以前にほとゼロでご紹介したことのある「京都国際マンガミュージアム」。
現在、そのマンガミュージアムで大々的に行われているのが、今年で記念すべき第十回目を迎えた「クッキングパパ展」だ。
展示の入り口はコミックスで飾られている。
今年は「東アジア文化都市2017京都」事業の一環として、作者のうえやまとち先生が交流都市である中国・長沙市、韓国・大邱(テグ)広域市を取材。それらを連載中の「クッキングパパ」で描いている。この展示では、取材した都市が描かれた回の原画や食材の写真を紹介しながら、両市の魅力をたっぷりと伝えている。
各回に登場した中華(風)、韓国(風)料理のレシピの原稿がずらっと並ぶ。手書きの部分があったり“ナマ”を感じる。
中国・長沙市、韓国・大邱広域市の取材で撮られた写真。これでも厳選されたものだけなんだとか(数千枚から選ばれたそう・・・)。食べ物の写真、うえやま先生の写真など。原稿とまた違った、現場の空気感を味わうことができる。
毎年開催されている「うえやまとちのマンガクッキング」では、うえやま先生がエプロンに直筆でサインを書くのが恒例だそう。
会場では過去のエプロンが展示されていた
11月12日に行われた「うえやまとちのマンガクッキング10杯目」では、中国、韓国で取材した料理から三つのレシピが選ばれ、観客の目の前でうえやま先生自らが実際に調理した。200人収容できる広々とした空間に、うえやま先生と、進行役を務めるマンガミュージアムの吉村和真さんが登壇。吉村さんがクッキングパパの解説をしたり、調理中の先生へ疑問を投げかける。十年目というのもあってか、慣れた調子で終始おだやかな雰囲気で進められていた。
余談だが、当初、調理師免許を持っていなかった先生は、なんとこのイベントで調理した料理を観客が試食できるように、と資格を取得したそうだ。十年を経て、イベントも進化しているのである。吉村さんが、「クッキングパパの作者が調理師免許取りに来たら、対応に困りそうですね」と会場の笑いを誘っていた。
左右に設置されたスクリーンでは、料理中のうえやま先生の手元とクッキングパパの紙面がそれぞれ映しだされ、料理の手順について説明したり、物語の解説が行われたりする。
取材をもとに描かれた回では、実在する人物をモデルにしたキャラクターが登場し、なんとこの日、そのモデルとなった方が会場にいらっしゃっていた。ところどころで、その方に物語に関連した話を振ったりして、ちょっとしたスパイスで面白みがあった。
漫画のレシピとともに料理が進められていく。こちらの画像は「長沙風酸菜炒飯」
うえやま先生は実際にマンガを書く時にまず料理からはじめるそうで、スタッフで味見をしてああでもないこうでもないと試行錯誤しながらストーリーを決めていくそう。
今回の取材旅行は、かなり詰まったスケジュールで、観光などそっちのけで食べて食べて食べまくりだったんだとか。大食いのスタッフがいて助かった、などクッキングパパ好きならよだれの出る裏話をたくさん聞くことができた。
今回作られたのは「ナスのピリ辛蒸し」「花煎(ファジョン)」「長沙風酸菜炒飯」の3品。
「ナスのピリ辛蒸し」は想像もしやすいだろうが、茹でたナスに調味料を合わせてから蒸したかなりスパイシーで辛みがばっちり効いた料理。
「花煎」は、画像の左下にあるもの。白玉粉を団子状にした後、フライパンの上で薄く伸ばし、その上に花びら等をデザインして乗せて焼くという、趣のある一品だ。現地ではお祭の際に食べられることがあるんだとか。うえやま先生が白玉の上に一枚ずつ花びらを乗せていく作業の際に、冗談めかして「めんどくせえなぁ」と言い放つと、会場は笑いに包まれた。
「長沙風酸菜炒飯」は画像ではわかりづらいが、真っ黒な炒飯。酸菜は酸味のある中国の漬物だそう。中国で使われているたまり醤油がかなり濃いらしく、大さじ一杯で炒飯は真っ黒になった。
左上が「長沙風酸菜炒飯」、左下が「花煎(ファジョン)」、右が「長沙風酸菜炒飯」
料理完成後、試食が! 「ナスのピリ辛蒸し」を試食させてもらった。かなり辛いが、旨味もばっちり。
会場には老若男女問わず、多くのお客さんが訪れ、みな楽しそうだったのが印象的。うえやま先生の慣れた手つきで行われる調理風景や、クッキングパパの裏話、食欲をそそる香り、おいしい試食まで。目でも耳でも(鼻と舌でも!)楽しめるイベントで、あっという間の2時間だった。
企画展「クッキングパパ展 旅する。食べる。料理する。」は2018年1月14日(日)まで開催中なので、クッキングパパのファンなら必ず行ってみてほしい。ただし、とてもお腹が空く展示内容となっているのでご注意を。