万博記念公園近くのららぽーとEXPOCITY。ここで大阪大学の最先端研究にふれられるイベントがあると聞き足を運んでみました。
体験イベント、ミニレクチャー、展示など通じて、子どもから大人まで、科学・研究・学術の魅力を楽しみながら学ぶことができるそうです。10を超えるブースがあり、宇宙地球科学、基礎工学、医学、情報科学、人間科学など分野は実にさまざま。いったいどんな研究内容が見られるのでしょうか。早速行ってみましょう。
シマシマ模様でぶつからずに歩ける?
混雑した駅で人とぶつかってしまうことってありますよね。
対面から歩いてくる人を避けきれなくてお互いに気まずくなってしまったり……
そんな困りごとを解決しようという研究がありました。
ここは情報科学研究科 人間情報工学講座のブース「ぶつからずに歩ける床をあるいてみよう!」です。
ステージの上に、なにやらシマシマ模様のパネルが敷いてあります。子どもも大人も興味深そうに歩き回っています。
ふしぎな床の模様ですが…!?
まずは私も歩いてみることにします。
下を見ながら歩いていると、床の色・模様がだんだんと変わって、気がつくと斜め右へと進んでいました。たしかにこれなら、対面から歩いてくる人は自分と反対に歩いてくるのでぶつからないですね!
これはどういう仕組みなんでしょうか。スタッフの解説によれば、シマシマ模様は見る向きで絵が変わるような印刷がされているので、人が歩くと模様が動いて見えるようになっているとのこと。
向きを変えると絵が変わる印刷。見たことがある方もいるのではないでしょうか
人は歩くときにシマシマ模様の動きを床の流れとして錯覚しながら進むので、歩く方向がその流れに誘導されます。その結果、今回の場合は斜め右に自然と進むため、対面から人が来ても、互いにぶつからなくなるというわけです。
展示の解説よると、パネルは駅や商業施設などたくさんの人が歩く場所で、人がぶつからないために開発されたそうです。「一方通行」などの文字は、他の言語を使う人には伝わらないこともありますし、矢印のような記号も読み取って判断しないといけません。それに対してシマシマ模様の仕組みは人の錯覚を利用しているので、文字や記号のような制約がないと紹介されていました。公共空間のような人が多く集まる場所に適した解決方法なんですね。
パネルを開発した人間情報工学講座では、人間の感覚と運動の関係について研究が進められており、人の行動を変容させたり、ゲームやVRなどへの応用ができるそうです。
街中でシマシマ模様を見る日も近いかも?
AIバイオロギングで賢く動物の生態を観察!
次に訪れたのは、情報科学研究科 マルチメディア工学専攻の「バイオロギングで体験! 動物と共に生きる未来」をテーマにしたブースです。
バイオロギングとは、動物に小型のセンサーロガー(記録装置)を取り付けて行動を観察する研究手法。センサーロガーデバイスには位置を測るGPSや、動きを測る加速度センサ、そして撮影用のカメラが搭載されています。
手のひらサイズのセンサーロガーデバイス
なかでもとくに力を入れているのは、AIバイオロギング。加速度センサやGPSのデータ、過去に蓄積した行動データを人工知能が認識・参照して、動物が貴重な行動をしたときだけカメラが作動し記録するというものです。
カメラは消費電力が大きいので、これまでのバイオロギングでは興味深い行動の記録は難しかったそう。それに比べて、ここぞというときに撮影してくれるAIはバイオロギング研究者にとって助かりますよね。
お話を聞くと、装置の小型化が難しかったり、一つ機能を足すと他の機能が使えなくなったりするなど、限られたデバイスの大きさと性能のなかでやりたいことを実現すための苦労が大きかったようです。
また、ブースでは2種類のゲームを体験できました。実際にバイオロギングを行った、日本近海に生息するオオミズナギドリというウミドリに関するゲームです。
一つは、オオミズナギドリのぬいぐるみを動かすと、その動きを彼らが行った際の映像を見ることができるというもの。潜水(採餌)はレアな行動だそうで、その映像が出せるよういろんな動き方を試してみました。実際の映像は迫力満点。鳥たちはこんな光景を見ているんですね。
参加者はぬいぐるみを盛んに振ったり動かしたりして体験
ふたつめは、ジョイコン(ニンテンドースイッチのコントローラー)を手に持ち、オオミズナギドリの動きを真似て、その飛行を疑似体験できるゲーム。鳥になった気持ちで羽ばたいて餌を採る動きを再現することで、高スコアを狙います。
子どもたちが夢中になって羽ばたいている様子を、まわりの人がほのぼのと眺めていました
子どもとおとなの世界はどう違う?
次は人間科学研究科 比較発達心理学研究室のブースに来ました。「のぞいてみよう!子どもの世界・おとなの世界」というテーマです。
研究紹介など展示の様子
この研究室では子どもの見ている世界や、子どもの世界が大人の世界へと変わっていくプロセスを研究しているそうです。
たしかに子どものころと大人になってからでは世界の感じ方に違いがあるように思います。身体の成長やできることが増えるという変化もありますが、他にはどのようなことがあるのでしょうか。
展示のなかから興味深かったものを紹介すると、生後4ヶ月半の赤ちゃんでも、もうすでに物理法則を理解しているようです。そんなに早くからなんですね。研究によると、赤ちゃんは浮かんでいる車を見てびっくりする(=長く見る)のだそう。子どもにも大人と同じように世界が物理法則にしたがって見えているようです。
一方で、子どもたちのなかには9歳頃まで空想の友だち(イマジナリーフレンド)を持つことがあると知られており、大人にはない子どもの世界があるようです。空想の友だちがいる子どもは、他の子どもよりも他者の心の推測が上手だったり、コミュニケーション能力が高い傾向があるそうです。子どもたち独自の世界も成長に役立っているんですね。
ロボットとのおしゃべりを体験!
なにやらかわいいロボットがじっとこちらを見ています。ここは基礎工学研究科システム創成専攻のブース「未来では当たり前?ロボットとおしゃべり!」です。
新しいものが好きか?お気に入りを大事にするか?などの質問をしてくれる
2体いるロボットから交互に質問をしてもらって答えていくと、最後に自分の性格について教えてくれるというものでした。ロボットは単純に音声を発するというだけでなく、こちらの反応をみてしゃべってくれるので話しやすかったです。
体験会の様子
お話を聞くと、この研究室では、人間とはなにかということをテーマに、ロボットがどのような動きをすれば人間らしくなるのか、ロボットはどのくらい人間とおしゃべりできるのかを研究しているそうです。
今回の体験では2体ロボットがいることにより、片方がもう片方をサポートする狙いがあるとのこと。そのおかげでおしゃべりが止まってしまうことがなかったり、役割が分かれているので想定外の回答を受けても、会話を続けやすかったりとメリットがあるそうです。
近年は急速にAIが発展して会話の技術が進んでおり、より人間らしさについての研究が盛んになってきていると伺いました。
さまざまな科学・たくさんの知らないこと
いくつか体験内容をピックアップしてご紹介しましたが、他にも感染症について学ぶブースや、外国語の絵本の読み聞かせ、月の石の展示、未来の教育について意見を発信できるブースなど盛りだくさんでした。
【左上から時計回りに】「目指せ!未来の感染症博士!」感染症総合教育研究拠点(CiDER)/先端モダリティDDS研究センター(CAMaD)、「ことばを知ってボーダーレスに!」OUグローバルキャンパス(外国語学部・外国学図書館)、「身近な天体「月」を知ろう」理学研究科 宇宙地球科学専攻、「どうなる!?未来の学校!!2024」社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
会場では誰もが体験を通じて楽しく学んでいる様子が印象的でした。学問や研究の世界に気軽にふれられる絶好の機会となるイベントで、知らないことを知るという楽しさを実感しました!