期待も膨らみます。
講師はドラマの監修にも携わった
大阪大学総合学術博物館 松永和浩先生
大河ドラマや連続テレビ小説では、「考証の専門家」として、各方面の専門家の先生が裏でドラマを支えています。今回講師を務められた松永和浩先生もそのおひとり。「マッサン」制作に洋酒関係資料提供として協力されています。
とはいえ、松永先生の専門は日本史、それもマッサンの頃とは時代の離れた中世史(平安後期から戦国時代頃)。なぜ近現代の「マッサン」に関わることに?と思ったら、「もともと大阪大学の工学部は、日本で初めて醸造科を開設した大阪高等工業学校が前身。お酒が好きなこともあり、過去の企画展のため研究をはじめました」とのこと。
そこから館長の橋爪節也教授が「洋酒の考証なら」と、NHKに松永先生を紹介されたんだそうです。好きこそものの上手なれ、とは聞きますが、こういう出会いがあるんですね。
酒造と大阪高等工業学校については、「ものづくり上方“酒”ばなし」に詳しく掲載されています。
いよいよドラマと史実の比較へ。はたしてどれくらい違うのか?
プログラムはスライドを使った公開講座形式。時折ドラマのワンシーンを挟みつつ、ドラマと史実がテンポ良く比較され、かなり面白かったです。
ドラマのOP。ここに松永先生の名前も。
作中は触れられなかったウィスキーの作り方や
違いについてのお話もありました。
エリー同様、お正月などの特別な日はリタさんも和装をしていたらしいというお話も。マッサンこと竹鶴氏も、実は亭主関白の一面もあったとか。
ドラマではヒロインであるエリーは標準語で話していましたが、実際モデルとなったリタ氏は北海道に来たばかりの頃、流ちょうな大阪弁で話して北海道の人たちを驚かせたそう。
他にも、マッサンこと竹鶴政孝氏(ドラマでは亀山政春)とサントリー創業者の鳥井信治郎氏(ドラマでは鴨居欣次郎)が出会った時期は、実はマッサンの留学より前、ドラマであれば第一話の場面より前だという話も。
次々に出てくるお話に、取材ということも忘れて聞き入ってしまいました。
やはりドラマと史実は違うのだなーと思いつつ、裏話を聞いてしまうと、ドラマの一つ一つの要素がまたおもしろみを増してくる。できればもう一回、最初から見てみたいと思ってしまいました。
サイエンスカフェに参加してみて
私も毎朝「マッサン」を楽しみにしていたので、一参加者としてプログラムを楽しませていただきました。参加した方もこのドラマが好きな方ばかりで、飛び出す質問はドラマの細かい場面と史実に関するするどい質問ばかり。聞いている私も「それ気になる!」と思うことも。
1時間半ほどの時間があっという間に終わってしまいました。短かったなぁ……もう少し聞きたかったかも……。
ですが、ドラマをきっかけに史実についてもかなり興味を持つことができました。今「マッサン」を見たら、違った視点で楽しむことができるかもしれません。